ヤスのちょっとスピリチュアルな世界情勢予測

このページは、社会分析アナリストで著述家のヤス先生こと高島康司さんによるコラムページです。
アメリカ在住経験もあることから、アメリカ文化を知り、英語を自由に使いこなせるのが強みでもあるヤス先生は、世界中の情報を積極的に収集し、バランスのとれた分析、予測をされています。
スピリチュアルなことも上手く取り入れる柔軟な感性で、ヤス先生が混迷する今後の日本、そして世界の情勢を予測していきます。

2016.08.01(第30回)
トルコの未遂クーデターの真実

 8月になりました。今月はどのような月になるでしょうか? 7月は非常に変動の激しい月でした。そこで今回は、トルコで起こった未遂軍事クーデターで日本ではまったく報道されていない事実を紹介しましょう。ちょっとびっくりするかもしれません。

▼トルコの未遂クーデターと「ギュレン運動」
 7月15日の未明、トルコ軍によるクーデターが発生しました。
 トルコ軍の反乱勢力が、イスタンブールのボスポラス海峡に架かるボスポラス橋、ファーティフ・スルタン・メフメト橋を部分的に封鎖しました。また、首都アンカラ上空では軍用機で低空飛行し、イスタンブールやアンカラの路上には兵士が展開しました。彼らは「祖国平和協議会」と名乗り、テレビや電子メールを通じ権力を掌握したと発表したのです。
 自らをトルコ正規軍より上に立つ存在であると主張し、トルコにおける憲法の秩序や民主主義、人権、自由といった価値観を保証し、崩壊した秩序を回復させるために実行したと表明しました。また、トルコがこれまでに締結した全ての国際的な合意や責任は引き続き有効であり、全世界の国家との友好関係が保たれることを希望するともしました。

 一時反乱軍は主要なテレビ局を占拠したものの、イスタンブール空港に降り立ったエルドアン大統領が民主主義を守るための抗議行動を市民に呼びかけ、これに応じた市民と警察、そして軍の主力部隊によって半日あまりであっけなくクーデターは鎮圧されました。
 日本では、まともな計画もないずさんなクーデターだったとの報道がなされていますが、実はエルドアン大統領は危機的な状況にあったのです。当日、エルドアン大統領はトルコ南部の保養地、アルマリスのホテルに家族や側近とともに滞在していました。そこに情報部の幹部からアンカラが反乱軍によって制圧されたので、すぐにイスタンブールに移動するようにとの要請がきたのです。
 大統領がそれに応じてイスタンブールに向けて飛び立った直後、反乱軍がアルマリスのホテルを襲撃し、大統領護衛隊との銃撃戦になりました。もし大統領が10分か15分長く滞在していたら、大統領は殺害されていたか、ないしは拘束されていたことは間違いなかったのです。また大統領はイスタンブールに向かったものの、イスタンブール国際空港は反乱軍が制圧しており、着陸できませんでした。この直後、政府軍によって空港が奪還され、着陸することができました。
 もしここでタイミングがちょっとでもずれていたら、クーデターは成功し、軍事政権が成立していたに違いありません。

●ギュレン運動とは
 政権に復帰したエルドアン大統領は、クーデターの背後にフェトフッラー・ギュレン師が主導する「ギュレン運動」があると見て、アメリカ、フィラデルフィアで自ら亡命生活を送っているギュレン師のトルコ送還をアメリカ政府に要求すると同時に、この運動に影響された軍の高官から一般の兵士、さらに裁判所の判事や弁護士、また教師や大学教員、公務員などを含む8500人を拘束し、公職から追放しました。
 エルドアンは対応を協議する国家安全保障会議を開催し、死刑の復活など強権的な方法で事態を収拾する構えです。これに対し、死刑廃止をEU加盟の条件としているEUや、強権的手法を非民主的だと見ているアメリカ政府やNATOは、エルドアン大統領に警告を発しています。
 これがいまの状況ですが、今回の未遂クーデターのもっとも重要なカギになっているのはやはり「ギュレン運動」でしょう。

 日本ではほとんど聞いたことのない名前の運動です。この運動はイスラム教スンニー派の教えと、トルコ建国の父、ケマル・アタチェルクの世俗的な近代化思想は矛盾しないとするギュレン師の哲学を啓蒙する運動として1960年代に始まりました。「光の家」と呼ばれる学校を各地に建設し、いまでは世界91か国で約489校の高校・初等学校、6校の大学、および教育センター、語学センターが開設されています。また米国内では、100校を越えるチャータースクールを経営しています。
 さらに「ギュレン運動」は、放送局や大手銀行、国内最大の商業組織や新聞社などを保有している一大企業体でもあります。「トルコ労働者実業家連合」という組織のもと集まる裕福なトルコ人や中小企業家らも経済界の「ギュレン運動」です。利息なしで融資を提供する「アジア銀行」や、「ウシュク保険」という保険会社、「アジア・ファイナンス」などの金融機関も経営しています。
 さらにメディア分野にも進出し、「ギュレン運動」の「ザマン紙」は国内最大の新聞社の一つに成長し、「サマンヨルTV」というテレビ局、「ブルチFM」や「ワールド・ラジオ」などトルコの主要ラジオ局も「ギュレン運動」の配下にあります。
 また、異なった宗教間の平和的な対話も積極的に行い、ユダヤ教やローマカトリックとの対話を継続的に続けているほか、1997年には当時のヨハネパウロ2世法王と会談しました。

 こうした活動を見ると、「ギュレン運動」はスンニー派イスラムの教えと価値観を、他の宗教を十分に尊重しながら拡大することを目指したもっとも平和的で穏健な運動のように見えます。「ダーイシュ(IS)」のような国際的なテロ組織とはまったく異なる存在ではないかという印象です。エルドアン大統領は、なぜこのような「ギュレン運動」をクーデターの背後で計画した勢力として排除しようとしているのか、理解に苦しむところです。

●「ギュレン運動」の隠れた実態
 事実、一時「ギュレン運動」は、やはりイスラムの価値観を社会を安定させる枠組みとして重視するエルドアン大統領の強力な支持基盤のひとつでした。
 だが、「ギュレン運動」の実態は、こうした穏健のイメージとはまったく異なった組織であることが分かっています。スタンフォード大学の講師で国際的に著名な地政学研究家のF・ウィリアム・エンドゴールは最新刊『失われた覇権国(The Lost Hegemon)(邦訳なし)』を発刊し、そのなかで「ギュレン運動」の隠された実態について詳しく紹介しています。

 「ギュレン運動」が運営する穏健な啓蒙・教育機関としての「光の家」は、実は過激なイスラム原理主義思想を教える訓練組織でした。そして、これを財政的に支援しているのはCIAであることがはっきりしています。
 米ソが対立していた冷戦期の1960年代から80年代にかけて、米CIAはイスラム圏に属するソビエトの支配地域でイスラム原理主義勢力を軍事的、財政的に支援することで、ソビエトを弱体化させる多くの計画を実行していました。特にこれがもっとも功を奏したのが、1979年に親ソ派政権の崩壊からソ連軍が軍事介入したアフガニスタン戦争です。CIAと米軍特殊部隊は原地のイスラム原理主義勢力を戦闘部隊として育成し、アフガニスタンの泥沼化を推し進めました。ソビエトにとってアフガニスタン戦争は長期戦となり、ソ連邦解体の引き金のひとつとなったのです。

●グラハム・フラーと「ギュレン運動」
 アフガニスタンのイスラム原理主義組織の育成を指揮したのは、当時のCIA局員、グラハム・フラーであったことは明らかになっています。そしてフラーが原理主義の戦闘要員をリクルートし、訓練するための組織として利用したのが実は「ギュレン運動」だったのです。「ギュレン運動」の「光の学校」の出身者の証言によると、イスラムの価値観に基づく穏健な教育とは名ばかりで、実際はフェトフッラー・ギュレン師をマフディー(イスラムの救世主)として仰ぎ、絶対的な忠誠を誓う原理主義の教育機関だというのです。
 「ギュレン運動」が運営する「光の家」はドイツを中心にしてヨーロッパ各地にあり、将来世界各地で原理主義組織の戦闘要員となる可能性のある青年を教育していると考えられています。1991年、ソビエトは崩壊し冷戦は終結しましたが、CIAはイスラム原理主義運動をロシアの勢力拡大を阻む格好の手段として使い続けました。イスラム原理主義勢力がロシアからの独立を目指して戦った1994年のチェチェン紛争などはその典型です。この要員の育成にも「ギュレン運動」の訓練機関がかかわっていると見られています。
 そして2001年の911同時多発テロ以降、アメリカは「アラブの春」などイスラエルと一緒になって中東各地で独裁政権を打倒し、中東全域を流動化する政策を実施していますが、その実行部隊となる原理主義勢力を訓練し、育成している重要な機関のひとつこそ、「ギュレン運動」が世界各地に展開する学校なのです。つまり「ギュレン運動」とは、CIAがその戦略実施のために意図的に発展させた機関であるようなのです。いまでは「光の学校」の出身者の多くが、シリアの反政府勢力に参加していると見られています。

●2015年にクーデター発生を予見した人物
 日本ではイスラムの価値観を社会の精神的な基礎として宣揚する「公正発展党」のエルドアン大統領と、世俗的で悲宗教的な近代主義の価値観を共有する軍部は対立関係にあり、軍ではエルドアン大統領の権限集中に対して強い危機感があったと報道されています。大統領に対する軍部の強い反発が、今回のクーデターのもっとも大きな原因だといいます。
 しかしながら、実は状況はこのような単純なものではありません。2015年12月23日、FBIの元通訳官でFBIの違法活動を内部告発して退職したシベル・エドモンズという人物がクオリティーの高い世界情勢分析チャンネルの「corbettreport.com」に出演し、トルコの情勢分析を行いました。

 FBIを内部告発して退職したあと、シベル・エドモンズは「国家安全保障内部告発者ネットワーク」という組織を立ち上げてアメリカの違法な外交政策を告発する活動を行うと同時に、トルコや中央アジア専門の地政学の分析者として、著名になっています。何冊かベストセラーを著し、著作者としてもよく知られる存在です。
 昨年の12月23日、インタビューに答えたシベル・エドモンズは今後のトルコの情勢を分析しました。
 それによると、たしかにトルコ軍はイスラムの価値観から距離を置く世俗的な組織であるものの、「ギュレン運動」の原理主義の信奉者も非常に多いのも事実だといいます。彼らはギュレン師に従わないエルドアンを敵視しています。
 一方、トルコ軍の高官は米軍やNATO軍との強い一体感を感じており、欧米の利害を無視して大国としての中東の覇権拡大を狙うエルドアンの強硬な外交路線に対して、強い危機感を持っています。
 この結果、「ギュレン運動」の支持勢力と、NATO軍と一体感の強い軍の一部勢力は連携したといいます。CIAは、「ギュレン運動」の組織を通してこれを支援しはじめました。したがって、いつとは正確には言えないが、かなり近い将来エルドアン政権を転覆するクーデターが起こる可能性は非常に高いとしたのです。

 今回の未遂クーデターでこの予測はずばり的中したわけですが、シベル・エドモンズによると、CIAとNATOは覇権拡大を狙うエルドアン政権の転覆をすでに2013年から計画していたといいます。旧ソビエト諸国で起こった「カラー革命」や「アラブの春」、そして2014年の「ウクライナ政変」などでは、国務省に関係したNGOやCIAが国民の大規模な反政府運動を組織し、それによって政権を転覆したことはよく知られています。CIAはこれと同じ方法でエルドアン政権の転覆を画策したのが、2013年にイスタンブールの広場の開発問題をきっかけにして、全国に拡大した反政府運動でした。
 そしてシベル・エドモンズによると、CIAの手先となってこの運動を組織し扇動したのが、フェトフッラー・ギュレン師の率いる「ギュレン運動」だったというのです。しかしこのとき、エルドアン大統領を支持する国民が多く、政権の転覆は失敗しました。

●第2のクーデターが起こる?
 そこで今回は、大規模な国民運動の組織化を諦め、軍の主導で政権の転覆を目標にしたのが、今回のクーデター未遂だったのです。しかし、シベル・エドモンズによると、今回のクーデターは本気で引き起こしたわけではないといいます。これは大統領を支持する国民がどのくらいいるのか見極めるための、いわばテストランのようなクーデターだったのではないかとしています。
 アメリカとNATOは、今回のクーデターの失敗で、エルドアン政権の転覆を決して諦めたわけではありません。今回のテストランの結果を見て、今度は規模の大きい反政府運動と連動した本格的なクーデターを画策している可能性は否定できません。

●もしエルドアンが生き延びれば、中ロ同盟に参加
 シベル・エドモンズのこのような分析が的中するかどうかは分かりません。ですが、少なくともこれから数ヵ月間はトルコ情勢は相当に緊張することだけは間違いないでしょう。
 そしてもし、大規模なクーデターをエルドアン大統領が生き延びることができれば、トルコを中心とする地政学的な状況は根本的に変質するに違いありません。いまトルコは、昨年の11月に発生したロシア軍機の撃墜を公式に謝罪し、ロシアとの関係強化に方向転換しました。8月のはじめにエルドアン大統領はロシアを訪問し、プーチン大統領との首脳会談を行う予定になっています。
 一方EUは、死刑復活を匂わせるトルコのEU加盟を拒絶する姿勢を明確にしています。またNATOでも、強権的な独裁色を強めるエルドアン政権のトルコをNATOから排除すべきとの意見が高まりつつあります。

 このような情勢から判断すると、もしエルドアン大統領が政権転覆の試みが2度と発生しないように徹底的に反政府勢力を押さえ込むか、または2度目のクーデターを生き残ることができるのであれば、今後トルコはアメリカやEUと手を切り、中ロ同盟に加わることになるでしょう。そのときはイランとの関係も改善させ、中国主導の「上海協力機構」に正式加盟するかもしれません。

 そうなった場合、これはアメリカとEUの決定的な凋落を意味することでしょう。EUは英国の離脱でこれから多くの問題を抱え分裂する可能性は大きいし、またアメリカも、トルコというユーラシアにおける最大の拠点を失うことで、覇権は決定的に凋落することでしょう。
 しかしアメリカは、このような覇権の凋落をただ手をこまねいて見ていることはないはずです。覇権を延命させるために、新たな紛争や戦争のタネをかならず仕掛けてくるはずです。
 こうした混沌とした方向に向かうのかどうか、やはりトルコがひとつのカギになります。
 これから数ヵ月間は緊張した期間になるはずです。暑い8月になりそうです。

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Profile:高島 康司(たかしま やすし)
高島 康司(たかしま やすし)

社会分析アナリスト、著述家、コンサルタント。
異言語コミュニケーションのセミナーを主宰。ビジネス書、ならびに語学書を多数発表。実践的英語力が身につく書籍として好評を得ている。現在ブログ「ヤスの備忘録 歴史と予知、哲学のあいだ」を運営。さまざまなシンクタンクの予測情報のみならず、予言などのイレギュラーな方法などにも注目し、社会変動のタイムスケジュールを解析。その分析力は他に類を見ない。
著書は、『「支配−被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる』(2011年1月 ヒカルランド刊)、『コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル』(2012年2月 徳間書店刊)、『日本、残された方向と選択』(2013年3月 ヴォイス刊)他多数。
★ヤスの備忘録: http://ytaka2011.blog105.fc2.com/
★ヤスの英語: http://www.yasunoeigo.com/

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