“本物主義”時代の幸せな生き方

このページは、(株)本物研究所と(株)船井メディア 社長の佐野浩一によるコラムページです。
佐野浩一の義理の父でもある舩井幸雄は、1980年代のバブルの真っただ中の頃からすでに、「競争主体で矛盾のありすぎる資本主義はもうもたない」、そして「資本主義にとってかわるのは『本物主義』ではないか」と考えており、2003年に(株)本物研究所をつくりました。
その(株)本物研究所の設立当初から社長として、佐野は常に、“本物”や、人々の“本当の幸せ”について真剣に考えてきました。
そんな佐野が、いよいよ間近に迫ってきたと思われる「本物主義」時代に向け、私たちはどう生きていけばいいのか、また「幸せに生きる」とはどういうことだろう? ということを先駆けて模索し、皆さまと一緒に考えていきたいと思います。

2015.05.01(第15回)
禅的生き方に学ぶ

 最近、もっともハマっているのが、「禅的生き方」に関する本を読んで、思索にふけることです。
 そのなかで、もっともおススメが、曹洞宗徳雄山建功寺ご住職であり庭園デザイナーの枡野俊明氏が書かれた『競争からちょっと離れると、人生はうまくいく』(2014年、三笠書房刊)です。
 かなり長い時間をかけて、やっと読み終えました。
 ふと、禅的なものの見方、考え方に興味を持ち、ある日書店に立ち寄ったとき、この一冊が光って見えたのです。
 長所と短所については、いろんな方が取り上げていらっしゃいますが、ここにはある種、目から鱗の記述があり感激しました。
 他人の長所も、短所も、はっきりいってしまえば、「独りよがり」の判断なのです。要するに、自分の勝手な都合が働いているとおっしゃるのです。

 たとえば、ある人を「優柔不断ではっきりしないヤツ」と自分は決めつけていても、他の人は「すごく慎重で信頼できる人」と受け止めていることだってあります。
 つまり、自分にとってどうなのかを基準に、人を判断してはいないか? ということなんですね。
 これはホントに目から鱗でした。
 さらに、長所を伸ばすのは当然だけれど、短所については、こちらの関わり方を変えることで、抑えられたり、見えなくしたりできるとおっしゃいます。
 短所には、「改善要素」と「阻害要素」があり、前者はこちらの関わり方を変えることでカバーできるというわけです。
 時間にルーズな人と付き合うには、たとえばこちらが直前にリマインドメールを送るだけで、改善要素としてカバーできます。
 庭園をつくる際、阻害要素と考えられる敷地の真横にある国道は、騒音などいかんともしがたいものがあります。しかし、庭に滝をつくって水を流し、その音で騒音を緩和することを考えればいいと……。
 相手を変えようとするより、こちらの対応を変えることで、長所的なものを膨らますことができるということですね……。この禅的思考のなかには、「まず変わるのは、相手より自分」という視点があります。

 一方、禅では、自分を否定することを厳しく戒めているのだそうです。逆を言うと、自分を大事にするということですね。
 臨済宗中興の祖と言われる白隠禅師の師匠・正受老人が残されたのが、次の言葉です。
 「一大事と申すは、今日ただいまの心なり」
 一大事とは、人生で最も大切なこと。それは、いまの心。「いまの自分」を否定することは、その大切な「いまの心」を蔑(ないがし)ろにすること……。「即今、当処、自己」というのは禅的な生き方の柱だそうです。

 即今=たったいま。
 当処=自分がいるこの場所。
 自己=自分自身。
 いまここで、自分が心を尽くしてやることがすべて。よくても、よくなくても、順調だろうと、そうでなかろうとも、人に認められようと、認められまいと……、いまの自分を、そのまま、しっかり見つめ、受け止め、まっとうすることが大事なんですね……。
 今回は項目だけにしますが、禅的思考には、ほかにもいくつかの軸があるようです。
 @「勝つか、負けるか」「白か、黒か」「善か、悪か」、二者択一の発想から離れる。
 A比較、競争から距離をとる。
 B結果よりもプロセス。

 これからの、“本物時代”。
 明らかに、人間としての根元的な思考の変化を求められているような気がしてなりません。その大きく、深い示唆を与えてくれるのは、どうも、長い長い歴史のなかで醸成されてきた禅的思考、禅的生き方であるように思えてなりません。
 しかも、舩井幸雄が求めた「上手な生き方」自体も、禅的思考に基づいていると、確信に至ったのです。



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Profile:佐野 浩一(さの こういち)
佐野 浩一(さの こういち)

1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。

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