みんなでひとつ命を生きていく〜宮ぷーこころの架橋プロジェクトから〜
このページは、特別支援学校教諭で、作家でもある「かっこちゃん」こと山元加津子さんによるコラムページです。
かっこちゃんは障害を持った子どもたちと、かけがえのない一人の友達として触れ合い続けています。その様子は『1/4の奇跡』という映画にもなりました。このコラムでは、かっこちゃんの同僚で、2009年2月に突然脳幹出血で倒れ、奇跡的に命をつないだ宮田俊也さん(通称・宮ぷー)との触れ合いの様子を中心にお届けします。
今年は雪がたくさん降りましたが、それでも、少しずつ春が近づいてきていますね。1月からうれしいことがいっぱいありました。毎日、宮ぷーこころの架橋プロジェクトで日記を配信させていただいていますが、1月28日と2月1日の日記です。
【1月28日の日記】
今日は宮ぷーの食べる検査でした。12時20分くらいに病院につきました。宮ぷーは「きてくれてありがとう じつはもうどきどき」と言いました。食べることは一生難しいでしょうと言われていた宮ぷーだけど、宮ぷーが食べることをあきらめていた時期は一度もありませんでした。どんなに、何度も「絶対に無理だよ」と言われても、宮ぷーは決してあきらめなかった。けれど、高い熱が出たことがあったりして、口にものを入れることはいけないというふうになっていました。宮ぷーがそのために、元気がなかったこともあって、先生にお願いを何度もしました。私はきかんぼうなので、宮ぷーの安全を考えてくださっていることもわかっていながら、「前が見えないということはつらいことです。私はいつか、必ず食べられるようになると思っています。でも、それまでのあいだ、口から胃までを使わないという時間をこれ以上長くしたくないです。本人が、希望を持てるように、少しでも前へ進んでいるという実感を得るために、熱がないときは水だけも練習させてください」と言いました。先生が、水ならいいでしょう、一日スプーン2さじだけ・・・。
そんなふうだけど、口の中のマッサージや舌を動かす練習はずっと続いていました。何よりも宮ぷーは絶対に食べたいんだって思い続けてくれたからです。だから、今日のことは、すごく期待をしていたし、心配でもあったと思います。緊張している宮ぷーに「だいじょうぶ。宮ぷーはじょうずだもの。だいじょうぶだよ」と言いながら、口のマッサージをしたり、歯も磨きました。
一階のレントゲン室には看護師さんがついてきてくださいました。そして、リハビリ病棟でお世話になった前の主治医の先生と嚥下の指導をしてくださった先生とが来てくださいました。私はどこかベッドで検査をするのかなあと思ったら、車椅子でということで、ああ、こんなに身体を起こして、ゴックンの練習したことがないなあと、少し心配になりました。先生が宮ぷーのそばに座られました。最初は、ココアゼリーです。先生が説明してくださって、宮ぷーが飲む様子は、画像にCTなのか? わからないけれど、映し出されていました。食道と肺への入り口もしっかりわかりました。あんなに飲めないと言っていた宮ぷーだったのに、先生が口の奥にココアゼリーを入れたとたん、ゴックンとすることができました。わー、すごい。そして、しっかりと食道へ入っていきました。お二人の先生が、「ほー」「わー」と歓声をあげてくださいました。手をおでこのところにあてて、「いやーすごいな」と言ってくださいました。ああ、よかった、でも、画像には肺への入り口のところに、少し残っているのです。ああ、あれが、肺へ入らないといいけど、ドキドキしました。でも、またゴックンをすると、ゴックンに勢いがあるので、それを一緒に食道へ持っていってくれました。ああよかった。舌の真中あたりにおいても、だいじょうぶ。
先生が、「すごいなあ。舌の動きもいいね、すごい回復です」と言ってくださって、私もただ「じょうずよ。すごいよ。じょうずよ」と言い続けるばかりでした。ありがとうございます。お二人の先生がすごくすごく喜んでくださいました。まるで自分のことのように喜んでくださって、そのことも本当にうれしくてなりませんでした。ところが、あまり表情が変わっていなかったので、それほどうれしくないのかなと思ったのに、そのあと、立つ練習をしていたら、急に宮ぷーが泣き出しました。「うれしい」と言って泣きました。私も、立つ練習をして、ささえていたんだけど、私もうれしくて、声をあげて泣きたくなって、一緒にわんわん抱き合って泣きました。
【2月1日の日記】
車椅子に乗る宮ぷー。自分でこげました。 |
今日は普通の車いすのデモ機が来る日です。今までは、座位保持装置といって、首まですっぽりと覆われるようなタイプの車椅子に載っていました。でも、それでは、ずっと首が起こしておけなくて、いつまでたっても、首がしっかりしないし、手でこぐこともできません。それで、新しい車椅子を買うことになり、そのためにデモ機を持って来てくだったのです。私が行くと、宮ぷーは「ひっしにこいでみる」といいました。「ひっしになる」ってまた言いました。そして、車椅子に乗って、私がガイドのところに手を置いたら、宮ぷーは親指と人差し指でガイドをはさんだり、抑えたりして、すごく一生懸命手を前へ動かしました。車椅子がすすみました。わあ、すごいよ。すすんだー。すすんだー。まだ、前へ出た手を後ろに下げてまたガイドの上におくことはできません。でも、必ずできるようになりますね。帰り道、急に実感がわいてきて、涙が出ました。わあわあ、泣きたくなって泣きました。だって、だって。宮ぷーが車椅子をこいだんだよ。こいだんだよ。自分で、自分の手でこいだんだよ。みなさんのお祈りのおかげです。本当に本当にありがとうございます。そして、もちろん宮ぷーの必死のがんばりのおかげでもあります。ありがとう。一生体のどこも動かないと思われた宮ぷーがどんどん回復していくことが、本当に本当にうれしいです。
・・・・・・
もっともっときっと、もっとどんどん回復します。毎日一生懸命頑張れば、それはきっと明日につながりますね。
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『満月をきれいだと僕は言えるぞ・・GO!GO!意思伝達大作戦』三五館(税別1500円)宮田俊也・山元加津子著
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宮ぷー(右)と一緒に。
1957年 金沢市生まれ。エッセイスト。愛称かっこちゃん。石川県特別支援学校教諭。障害を持った子どもたちと、教師と生徒という関係ではなく、かけがえのない一人の友達としてふれあいを続けている。分け隔てなく、ありのままに受け入れる姿勢は、子どもたちの個性や長所を素晴らしく引き出している。そんな子どもたちの素敵さを多くの人に知ってもらおうと、教師をしながら国内外での講演・著作活動など多方面に活躍中。教師、主婦、作家、母親という4役を自然体でこなし、まわりの人に優しく慈しみをもって接する姿は、多くの人の感動を読んでいる。著書に『本当のことだから』、『魔女・モナの物語』(両方とも三五館)、『きいちゃん』(アリス館)、『心の痛みを受けとめること』(PHPエディターズグループ)などがある。
宮ぷーこころの架橋プロジェクト メルマガ登録:
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同プロジェクトから生まれたHP:http://ohanashi-daisuki.com/index.html
山元加津子さんHP「たんぽぽの仲間たち」:http://www005.upp.so-net.ne.jp/kakko/