みんなでひとつ命を生きていく〜宮ぷーこころの架橋プロジェクトから〜
このページは、特別支援学校教諭で、作家でもある「かっこちゃん」こと山元加津子さんによるコラムページです。
かっこちゃんは障害を持った子どもたちと、かけがえのない一人の友達として触れ合い続けています。その様子は『1/4の奇跡』という映画にもなりました。このコラムでは、かっこちゃんの同僚で、2009年2月に突然脳幹出血で倒れ、奇跡的に命をつないだ宮田俊也さん(通称・宮ぷー)との触れ合いの様子を中心にお届けします。
隣の隣のクラスのななちゃんが教室にやってきて、私に聞いてくれました。
「かっこちゃん、ななこのこと、特別に好き?」「特別?」ななちゃんに尋ねると、ななちゃんは、「そうや。ななこのこと、特別に好きか?」と言いました。
「もちろんやよ。ななちゃんのこと、特別に好きやよ」私はななちゃんのこと大好きなのです。でも、ななちゃんはそれでは満足してくれないようでした。
「そんなら、かっこちゃんは、クラスのゆきちゃんやかずくんやりっちゃんは、普通なんやね」一緒に遊んでいたゆきちゃんやかずくんやりっちゃんが、はっとして私の顔をみました。あわてて、
「ううん、ななちゃん、そうじゃないよ。ゆきちゃんはゆきちゃんで特別に好きだよ。りっちゃんがまた特別にすきやし、かずくんも特別に好きやよ」
なーちゃんは首を大きく振って言いました。「そんなんだめやよ。みんな特別に好きやったらそれは特別にならん」ななちゃんはそう言いました。
「だから、なーちゃんのことどれくらい好きなんやって」
「特別に特別に大好きだよ」
だってそうなのです。なーちゃんのこと、特別に大好き。だけど、ゆきちゃんのこと、特別に好きだし、かずくんのことも特別に好き。そしてりっちゃんも特別に好きなんですもの。
「それやったらよくわからんわ。ななこだけ特別に好きなんじゃないんか」
「だって、ななゃんは特別に好きだもん」どんなに言ってもななちゃんは、
「なら、みんなは普通に好きなんやね」というのです。
「違うよ。みんなも一人一人特別に好きだよ」と私も言うとななちゃんは悲しそうに、そして、困った顔をしました。そしてかっこちゃん、証拠を見せてというのです。大好きなことにどうやったら証拠が見せられるでしょうか?
「証拠の見せ方わからないよ。ななちゃん教えてくれる?」うーんと考えこんだななちゃんが、いいこと思いついたよと言いました。
「ここにおまんじゅうがあるとしよう。ないけどね、でもあるとしよう。そのおまんじゅうは、いっぱいあって、かっこちゃんはいくつでもあげられて、それで食べても太らんとしたら、かっこちゃんはななこにに何個くれる?」
ななちゃんは、その当時120キロくらいありました。だから、太るか太らないかはとても大切なことだったのです。
「ななちゃんは何個ほしいの?」と聞くと、ななちゃんは、
「ななこは、30個ほしいわ」と言いました。
「なあんだ、たった30個でいいの? ほんなら、30個ななちゃんにあげるよ」
だって、太らなくて、どれだけでもあるのなら、私、特別に大好きななーちゃんに、ほしいだけあげたいです。そして、もしりっちゃんがひとつしかいらないって言ったら、りっちゃんには特別に一個だけあげたいし、ゆきちゃんが5個ほしいっていってくれたら、ゆきちゃんには特別に5個あげたいです。だって、ほら、特別に好きだもの。
ところが、ななちゃんはすごくすごくうれしそうでした。ななちゃんは、「ほっか、かっこちゃんはななこに30個くれるんか……くれるんか……ほんなら、うれしいわ」
ニコニコしてななちゃんはすっかり満足したようでした。自分の教室に帰りかけてもう一度、私の方を向いてききました。
「かっこちゃん、ななこのこと特別に好きなんか」
「そうだよ。特別だよ」そうしてわたしも、ちょっとななちゃんに聞いてみたくなったのです。「ななちゃんは私のこと、特別に好き?」そのとき、ななちゃんが私のところまで走ってきて、私をぎゅっと抱きしめてくれました。そして、
「ななこは、かっこちゃんのこと、スペシャルに特別に好きや」ぎゅっと抱きしめてくれたななちゃんの身体があったかでやわらかで、そして、うれしくて、私は急に涙が止まらなくなりました。ぼろぼろ涙をこぼしながら、私はななちゃんの腕の中にいました。特別に大好きって言われることがこんなにうれしいなんて知らないで、私はななちゃんに、最初「特別に好きだよ」って簡単に言ってしまったけど、ななちゃんはこんなにも心をこめて私のことを好きって言ってくれている。胸がいっぱいで、やっぱり泣けました。そうですね、大好きはうれしい、こんなにうれしい。本当にありがとう、ななちゃん。ななちゃんの大好きは魔法のようです。つらいことがあっても思い出すと、心がぽかぽかになって元気が出てくるのです。
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宮ぷー(右)と一緒に。
1957年 金沢市生まれ。エッセイスト。愛称かっこちゃん。石川県特別支援学校教諭。障害を持った子どもたちと、教師と生徒という関係ではなく、かけがえのない一人の友達としてふれあいを続けている。分け隔てなく、ありのままに受け入れる姿勢は、子どもたちの個性や長所を素晴らしく引き出している。そんな子どもたちの素敵さを多くの人に知ってもらおうと、教師をしながら国内外での講演・著作活動など多方面に活躍中。教師、主婦、作家、母親という4役を自然体でこなし、まわりの人に優しく慈しみをもって接する姿は、多くの人の感動を読んでいる。著書に『本当のことだから』、『魔女・モナの物語』(両方とも三五館)、『きいちゃん』(アリス館)、『心の痛みを受けとめること』(PHPエディターズグループ)、『満月をきれいと僕は言えるぞ』(宮田俊也・山元加津子共著 三五館)などがある。2011年7月に新刊『ありがとうの花』(三五館)、2011年11月に『手をつなげば、あたたかい。』(サンマーク出版)を発売。
宮ぷーこころの架橋プロジェクト メルマガ登録:
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同プロジェクトから生まれたHP:http://ohanashi-daisuki.com/index.html
山元加津子さんHP「たんぽぽの仲間たち」:http://www005.upp.so-net.ne.jp/kakko/