みんなでひとつ命を生きていく〜宮ぷーこころの架橋プロジェクトから〜
このページは、特別支援学校教諭で、作家でもある「かっこちゃん」こと山元加津子さんによるコラムページです。
かっこちゃんは障害を持った子どもたちと、かけがえのない一人の友達として触れ合い続けています。その様子は『1/4の奇跡』という映画にもなりました。このコラムでは、かっこちゃんの同僚で、2009年2月に突然脳幹出血で倒れ、奇跡的に命をつないだ宮田俊也さん(通称・宮ぷー)との触れ合いの様子を中心にお届けします。
私の友人の宮ぷー(宮田俊也さん)が脳幹出血で倒れてやがて3年4ヶ月になります。
宮ぷーは広範囲の脳幹出血だったので、当初は3時間の命、その後3日の命といわれ、そのあとも、一生植物状態で四肢麻痺であろうというお話がありましたが、うれしいことにどんどん回復を続けていて、今は、口から食事をし、意思伝達装置によって、思いを伝え、車いすが少し漕げるまでになりました。
宮ぷーのリハビリをお手伝いさせていただいていて、思っていることがあるのです。
人の遺伝子は、完全な形を覚えている。だから、損傷を受けたときに、それがスイッチとなって、完全な働きを取り戻そうとするのだと思います。損傷を受けていることがスイッチなのだということは、何ヶ月だったからもう回復しないということはないのだということのように思うのです。足が動かなかった方が、そのあと、交通事故にまた遭ってしまって、リハビリをしたところ、事故前に少しも動かなかった足が、動くようになったことが先日報告されていました。きっとそのスイッチがさらにONになったからなのかなあとそんなことをふと思いました。
考えたら不思議な話ですが、私たちにとって、いとわしいはずの損傷が実は味方なのだということ。損傷に感謝したいなあとも思います。
養護学校、後の特別支援学校に勤めて、30年が過ぎました。子どもたちと一緒にいる毎日の中で、毎日のように感じ続けたことは、私たちはみんな、本当にしっかりと宇宙とつながりながら生きているんだということであり、またその宇宙の回復力というか、人間もまたその奥に、宇宙の底力のようなものを持っているということだった気がするのです。
もちろん、宇宙という言葉はあまりに大きすぎて、そんなことを子どもたちといてすぐに思ったわけではありません。
最初に勤務した学校は、整肢学園という施設の中にあった養護学校でした。整肢学園は、山の中の温泉地に、肢体にあるいは、知的な障害とあわせもった障害を持っている子供たちの施設として建てられたところでした。子どもたちの障害の様子は様々でした。柵のあるベッドの中で一日を過ごしている子どもさんもいました。目がほとんと閉じたままで、体のどこも動かさないお子さんや、目が開いていても天井をただ見つめているように感じられるお子さんもいました。どのお子さんも、私たちが話す言葉を理解することができるようには、最初は思えなかったし、もしかしたら、誰からもそう思われていたかもしれないと思います。
けれど、担任になり、毎日そのお子さんのもとへ通うようになり、抱きしめて体を揺らし、体を起こすようにして、話しかけるうちに、自分の中に、かわいくて仕方がないという思いが生まれて、そして、顔を見つめていると、私の言葉を実はみんなわかっているのじゃないかという思いが生まれました。
「可愛い」「大好き」と言えばとてもうれしそうにしてくれていると思うし、「みんなと一緒に遠足に行きたかったね」と言えば、淋しそうに悲しそうにしていると感じました。
子どもたちは、もしかしたら、すべてのことがわかっているのじゃないかという思いはいつか、私たちは誰もが、生まれながらにして、言葉と数字の本質のようなものを理解しているのじゃないか? 全部備わって生まれてくるのじゃないかという少し突拍子もないようだけど、そんな思いが頭の中にもたげてくるのです。
そのあと、私は脳がまったくないと言われるお子さんの担当になりました。
たぶん脳がまったくないと生きることができないので、大脳の部分が生まれつきないお子さんだったのだと思います。毎日お子さんのところに通い、大好きになって、抱き起こして抱きしめて揺らして好き好きといううちに、子どもさんは私の足音を聞いただけで手足を動かしてくれるようになりました。
聞こえない、見えない、わからないと言われたお子さんは確かに私の足音を聞き、そして他の人の足音と聞き分けてくれていたのです。その後、お子さんと顔を使って一本橋こちょこちょの歌で遊んだりしていたら、お子さんは、こちょこちょの前に笑ってくれるようになりました。もうすぐ私がこちょこちょをするとわかってくれたのだと思います。本当に誰もが気持ちを持っていて、あきらめなければ、気持ちをきっと伝えあえる……私はそう思うようになりました。
そしてもうひとつは、この宇宙が全部うまくいっていて、何かことが起きても修復する力があるように、その宇宙の底力と同じ力が私たちにはあって、体を起こせば、私たちには回復しようとする力がONになり、体を横たわらせれば、最小限の働き以外はスイッチを切って、休もうとする力がONになるのだと子どもたちと長くいて、だんだんとそう思うようになりました。
誰もが思いがあり、そして回復する力を秘めているという宮ぷーの映画「僕のうしろに道はできる」(12月8日倉敷で初上映)が今、製作されています。その中の歌を私が作らせていただくことになりました。
元気が出る歌になったかなあと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・
「僕の歩く道」
僕の歩く道は簡単ではないけど
だからこそ僕は 歩き続ける
船砕く荒波が行く手をはばんでも
宇宙の底力を味方にして
僕の歩く道は簡単ではないけど
だからこそ僕は さあ進もう
銀河の回転軸を心にみすえて
僕のすべきことを今日も続ける
長く続く凪にあきらめそうになっても
宇宙の底力をいつも信じて
僕の歩く道は簡単ではないけど
だからこそ僕は さあ進もう
・・・・・・・・・・・・・・・
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『手をつなげば、あたたかい。』(サンマーク出版 山元加津子著 1,470円)
★ 山元加津子と仲間たちとのおかしな毎日を綴る
いちじくりんHP:http://itijikurin.blog65.fc2.com/
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宮ぷー(右)と一緒に。
1957年 金沢市生まれ。エッセイスト。愛称かっこちゃん。石川県特別支援学校教諭。障害を持った子どもたちと、教師と生徒という関係ではなく、かけがえのない一人の友達としてふれあいを続けている。分け隔てなく、ありのままに受け入れる姿勢は、子どもたちの個性や長所を素晴らしく引き出している。そんな子どもたちの素敵さを多くの人に知ってもらおうと、教師をしながら国内外での講演・著作活動など多方面に活躍中。教師、主婦、作家、母親という4役を自然体でこなし、まわりの人に優しく慈しみをもって接する姿は、多くの人の感動を読んでいる。著書に『本当のことだから』、『魔女・モナの物語』(両方とも三五館)、『きいちゃん』(アリス館)、『心の痛みを受けとめること』(PHPエディターズグループ)、『満月をきれいと僕は言えるぞ』(宮田俊也・山元加津子共著 三五館)などがある。2011年7月に新刊『ありがとうの花』(三五館)、2011年11月に『手をつなげば、あたたかい。』(サンマーク出版)を発売。
宮ぷーこころの架橋プロジェクト メルマガ登録:
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同プロジェクトから生まれたHP:http://ohanashi-daisuki.com/index.html
山元加津子さんHP「たんぽぽの仲間たち」:http://www005.upp.so-net.ne.jp/kakko/