みんなでひとつ命を生きていく〜宮ぷーこころの架橋プロジェクトから〜
このページは、特別支援学校教諭で、作家でもある「かっこちゃん」こと山元加津子さんによるコラムページです。
かっこちゃんは障害を持った子どもたちと、かけがえのない一人の友達として触れ合い続けています。その様子は『1/4の奇跡』という映画にもなりました。このコラムでは、かっこちゃんの同僚で、2009年2月に突然脳幹出血で倒れ、奇跡的に命をつないだ宮田俊也さん(通称・宮ぷー)との触れ合いの様子を中心にお届けします。
自分の事を好きでいること、好きでいられることについて、このごろずっと考えています。何年も前のこと、今いる学校の前の学校の国語の授業で劇をしました。
5人のたった10分の短い劇。脚本のもとは、「たいせつなきみ」マックス・ルケード。それを短いセリフになおしてみました。
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(ナレーター)あるところに、ちいちゃな木のこびとたちの住む村がありました。こびとたちはみんなエリという彫刻家が作りました。こびとたちは太っていたり、やせていたり、背が高かったり小さかったり、色が黒かったり白かったり、仕事が速かったり遅かったり、歌がうまかったり、そうではなかったりといろいろでした。
こびとたちはいつも、お互いにシールをつけあっこしていました。きれいなこびとや、仕事の速いこびとや、歌のうまいこびとには金ぴかのシールを貼りました。えのぐがはげていたり。木がでこぼこだったり、しごとがおそかったり、おしゃべりがへただと、灰色のだめシールをつけました。
(こびとA)わあ、きみのえのぐはとてもいい色だね。それでは、金ぴかシールをいちまい。
(こびとB)きみは、走るのがすごくはやいねえ。それでは金ぴかシールを一枚。
(こびとA)うれしいなあ、金ぴかシールをもらうときぶんはさいこうだね。
(こびとB)あ、パンチネロが来たよ。みてごらん、絵の具がはげて、木もでこぼこだ。みっともないなあ。
(こびとA)あ、本当だ、だめシールを貼らなくちゃ。
(パンチネロ)やめてよ。やめてよ。そんなシール貼らないでよ。
(こびとA)きみにはだめシールがぴったりだよ。だって、絵の具がこんなにはげてるじゃないか。はい、だめシール。
(こびとB)きみは木もでこぼこ、走るのも仕事も遅そうだからね。はい、だめシール。
(パンチネロ)ひどいじゃないか、ぼくはそんなにだめなのか。
(こびとA)きみは自分のすがたをかがみで見たことはあるのかい。あたまから足のさきまでぜんぶ、だめシールだらけ。あーあーひどいもんだよ。
(こびとA)さあ、だめシールだらけのこびとはほっておこうよ。あっちに金ぴかシールを100枚も貼ってる人がいるそうだよ。
(ナレーター)二人の後ろ姿を見ながら、パンチネロは悲しくなりました。
(パンチネロ)ぼくはどうしてこうなんだろう? 高くとぼうと思ってもとべないし、走ってもころんでばかりだし、ころぶたびに、どんどんペンキがはげていく。まただめシールを貼られてしまう。僕なんて、僕なんていなくなればいいんだ。ああ、僕なんて、大嫌いだ。もうだれとも会いたくないよ。みんなほっといてよー。
(ナレーター)パンチネロは悲しみのあまり、とうとうその場にうずくまってしまいました。
(ルシア)ね、君、どうしたの?
(パンチネロ)(顔をあげて驚きました)君はだれ?
(ルシア)私はルシア。あなたはどうしてそんなに悲しそうなの?
(パンチネロ)驚いたなあ、君は金ぴかシールもだめシールもつけてない。そんなこびとははじめてみたよ。どうしてだい?
(ルシア)まえは、シールがくっついていたの。でも、今はだれも、私にシールをつけられないの。つけると落ちちゃうから。わたしね、誰からもいいとかわるいとか言われたくないの。だって、私は私だもの。
(パンチネロ)僕だって、誰からもそんなこと言われたくないよ。どうしたら、シールがつかなくなるの?
(ルシア)私たちを作った彫刻家に会いに行くのよ。あの丘のてっぺんに住んでいるわ。会いに行ってお話しするのよ。
(パンチネロ)会えば、君みたいになれるかい?
(ルシア)たぶんね。
(ナレーター)ルシアはうれしそうに楽しそうに行ってしまいました。
(パンチネロ)きたなくて、なにをしてもしっぱいばかりの僕なんかに会ってくれるかなあ。でも、ぼく、このままじゃいやだよ。こんなだめシールだらけの僕なんかいやだよ。そうだ、彫刻家に会いに行こう
(ナレーター)パンチネロは細い道をてくてくのぼって、おかのてっぺんのおおきなしごとべやに入っていきました。部屋にはおおきなイスがあって、しごとだいの上をみることもできませんでした。どきどきして、パンチネロはどうしたらいいかわかりませんでした。
(パンチネロ)やっぱりよそう。僕なんかが来たらめいわくにきまってるよ。
(ナレーター)そのとき、上の方から声がしました。
(彫刻家)よくきたね。パンチネロ
(パンチネロ)え? どうしてどうして僕の名前をしっているの?
(彫刻家)あたりまえさ。もちろん知っているとも。だって、僕が君を作ったんだからね。ずっと君が来るのを待っていたよ。君はだめシールをたくさんつけられてずいぶん苦しんでいたのがここから見えていたよ。ぼくは君がずっと心配だったんだ
(パンチネロ)ぼくのことが心配だっただって?
(彫刻家)ああ、そうさ。他のこびとが何を思うと、そんなことは大切なことじゃないさ。
(パンチネロ)本当に?
(彫刻家)ああそうさ。大事なことは君が自分のことをどう思うかということさ。そして、僕が君をこんなに大切におもっているということさ。
(パンチネロ)え? 僕が大切だって? この僕が? 信じられないよ。
本当にこの僕が大切なの?
(彫刻家)ああ、そうだ。僕が君を作ったんだからね。君のこと、宝物なんだよ。僕は君が一番素敵に輝くように作ったつもりだ。君に知って欲しいと思っていたよ。
ペンキのはげ具合はなんて素敵だろう。木のでこぼこはとても味があって気に入っているよ。君は最高だよ。 大好きだよ。
(パンチネロ)僕、自分のこと好きでいいの? こんな僕が最高なの?
(ナレーター)そのとき、パンチネロについただめシールがバラバラと落ちました。パンチネロはもう、自分のことを嫌いだなんて、思わずに、にっこり笑うことができたのでした。
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みんな一生懸命練習していました。短い劇なのに、ときに涙が出そうになりました。(中身や気持ちにも触れながら劇の練習をみんなでしていきたい)その頃の日記にそう書いてありました。きっと神さまが私たちを愛してくれて、全部いいふうに作ってくださったから、私たちはみんな、ひとりひとりが私たちのまんまでいいということなんだろうなあとうれしくなりました。あかねちゃんからメールをいただきました。
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皆さん、本当に、素敵。本当に、どんな事が、あろうと、自分の足で、立っている、本当に、素晴らしい事です。素晴らしい事は、いつも、明るい。けれど、「あなたには、できるけれど、わたしには、出来ない事もある」そんな時、あかねは、いつも、こんな事を思っています、「心を覗いてごらん、自分の心を自分の気持ちで、覗いてみてごらん。誰かと、比較して、心を覗いてみたりしたら、だめだよ。自分の心が、ぎゅっとなるくらい、いやな事は、私だけじゃない、みんなも、いやなんだよね。何もかも信じられなくなったとき、
自分を、しっかり、信じてあげれば良い、心を、自分の手のひらに入れて、聞いてみて、心の声を、きっと、自分にありがとうと言えるから、そしたら、みんなに、ありがとうを、言おう。ううん、そんな自分で、あろう、なろう、そうしよう。きっと、それが、「幸い」
病気で、出来ない事もあって、恐い、不安、悲しいけれど、ありがとう。それを、教えてくれる、自分の心に、病気に、ありがとう。自分の心が、くたくたに疲れたら、泣けば良い、今日も、心はちゃんと、動いてくれる。私、生きてる。心よ、ありがとう。
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胸がいっぱいになりました。あかねちゃんありがとう。そうだね。本当に本当に私もそうだなあと思いました。ありがとう。あかねちゃん。ちゃんとできないときもあるけれど、本当にみんなに、何もかもみんなぜんぶにありがとう。
「たとえどんなに重い障害があったとしても、本当に誰もがみんな思いがあって、あきらめなければ伝えあえるんだということ、人にはものすごい回復力があって、植物状態と言われている方も回復の可能性があること」などを多くの方に知っていただきたいと「白雪姫プロジェクト」( http://shirayukihime-project.net/ )をすすめています。脳幹出血で倒れて、どんどん回復している宮ぷーの映画も、12月8日に初公開が決まっています。その中で歌われる元気が出る歌を作りました。
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「僕の歩く道」 僕の歩く道は簡単ではないけど だからこそ僕は 歩き続ける 船砕く荒波が行く手をはばんでも 宇宙の底力を味方にして 僕の歩く道は簡単ではないけど だからこそ僕は さあ進もう
銀河の回転軸を心にみすえて 僕のすべきことを今日も続ける 長く続く凪にあきらめそうになっても 宇宙の底力をいつも信じて 僕の歩く道は簡単ではないけど だからこそ僕は さあ進もう
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そうだ、生きると言うことは道を作っていくと言うこと、つらいことがあれば、きっとその次に進む人の道にもなるよ。だから、前を向いて進んでいこう
【お知らせ】
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・メルマガの生い立ちをこちらのページに書いていますので、ご参照ください。
http://ohanashi-daisuki.com/info/story.html
・今度新しい本を出しました。こころがあたたまる本です。
『手をつなげば、あたたかい。』(サンマーク出版 山元加津子著 1,470円)
★ 山元加津子と仲間たちとのおかしな毎日を綴る
いちじくりんHP:http://itijikurin.blog65.fc2.com/
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宮ぷー(右)と一緒に。
1957年 金沢市生まれ。エッセイスト。愛称かっこちゃん。石川県特別支援学校教諭。障害を持った子どもたちと、教師と生徒という関係ではなく、かけがえのない一人の友達としてふれあいを続けている。分け隔てなく、ありのままに受け入れる姿勢は、子どもたちの個性や長所を素晴らしく引き出している。そんな子どもたちの素敵さを多くの人に知ってもらおうと、教師をしながら国内外での講演・著作活動など多方面に活躍中。教師、主婦、作家、母親という4役を自然体でこなし、まわりの人に優しく慈しみをもって接する姿は、多くの人の感動を読んでいる。著書に『本当のことだから』、『魔女・モナの物語』(両方とも三五館)、『きいちゃん』(アリス館)、『心の痛みを受けとめること』(PHPエディターズグループ)、『満月をきれいと僕は言えるぞ』(宮田俊也・山元加津子共著 三五館)などがある。2011年7月に新刊『ありがとうの花』(三五館)、2011年11月に『手をつなげば、あたたかい。』(サンマーク出版)を発売。
宮ぷーこころの架橋プロジェクト メルマガ登録:
http://www.mag2.com/m/0001012961.html
同プロジェクトから生まれたHP:http://ohanashi-daisuki.com/index.html
山元加津子さんHP「たんぽぽの仲間たち」:http://www005.upp.so-net.ne.jp/kakko/