“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2022.05
ソロスの警告

「パンデミックや気候変動との闘い、核戦争の回避、国際機関の維持といった人類全てに重要な問題は、今回のロシアによるウクライナ侵攻によって二の次にせざるを得なくなった。われわれの文明は存続が危ぶまれる事態と言える」
 世界一の投資家として有名なジョージ・ソロス氏はダボス会議でロシアのプーチン大統領を激しく非難しました。実際、今回の戦争勃発によって世界は様変わりしました。世界の経済に多大な影響力をもたらすスイスで開催されるダボス会議は2年半ぶりに対面で開催されたのです。
 開催初日にはウクライナのゼレンスキー大統領が演説、一方でロシアからの参加者は皆無、中国からの参加者も大きく減少するなど、会議は日米欧など民主主義国主体で開催されました。かつて中国の習近平主席が初日の演説を行ったことを考えると、会議の性質も変化しつつあるようです。

 振り返ってみると、ここ数年かつて考えられなかったような事態が世界に次々と襲いかかっています。
 新型コロナウイルスの世界的なまん延によって世界の流通や経済がストップし、各国例外なく危機的な状況に陥ったのですが、発生源と言われていた中国は、発生地である武漢での調査や原因究明を拒否、各国ともワクチンの開発や供給で協力体制を作ることもありませんでした。結果、効果のあるワクチンが全世界にくまなく行き渡ることもなく、世界的にみると依然としてコロナまん延が収束していません。
 また、気候変動に対しての取り組みも一致しませんでした。
 二酸化炭素の世界的な際限のない排出が世界の気象状況を激変させつつあり、地球は将来的に住めない惑星になってしまうとの危機感は世界のどこでもあるのでしょうが、そのような考えをもとに、人類全体が一致して行動することはできませんでした。

●ソロス氏の見解・・『開かれた社会』と『閉ざされた社会』
 気候変動の取り組みであらわになってきたことは、先進国や発展途上国の利害は一致することなく、各々が「お互いの道を進むしかない」いう現実を見せつけられたわけです。これでは地球の温暖化など止められるわけもありません。
 とは言うものの、コロナのことも気候変動のことも、世界各国、どこでも協力しようという一定の問題意識はあったはずです。コロナのことも気候変動のことも、人類全体の問題であり、解決をはかる必要があるという共通認識はあったと思います。
 ところが、これらの共通認識や課題解決のための協力体制を構築しようという考えも全て、今回のロシアによる暴挙で消え去ってしまったように思えます。

 国連も今回の事態収拾に全く役に立っていません。常任理事国であるロシアが自ら侵略戦争を起こした場合、国連は全く無力であることがあらわになったのです。しかも今回のロシアの暴挙に対して中国はロシアを全く非難していません。最も中国だけでなくインドをはじめとする新興国などもロシアとの関係悪化を恐れ、ロシア非難については腰が引けているのが現実です。

 ソロス氏は「ロシアによるウクライナ侵攻は晴天の霹靂ではなく、『開かれた社会』とロシアや中国に代表される『閉ざされた社会』の異なる統治システム間の争いの激化によるものだ」としています。
 実際そのように思えてなりません。民主主義国からすれば、プーチン大統領の暴挙に対して、なぜロシア国民は声を上げないのか? と感じるわけですが、ロシアはまさに独裁国家であり、旧KGBのような秘密警察が支配する警察国家であって、人々が自由に意見を発信することもできず、仮に政府に反対する意見を発信すれば自らの身に危険が及ぶわけです。このような『閉ざされた社会』においては独裁者であるプーチン大統領が全てのことにおいて圧倒的な決定権も持っているので、誰もプーチン大統領の意見に反対することができず、結果、かような暴挙が起こることとなり、そしてその暴挙を止めることもできず、止めるどころか暴挙がさらに激しくなっていくわけです。無差別な民間人への攻撃など、ロシアの戦争犯罪は加速するばかりです。

 おなじく中国の習近平主席も『ゼロコロナ対策』で暴走を続けています。今の世界を見渡せば、各国マスクの着用なども撤廃する動きになってきて、コロナとの共存体制ができあがりつつあるわけです。日米欧など民主主義体制の先進国においては、コロナ感染による重症化リスクも著しく軽減してきています。ワクチンの広がりや治療薬の普及も大きいわけです。そのような状況下にあって、唯一中国だけがゼロコロナ政策を断行し続けて、都市封鎖を繰り返していることは世界的にみれば、まさに異様としかいいようがないわけです。これも3期目がかかった習近平氏のメンツを保つために中国において、ゼロコロナ対策が強引に行われているわけであって、中国全土でゼロコロナ対策への批判は完全に封印されているわけです。まさにこれも『閉ざされた社会』の弊害と言えるでしょう。
 北朝鮮も全く同じです。コロナのまん延があっという間に北朝鮮の全人口の1割に達するという悲劇的な状況下にあって、米国や韓国からのワクチン援助の申し出はことごとく断られているわけです。それでも北朝鮮はミサイル開発や核開発をやめることはありません。これは独裁者である金正恩主席の権力維持のための政策であり、かような愚かな政策は北朝鮮国民の大多数を苦境に陥れ、国の発展を阻害しているわけです。

 そもそもなぜ、プーチン大統領がウクライナにおける西欧寄りの政権を恐れたかといえば、これはロシアの隣国であるウクライナが完全な民主化の下、経済的にも発展するようになっていけば、いずれロシアにもその影響が波及してきてロシア国内の政治的な基盤が崩れていき、将来的な混乱が避けられなくなると感じていたからでしょう。プーチン大統領にとって、ウクライナが『開かれた社会』の一員になっていくことは耐え難いことだったと思われます。そしてプーチン大統領はやむなく最終的な手段である軍事侵攻を選んだように思えるのです。
 そういう意味では今回のプーチン大統領によるウクライナ侵攻はまさに、人類の発展を阻止してしまう『閉ざされた社会』からの強いアレルギー、強烈な反発が起こったように思えます。
 ソロス氏によれば、プーチン大統領は「恐ろしい間違いを犯した」ことを認識しており、停戦交渉の場を準備しているようだとのこと。ただソロス氏は「停戦は達成されないだろう」と悲観的に見通しを述べています。
 習近平主席については、「一般的に予想に反して習近平主席が3期目の続投がなくなる可能性もある」として、「たとえ無事に3期目を迎えたとしても、権力と影響力は格段に落ちるだろう」と指摘しています。
『閉ざされた社会』であるロシアと中国は、その矛盾をあらわにしつつあるようです。ソロス氏は「世界の全資源を動員してプーチン氏をいち早く倒す必要がある」と呼びかけています。まさに現在の世界は「人類の未来を賭けた正念場」に入りつつあるということでしょう。

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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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