みんなでひとつ命を生きていく〜宮ぷーこころの架橋プロジェクトから〜
このページは、特別支援学校教諭で、作家でもある「かっこちゃん」こと山元加津子さんによるコラムページです。
かっこちゃんは障害を持った子どもたちと、かけがえのない一人の友達として触れ合い続けています。その様子は『1/4の奇跡』という映画にもなりました。このコラムでは、かっこちゃんの同僚で、2009年2月に突然脳幹出血で倒れ、奇跡的に命をつないだ宮田俊也さん(通称・宮ぷー)との触れ合いの様子を中心にお届けします。
意識障害の方もみんな思いをもっておられて、あきらめなければ伝えあえるし、回復する方法があるんだということを伝える「白雪姫プロジェクト」が始まって、一年半以上経ちました。うれしいことに、たくさんの方から、白雪姫プロジェクトの質問フォームにお問い合わせをいただくようになって、そして、そのみなさんから、回復の道を歩んでいますというお知らせも、毎日のように届くようになりました。
一月に入っていただいたうれしいメールを二つ載せさせていただきますね。
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昨年は白雪姫プロジェクトを通しかっこちゃんと宮プーさんに会えてほんとによかったです。わたしたち家族の支えであり希望です。本年もよろしくお願いいたします。
実は昨晩から母の手が『グーパーグーパーして』というとしたり、1本2本……と、指を折り曲げたりするようになってきました!
まだ、意識がある時間が短いのか長時間は、反応を見せてくれませんが昨晩はまた感動してしまいました!今年も頑張っていきます!あの悪夢の日々が嘘のようです……目もあかないだろうと言われた母に今日手を握り返してもらえました!
きっとこれから先もまた悲しくなったり不安になったり……でも諦めない!で母と、共にやっていきます!
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私もうれしくて、泣きました。お母様も、ご家族も本当にどんなにうれしかったことでしょう。そして、これからだって、きっとどんどんよくなっていかれますね。
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新年おめでとうございます。かっこちゃん、今年は昨年と違って心を穏やかに新年を迎えることができました。昨年は主人が倒れたばかりで、意識の回復も望めないということで、絶望の淵にありました。お医者様からもあきらめてほしいというお話が何度もなされていましたが、かっこちゃんの「あきらめなくていいと思います」「必ず、全部わかっておられるということを大前提に話しかけていただけたらと思います」という言葉の方を信じて、それから、主人が意識が回復したときに、教えてくれたのは、「ずっとわかっていたよ」という言葉でした。今年は、もっとしっかりと座り、食べることにも挑戦していきたいです。今は、お医者様からも食べることもできるかもしれないというお話もあり、お互いに励まし合っています。もし、白雪姫プロジェクトと出会わなかったら、今日はないのです。
かっこちゃんもお体を大切にしてくださいね。宮ぷーさんも、どうぞ一人暮らしがんばってください。
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たくさんの仲間が一緒にがんばっていることが、とても大きな励みです。けれども、回復のために体を起こそうとしても、思いを伝えるために頑張ろうと思っても、なかなか、周りや医療の関係の方にも信じていただけなかったり、危ないから体を起こしてはならないと禁止されるということもよく伺います。もっともっと、白雪姫プロジェクトが広がっていくように、今年も頑張って行きたいと思います。
おつらい中メールをくださった方もおられます。
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主人が倒れて一ヶ月半。かっこちゃんはどうやって、つらい時期を乗り越えたのですか?
白雪姫プロジェクトに出会えたことで、瞬きで返事をすることも、意識回復と思えるようになってきたけれど、でも、つらくて泣ける毎日です。
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本当にそうですね。今までとてもお元気だった方が突然倒れて、なかなか受け止められない中で、それでも明日へ向かうのは大変なエネルギーのいることですものね。
5年前、宮ぷーが脳幹出血で倒れて、一月半経った頃の日記をちょっと拾ってみました。
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(2009年3月)
3/30
今日は学校を早く出て、明るいうちに宮ぷーのところへ行くことができました。
宮ぷーの妹さんと宮ぷーの甥っ子さんともそれで病院で会うことができたのでした。「お兄ちゃん、今日はすっごく目が開いてるよ」と妹さん、本当にぱっちり目が開いていてうれしいのです。さっそく光田なおこちゃんのところから送っていただいたオイルをカバンから出して、ほらとみせると宮ぷーの目がなあに? というふうに、オイルのびんの方を見たと思いました。絶対にそう。私がうれしそうにそう言うと、妹さんが、「お兄ちゃんの意識戻ってきてるでしょう? 絶対だよね」と言います。きっとそう。うれしい。
今日は鼻腔栄養の管が右側から左側に変わっていました。それで、少し血が鼻の管からでていました。少し痰が多いようなのは、血が出たりしたら、白血球が増えたりするからかなあ……NHKスペシャル(紙屋先生が出ておられた番組)を観たので、いっそう、どんなことも脳への刺激になるからと、いっぱいマッサージをしたり、しゃべりかけたりしました。
「(講演会があって)二日間これなくてごめんね」とかいろんなことをおしゃべりすると、右側の目は今はまだ麻痺しているのか瞬きはあまりしないけど、左目が本当によく瞬きできるようになっていて、うれしい。そして、時折、涙がたまっていることに気がつきます。
泣いているの? それとも、左目も少し赤くなってるから、右目みたいに、赤くなっちゃうのかな。それはすごく心配。大切な目だもの。
看護婦さんが、ていねいに歯を磨いてくださいました。歯磨きのあとは、必ずつばを吸痰するみたいに機械で吸いとらなくちゃいけないから、私じゃできなくて、とてもありがたいです。
看護婦さんは、「口の中の刺激は脳に近いからとてもいいんです。だから、口の中の衛生のためもあるけど、刺激になるからていねいにしたいんです」と言ってくださって、もうありがたくて、何度も頭を深くさげたら、「そんなに深くお辞儀をされたら、びっくりしちゃいますよ」と言ってくださいました。
カニューレの交換をしますから、少し外に出ていてくださいということで、廊下に出ていると、宮ぷーの足がすごく跳ね上がって、苦しそうに咳き込んでいるのが見える。麻酔をせずにするんだろうなあ……。
自分では上げるのがむずかしい足が、そういうときはものすごく高くまで跳ね上がる。身体を動かそうと思っても動かないけど、痛みの刺激とかでは動くというのが、とても不思議な気がする。病気になってから、本当にいっぱい宮ぷーは痛かったり、つらかったりする中で、本当に今日も精一杯がんばってる、涙が出るほどがんばってる。いつもいつも本当にありがとう。私いつも、宮ぷーが頑張ってると思うと、もうどんなことだって、負けないって思えるよ。宮ぷーの頑張りや今、毎日宮ぷーが経験していることに比べたら、もうどんなことだってちっぽけなことだよ。
お医者さんが「もう少しで転院ですね。あそこはリハビリがすごく大変だから、がんばってくださいね。意識が戻るといいですね」と言ってくださる。「はい、だいじょうぶです。ありがとうございます」と言うと、少しうつむいて、顔をあげ、「そうですね。僕も祈っています」と言ってくださってうれしい……
「命を救ってくださってありがとうございます。命の恩人です」と言うと、「いや、がんばってください。でも、無理をしないでね」と温かく言ってくださって本当にありがたい。
当初、もし、宮ぷーが80歳だったら、延命措置はいっさいしないのだけれど、まだ42歳なので、その若さにかけてみます」と助けてくださった先生。もし、宮ぷーのこと、もうだめだから、処置をしないっておっしゃったら、今の宮ぷーはなかったもの。ありがとうございます。本当に心から感謝しています。よかったね。宮ぷー。
3/31
昨日から、宮ぷーの瞳が動いたことを思い出すたびに幸せな気持ちになる。すごくつらいときに、誰かに幸せにしてもらいたいとか、幸運がおとずれますようにとか思うけれど、昨日わかったと思ったことがあったよ。
そうだ、幸せはいつも自分の手の中にあるんだ。だって、そうだよね。宇宙が私たちを作ってくださったときから、私たちは本当に宇宙に愛されて幸せな存在で作られてるんだもの。つらいときとかには、誰かを恨みたくなったり、どうして、こんなことがって思ってしまうけれど、そうだ。幸せはいつも自分の中にある。そして、いつかのいい日も、自分の中に、もうあるんだ。どんなときにも、そうなんだ。宮ぷーはまた、すごく素敵なことを教えてくれたよ。宮ぷーは本当にすごいよ。すごいよ、すごいよ。本当に本当にありがとう。
宮ぷーの主治医の先生が変わることになった。転院が近いので、明日から一日だけだけど替わることになった。それで、これまでお世話になった先生が病室に来てくださる。
「本当にお世話になりました」「今度の病院はリハビリが大変で、本人もつらいかもしれないけれど、頑張ってもらわないとね」「はい、きっと頑張ってくれると思います。そして、どんどんよくなります」
今まで、先生はずっと「でもね、体はきっとずっと動かないし、残念ながら意識が戻ることはないだろう」と私たちが一生懸命、だいじょうぶだと言い続ければ続けるほど、残念そうに、そうおっしゃっておられたけれど、先生が口ごもりながら、私をじっと見て、「そうだね、奇蹟は起こるかもしれない。僕も祈ります」とまた言ってくださったよ。
宮ぷー、先生が祈りますって言ってくださった。お医者さんが祈りますって言ってくださることは、きっと簡単なことじゃないと思う。でも、そう言ってくださったよ。本当にすごくすごくお世話になったね。命を助けてくださった先生。ありがとうございます。
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たった二日間だけど、載せました。こんなふうに揺れながらも、大丈夫大丈夫と思えたことが今につながっているのだと思うし、辛かった日もまた、大切な日々だったなあと今思い返すと感じられるのです。
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宮ぷー(右)と一緒に。
1957年 金沢市生まれ。エッセイスト。愛称かっこちゃん。石川県特別支援学校教諭。障害を持った子どもたちと、教師と生徒という関係ではなく、かけがえのない一人の友達としてふれあいを続けている。分け隔てなく、ありのままに受け入れる姿勢は、子どもたちの個性や長所を素晴らしく引き出している。そんな子どもたちの素敵さを多くの人に知ってもらおうと、教師をしながら国内外での講演・著作活動など多方面に活躍中。教師、主婦、作家、母親という4役を自然体でこなし、まわりの人に優しく慈しみをもって接する姿は、多くの人の感動を読んでいる。著書に『本当のことだから』、『魔女・モナの物語』(両方とも三五館)、『きいちゃん』(アリス館)、『心の痛みを受けとめること』(PHPエディターズグループ)、『満月をきれいと僕は言えるぞ』(宮田俊也・山元加津子共著 三五館)などがある。2011年7月に新刊『ありがとうの花』(三五館)、2011年11月に『手をつなげば、あたたかい。』(サンマーク出版)を発売。
宮ぷーこころの架橋プロジェクト メルマガ登録:
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同プロジェクトから生まれたHP:http://ohanashi-daisuki.com/index.html
山元加津子さんHP「たんぽぽの仲間たち」:http://www005.upp.so-net.ne.jp/kakko/