“本物主義”時代の幸せな生き方

このページは、(株)本物研究所と(株)船井メディア 社長の佐野浩一によるコラムページです。
佐野浩一の義理の父でもある舩井幸雄は、1980年代のバブルの真っただ中の頃からすでに、「競争主体で矛盾のありすぎる資本主義はもうもたない」、そして「資本主義にとってかわるのは『本物主義』ではないか」と考えており、2003年に(株)本物研究所をつくりました。
その(株)本物研究所の設立当初から社長として、佐野は常に、“本物”や、人々の“本当の幸せ”について真剣に考えてきました。
そんな佐野が、いよいよ間近に迫ってきたと思われる「本物主義」時代に向け、私たちはどう生きていけばいいのか、また「幸せに生きる」とはどういうことだろう? ということを先駆けて模索し、皆さまと一緒に考えていきたいと思います。

2016.10.01(第32回)
BoPビジネス3.0

 舩井幸雄は、いまを「混とんとして先行きが見えない」時代としつつも、「未来はきっとよくなる」と伝え続けてきました。そのために必要なのは、人々の「世のため、人のため」の意識であると力説したのです。そのモデルとして、日月神示に示された「みろくの世」にしていく必要があるとして、講演でもよく話していました。
 その一方で、「資本主義は断末魔を迎えている」として、「資本主義崩壊」が近いことを示唆していたわけですが、それでも、農耕や狩猟を前提とした自給自足社会にすぐさま移行していくとは想像できません。きっとその「過渡期」にあたる社会像があるにちがいないと思っていました。
 そんな折、友人の阪口竜也さん(フロムファーイースト株式会社・代表取締役)から、ある実践についてお話をお聴きしたことで、「BOPビジネス3.0」なるものが進行していることを知り、まさにこれが明るい未来への“予兆”ではないかと感じたのでした。
 今回は、少々むずかしいお話になるかもしれませんが、これこそが本物時代へ私たちを誘ってくれる視点であり、方法論であると確信しましたので、ぜひお伝えしたいと思いました。
 そもそも、BoP、あるいはBoPビジネスとは何か?
 人類のおよそ60%、40億人をゆうに超える人々が、1日数ドルの収入で暮らしているという事実があります。
 BoPとは、The Base of the Pyramidの略で、「ピラミッドの底辺」を意味します。2002年に、スチュアート・L・ハートとC・K・プラハラードによってはじめて生み出され、より効果的な貧困対策と数兆ドル規模ともいえる新市場に存在するビジネスチャンスの両方を示す代名詞となったようです。
 BoPビジネスの定義については、多様な議論、考え方が存在します。ここでは、主として、途上国におけるBoP層(Base of the Economic Pyramid層)を対象(消費者、生産者、販売者のいずれか、またはその組み合わせ)とした持続可能なビジネスであって、現地における様々な社会的課題(水、生活必需品・サービスの提供、貧困削減等)を解決することが期待される、新たなビジネスモデルと定義して進めていきます。

 マクロに現状を見ると、先進国市場が相対的に縮小傾向にある中、BoP層は紛れもない「世界経済における新たな市場」と言ってよいでしょう。
 BoP層は、繰り返しますが、約40億人を占め、5兆ドル規模に達する極めて大きなポテンシャルを有する将来市場と捉えられます。2050年までに、全世界人口の85%を占めるとも言われています。その一方、低い所得水準に起因する貧困、不十分な生活基盤・社会基盤等に起因する衛生面の問題等の社会的課題にも直面していて、単なる経済協力だけでは、この課題が解決できないのは自明と言ってもよいでしょう。

 実は、この「BoPビジネス」にも変遷があって、初期のころの「BoP1.0」では、開発途上国の中間所得層(年収3,000ドル程度)を新市場とみなして、製品やサービスを安価にするために「小分け」で販売するなどの手法がとられたそうです。たとえば、某調味料メーカーは、現地の人たちが瓶では買えないので、小さな袋に分けて販売するなど、生活レベルに合わせて商品を開発・提供するように工夫されていました。
 さらに、現在の「BoP2.0」では、単純に新市場としてではなくパートナーとして捉え、これまでの先進国におけるビジネスモデルの延長線上でもなく、ゼロベースから現地パートナーとともに全く新しいビジネスモデルを構築することを前提として、現地の事情や環境に即したビジネスを、現地パートナーとともに実践していくことを目指しています。
 ただ、最終的には、BoP層の人々が自立できるようになるのがベストであって、金品を与えるだけの援助がいかに役に立たないかは、もう誰もが気づいているはずです。しかも、経済的に自立できなければ、医療も教育も進むものではないということはもう十分経験済みです。
 そこで新たな取り組みとして「BoPビジネス3.0」が生まれました。
 日本は、「BoPビジネス」の取り組みについては、ヨーロッパやアメリカに比べると、極めて遅れているとしか言えません。しかし、この日本にも、先進的な「BoPビジネス」に果敢に取り組む企業があるのです。
 大阪にあるフロムファーイースト株式会社は、主にオーガニック原料を使った石鹸、シャンプーといった美容商材を製造販売している企業です。具体的には、オーガニックココナッツなどの天然素材のみから作られる、無添加かつノンキャリーオーバーの石鹸やシャンプー。人間の肌に対してとてもやさしく、そのまま自然界に廃棄しても地球に環境負荷をかけない製品です。

 現在、フロムファーイーストは、カンボジアの農村部で植林。製品開発。環境への再投資という循環型の「BoPビジネス」を展開しています。BoP層とともに植林をして洪水抑制を行うとともに、植林した樹木から得られる葉・実・油などの原料を日本に輸出し、日本市場でシャンプーや石鹸やヘアカラー剤などの美容関連消費財を販売し、そこで得た利益をより広範囲の植林へ再投資していく仕組みです。
 さらには、現地で安定的な生産体制が整ったときには、現地の観光客や美容室を通じた富裕層、中間層向け販売も行うことで、その循環を強めていこうと考えていらっしゃいます。
 「BoPビジネス1.0」や「BoPビジネス2.0」が、あくまでも一つの企業や一つのビジネスで完結した概念であったのに対し、新たに生まれてきた「BoPビジネス3.0」は複数の事業者・組織が協力し合い、BoP層とともにビジネスのエコシステムを創造することがポイントです。
 さらに、そもそも「BoPビジネス」において重視されてきた「貧困削減」というテーマから「持続可能な開発」へと視点がシフトされていることが、まさに本物時代を迎えるにあたり最重要視されなければいけないテーマだと考えられると思うのです。

 新しい時代の未来をつなぐテーマは、ズバリ「循環」。
 「消費」や「浪費」ではなく「循環」、そして「リサイクル」や「リユーズ(再利用)」の上位概念とも考えられる「循環」こそが、次代のキーワードでなければいけないと考えます。
 そうした意味で、企業も「BoPビジネス3.0」から多くを学び、実践モードに入っていかなければいけないと感じています。

(参考図書:『BoPビジネス3.0――持続的成長のエコシステムをつくる』 フェルナンド・カサード・カニューケ、スチュアート・L・ハート著、平本督太郎訳、英知出版刊)



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Profile:佐野 浩一(さの こういち)
佐野 浩一(さの こういち)

1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。

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