船井幸雄注目の “本物”に携わる人たち

このページでは、舩井幸雄が注目していた、医療、経営、農業、未来予測、占星術などあらゆる分野で活躍する“本物”と言っていい方々を紹介します。それぞれの方に毎月１回、３回ずつコラムを書いていただき、順番にいろいろな方を紹介させていただきます。

　中国文化は5000年もの長い歴史を持ち、世界の文明史において重要なポジションを占めています。世界における各民族の文明の中でも、中国文化だけが唯一途絶えることなく、強い生命力を持って数千年続いたものであると言われています。
　中国伝統医学は中国文化から生まれた医学であり、2000年以上を経て、独特な中国医学の理論システムと治療に対する柔軟な考え方を築いてきました。

１．中医学の特徴
�@整体観
中国医学における整体的な思考の事です。人体の内部ではさまざまな要素が関連しあっており、更に人は自然界や環境、心理状態、生活習慣とも相互に関連しあっています。
�A弁証論治
整体観を思想の礎とする「弁証論治」はオーダーメイド医学と言えます。弁証論治とは、中医学の診察方法により身体や心についてのさまざまな情報を入手して分析し、それに合わせた治療方法を選択するという考え方です。
�B未病先防
現代の予防医学にあたる「未病先防」の考えが根幹にあります。未だ病気にまで至らないうちに、体の不調が見られる未病の状態を把握し、本格的な病になる前に対策をとることを言います。

２．新型コロナウイルスとワクチン
　2019年12月に発生し、世界的に大流行した新型コロナウイルス感染症は、強い感染力と高い死亡率で人々を脅かしました。ワクチン開発後は、皆さんが1回、2回と予防接種を行い、少々の安心感も広がりましたが、コロナ変異株が出現した後は、3度目、4度目のワクチン接種をしたにもかかわらず感染してしまった人が少なくありません。
　一般的に、ウイルスは増殖や感染を繰り返す中で徐々に変異をしていくことが知られており、新型コロナウイルスについても少しずつ変異をしています。コロナ大流行最初の（SARS-CoV-2）、その後のアルファ、ベータ、ガンマ、デルタの4種に続き、現在は新たにオミクロンに変異をしています。2021年11月末以降、日本を含む世界各地において、新型コロナウイルスの変異株（オミクロン株）の感染が報告されています。
　現在コロナの変異に対し新しいワクチンの開発が間に合っていない状態です。

３．コロナウイルス感染症に漢方薬の対応
　中国の歴史の中で疫病の大流行は321回発生しており、それらはすべて中医学（漢方薬）で収まっています。2002年12月にはSARS の集団発生がありましたが、当時SARSのワクチンは無く、漢方薬による予防、中医学と西洋医学を合わせた治療により、2003年7月、発症してから8か月後に収束しました。その際、板藍根（ばんらんこん）が予防薬として使われたことは大変印象に残っています。

４．板藍根（ばんらんこん）の紹介
【薬効】…清熱解毒凉血、利咽消腫
【薬理】…�@抗ウイルス作用
　　　　　 �A抗菌作用
　　　　　 �B清熱作用
　　　　　 �C肝臓保護作用
　　　　　 �D免疫機能を調節作用
　　　　　 �E子宮収縮する作用
【応用】…各種のウイルス性疾患及び感染症。インフルエンザ、おたふくかぜ、ウイルス性肝炎など
【注意】…妊娠初期に慎用。
【出典】…本草網目

　板藍根の薬効は清熱・涼血・解毒であり、西洋医学的には抗炎症・抗ウイルス・抗菌作用などと解釈できます。
　特に体の上部の熱を冷ますため、発熱、のどや耳の痛みなどに用いられます。中国では古くから風邪やインフルエンザの予防に、他にも肺炎、流行性結膜炎、扁桃炎、流行性耳下腺炎、丹毒（細菌感染によって起こる皮膚の化膿性炎症）など様々な感染症や炎症に用いることができるとされています。
　中国では「板藍根」という生薬を煎じてお茶として飲む習慣があり風邪の予防に活用しています。以前、中国を中心に起こったSARSの流行の際には板藍根の需要が非常に高まり日本でも注目を集めました。
　西洋医学薬理研究においても板藍根は抗菌作用の幅が広く、多種類の細菌の増殖を抑制することや、多くのウイルスの働きを抑制し、インフルエンザウイルスの増殖も抑制することが報告されています。

５．近代における板藍根の応用
　板藍根はいろいろな感染症に幅広く使われています。
　インフルエンザを主として、咽頭炎、扁桃腺炎、おたふくかぜ、ウイルス肝炎、脳炎などによく使われています。
　中国の家庭では板藍根は欠かせない存在です。インフルエンザが流行った時、新型ウイルスが発生した今回、まずは板藍根を煎じて外出前にお茶の代わりに飲んで予防します。

　人類は紀元前の昔から、さまざまな感染症と戦ってきました。ペスト、梅毒、天然痘、コレラ、結核、エイズ、新型インフルエンザ、SARS、コロナ、サル痘・・・・
　これからもまた新たなウイルスが発症する恐れがあります。感染症パンデミックの脅威が大きくなってきている時代に、伝統医学の知恵を生かして人々の健康を守りましょう。

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Profile:　周　軍（シュウ　グン）

周　軍さん

新日本漢方株式会社 代表取締役
世界中医薬学会聯合会生殖医学専業委員会 理事
1983年北京中医薬大学卒業、中医学学士号取得。北京朝陽中医病院 内科医師、講師を経て1992年来日。来日後、日本中医振興協会、漢方専門薬局アドバイザー、日本中医薬研究会 専任講師を務める。著書は『後天の本』（北京中医雑誌）ほか多数