船井幸雄注目の “本物”に携わる人たち

このページでは、舩井幸雄が注目していた、医療、経営、農業、未来予測、占星術などあらゆる分野で活躍する“本物”と言っていい方々を紹介します。それぞれの方に毎月１回、３回ずつコラムを書いていただき、順番にいろいろな方を紹介させていただきます。

2022.02.10（第133回）

★今回の執筆者★
任意団体テンカラセン代表　他　高橋一美さん（2回目）
（高橋一美さんの詳しいプロフィールはページ下にあります。）

最悪のできごとと、人生を変えた出会い

現場での活動のようす

「BOND＆JUSTICE」の大圡雅宏さんと

こんにちは。
熱海市伊豆山で活動を行う任意団体「テンカラセン」代表の高橋一美です。

前回ご紹介した、伊豆山にコミュニティカフェをつくるためのクラウドファンディングは、おかげさまで目標以上のご支援をいただくことができました。コラムを読んで支援してくださった皆さまも本当にありがとうございます。現在は、土石流災害の月命日にあたる4月3日のオープンを目指して計画を進めているところです。

さて、２回目となる今回は、支援活動での出会いについてお伝えしたいと思います。

●今の自分にできるかぎりのことを
発災直後の伊豆山地区は、どの家に何人住んでいるのかといった居住実態が把握できておらず、仲間たちとローラー作戦で一軒一軒ドアを叩いてまわり、安否や健康状態の確認、必要な物資や困りごとなどを聞き取りながら地図に落とし込む作業を行なっていきました。

毎日5～10人の仲間が現場に来てくれただけでなく、市役所で物資を集める人、避難所となったホテルで被災された方たちの困りごとをヒアリングする人、町内会長と情報共有する人……人が人を呼び、自然と役割分担が決まっていったように思います。
仲間たちのおかげで「一人じゃないんだ」と感じると同時に、今まで見ないふりをしてきた地元と向き合い、できるかぎりのことをしようと決めました。

すぐに現場へ入ってくれた「OPEN JAPAN」や「Civic Force」のような災害支援のプロの存在も、とても心強いものでした。混乱する現場の最前線で、やるべきことを順序立てて共有・サポートしながら、復興に向けた道筋をつくってくれたのです。

彼らのミッションは行政や街の自立支援であり、ある程度の見通しが立った段階で現場を離れてしまうと知ったときはショックでしたが、だからこそ「彼らがいる間に学べることを学び、引き継がなければ伊豆山の復興はない」と、前に進むための危機感も生まれました。

のちの「テンカラセン」のメンバーや森林保全NPOの「熱海キコリーズ」、土砂かきなどを行なう地元の有志団体「A-73」など、たくさんの人に「一緒に話を聞きにいこう」と声をかけて頼り、彼らが動いてくれたことで伊豆山の今があるのだと思います。

また、重機での作業や個人支援、行政との仲介、コインランドリーやお風呂の設営など、それぞれの強みを持つ多くのボランティア団体も、被災された方たちにとって必要なタイミングを見計らいながら、支援に駆けつけてくれました。
災害支援団体や地元の仲間も含め、こうした人たちがいてくれたことへの感謝を忘れず、伊豆山の人たちに伝えていくことも自分のお役目のひとつだと思っています。

●心に種火をともした出会い
NPO法人「BOND＆JUSTICE」の大圡雅宏（おおどまさひろ）くんとの出会いは、大きなターニングポイントになりました。彼も東日本大震災の被災者でありながら動き出し、支援団体を立ち上げ……と自分と同じ状況で活動を始め、今では全国の被災地に足を運んでいます。

大圡くんと出会って話をしていたとき、こんなことを言われました。
「こういう活動って別にやらなくてもいいことだし、やるのは誰でもよかったはずなのに、それでも一美さんが立ち上がって動いたのは、運命というか宿命なんじゃないですかね」
いま思えば、その言葉が自分の心に種火をともしたのだと思います。

2021年7月2日までの自分は、「どうやったらお金を稼げるか」を考えて生きてきました。
けれど地元で土石流が起こり、頭で考えるより先に動き出したことで、これまで身近にいなかった人たちと出会い、言葉を交わす機会に恵まれました。
たくさんの出会いを得たことで、家族はもちろん自分でも驚くほど変わったなと感じます。

もしかすると、ずっと自分に自信がなかったのかもしれません。
今もテンカラセンの活動で、力不足を感じる場面はたくさんあります。
器量のなさが悔しくて涙が出ることもあるけれど、そんな自分が好きだと思えるようになりました。

あの日起きたのは最悪のできごとですが、自分にとっては人生が変わる大きなきっかけにもなったのです。

最後までお読みいただきありがとうございました。
最後の回では、私たちテンカラセン見据える伊豆山の未来についてお話したいと思います。

Profile:　高橋　一美（たかはし　かずみ）

高橋　一美さん（右端）

任意団体テンカラセン代表　
株式会社キヨミ代表取締役
GDFグループ代表取締役

1976年、静岡県熱海市生まれ。一児の父。
東京国際情報ビジネス専門学校を卒業後、家業の青果店を継ぐため有限会社恵比寿青果に5年間勤務。父との約束で「誰よりも先に出勤し、一番最後に帰る」生活を続けながら経営ノウハウを学ぶ。35歳で株式会社キヨミを継承し、40歳で飲食店やケータリング、ドローン、物流サポートなどを幅広く手がけるGFDグループを設立。
2021年7月3日に地元の熱海市伊豆山で土石流が発生すると、翌日から仲間たちと支援活動を開始し、10月3日に支援団体「テンカラセン」を立ち上げる。日々の支援活動を続けながら、伊豆山に人や情報が交わる“交差点”のようなコミュニティカフェをつくるべくクラウドファンディングを実施中。
テンカラセンWebサイト
https://www.tenkarasen.org/
クラウドファンディング（1月22日まで）
https://camp-fire.jp/projects/view/507777