みんなでひとつ命を生きていく〜宮ぷーこころの架橋プロジェクトから〜
このページは、特別支援学校教諭で、作家でもある「かっこちゃん」こと山元加津子さんによるコラムページです。
かっこちゃんは障害を持った子どもたちと、かけがえのない一人の友達として触れ合い続けています。その様子は『1/4の奇跡』という映画にもなりました。このコラムでは、かっこちゃんの同僚で、2009年2月に突然脳幹出血で倒れ、奇跡的に命をつないだ宮田俊也さん(通称・宮ぷー)との触れ合いの様子を中心にお届けします。
私は毎日、日記を書いていて、それをメルマガで発行させていただいています。今、6千人以上の方が読んでくださっていて、読んでくださっている方は、みんなお友達だなあと思っています。いろいろなことを教えてくださったり、考えさせてくださって、そして、お互いにまたメールをしあったりして、みんなでひとつの命を生きているんだと私はそう感じるからです。
メルマガを通して、めぐみちゃんという新しいお友達ができました。
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かっこちゃんへ初めてメールします。(もしかしたら昨日、届いているかもしれないです(>_<)パソコン苦手で……。2通目だったらすみません)
昨年、相模原で午後から講演会に参加して、初めてかっこちゃんに会いました。かっこちゃんの考え方とか雰囲気がとてもいいなと思ったのと、本(『ゆうきくんの海』)を読みました。まだ読み途中ですが。私苦手があります。人よりも字を書いたり読んだりすることが少し苦手です。これはまだ3年くらい前に知ったばかりのことです。
私は人が大好きみたいで、人と一緒にいることが好きで、人とお話しすることも好きで、人の役に立ちたいと思って今、リハビリの作業療法士という仕事を目指して頑張っています。でも苦手があって、私はなって大丈夫かな、なれるのかなって少し不安でした。でもかっこちゃんのお話を聞いてなんか少し安心してしまいました。
かっこちゃんも道に迷ったり、地理がものすごく苦手だったり、物を忘れてしまったり、なくしちゃったり……。車を無くしちゃったのはびっくりしちゃったけど。
私も方向音痴で地図見ても違うところに行ったり、忘れ物も多いし、ちゃんと時計を見てても遅刻しちゃうし、ケガも多いよ。苦手いっぱい。でもかっこちゃんも苦手があるんだぁって知ってね、安心したんだと思う。私は周りの人に苦手を助けてもらいながら、他の人が苦手で私ができることならお互いに助け合いながら、お互いの苦手を責め合うことなく、たくさんの人とかかわっていきたいです。
またお手紙書かせてください。
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(めぐみちゃんからの3通目のメール)
☆聞いて聞いて☆
わたしはデスレクシアっていう読み書き障がいです。
検査を受けてディスレクシアと分かって先生に「大変だったね、よく頑張ったね」って言われた時は絶対忘れられないくらいすごく嬉しかったし、今までの辛かったことに原因があったんだ!って知って、ほっとしたの。
でも知るまでは、誰もこんなに頑張ってる事は分かってくれなかったし、自分でも分かってなかったの。みんなできてるから自分の頑張りが足りないんだって思ってたんだよ。
今でもこれはみんなも大変なんじゃないかな、私の頑張りが足りないんじゃないかなって不安になることがある。
小学校2年生の時にね、作文が一人終わらなくて作文終わるまでご飯食べさせてくれない、帰れないってことが何度かあったの。書けないのと、先生に怒られるのが怖くて泣いてた。
もうなにをどうやったらいいか分からないんです。考えがない訳ではないし思ったことがない訳でもないのに、紙に書けないし、思ったことを言えないんです(小さいときは今より言葉数も少なくて、自分の思いを言葉で言うことが苦手だったのかなと思います。今は少し時間がかかるけど、時間をくれれば自分の考えもまとまってきて言葉で言うことも出来ます。でもその場で意見を求められると言えないです)。
「なんでこんなにできないの」とか「泣いてるだけじゃ終わらないでしょ」とか「やる気がないならやらなくていい」と怒られて、なんで出来ないのかも分からなくて辛くてね、出来ない事が悔しくて、悲しくて空しくて……。でも逃げ出せなくて、泣いても怒られて、どうしようもなかったです。鉛筆噛んだり、下唇噛んだり、爪を手に押し付けて泣くのをこらえてました。
まだまだ、辛かったなってこと沢山あるんだ。九九の暗記とか、音読とか、漢字テストとか英単語のテストとか。
話が飛ぶけどね、この前養護学校の実習に行って来たの。そのとき初めてそこに通っている子たちと会えたの。お話ができない子がいたの。でも私も小さいときお話 得意じゃなかったからかな? その子のことが気になって気持ちを知りたいってすごく思いました。
担当の先生は「ずっと一緒にいると分かるものがあるんだよ」と教えてくれました。とても短い時間だったから先生にお話しを聞いて終わってしまったけれど、かっこちゃんが講演会で言ってたようにみんな気持ちはあると思います。その気持ちをすごくすっごく知りたいです。人には誰だって苦手って感じることがあると思うの、でもその苦手を責め合わないことと、助け合うことと、本人がその苦手もあって自分なんだって思えることも大事かなぁって思いました。でも、苦手もあって自分なんだって思えるのはまだこれからなのかなと思います。
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めぐみちゃんのメールをみて、私はめぐみちゃんにメルマガに載せさせてほしいとお願いしました。もう大好きになっているめぐみちゃん、こんなに素直にまっすぐ自分のことを伝えてくださって。そのことで、きっといっぱいの方が、勇気をもらったり、ああ、そういうことがあるんだと思えたり、ご自分のお子さんのことを、思ったりされるだろうと思ったのです。
みんな誰だって、得意、不得意があります。すごく苦手なことだってあります。私も、特別に特別に苦手なことがあって、それは、多くの方が「どうしてできなんだろう」と思われるほどびっくりされます。名前はまだ覚えられるけれど、姓はどうしてだか、まったくと言っていいほど覚えられません。何度聞いても、すごく仲良しのお友達であっても、こんなに仲良しなのになあと思うけど、覚えられません。そういうことは、仕事をしていると、やっぱりとても困ります。どうして、ニックネームや下の名前だと覚えられるのか不思議だけど、本当にそうなのです。
方向感覚のようなことは、まったくわかりません。どこにもなかなか一人では行けないし、3年通っている学校にもときどき辿り着けないことがあります。きっと簡単にできる方にはわからないことだと思うのです。そんな苦手なことが、自分を好きになれない原因にもなったりもしました。体育も本当にできません。なぜこんなにと思うほどできません。
私が苦手なことがあるように、めぐみちゃんにも苦手があって、小さいときから、苦労や傷つくこともいっぱいあった。私は自分ができなかったことがいっぱいあったから、「自分ができるから他の人もできて当たり前ということは決してない」とわかったなあと思うのです。めぐみちゃんもそうですね。私はそれが、自分にとって、すごく大きな経験だし、神様が与えてくださった自分の宝物だと思っています。
できないことがあったり、できなかったという思いは、悲しい気持ちにつながっていくけれど、でも、私たちはみんなでひとつの命を生きているんだということを思い返せば、全員で助け合って、補い合って、もっと大きな力で前へ進めているんだと思えるのです。
そして、私はみんながいろいろなできないことがあって、でも、誰もその人が悪いわけでもないのに、そのことになかなか気がつけなくて、誰かを傷つけてしまうこともある。
その両方が、実は心に痛みを持っていて涙をながすのだろうと思いました。
めぐみちゃんはこんなことも教えてくれました。
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今日ラッキーなことがありましたよ!前に班でやる課題が出ていて、あさってその発表です。で、原稿を読む役割3人と、パワーポイントのエンターキーを押して画面を変えるだけの役割1人に分けてどの役割を担当するかを決めるじゃんけんをしようとなりました。
じゃんけんポンで1回で勝ってエンターキーになったの(^○^)わーいでもあまりに皆と大変さが違うから、「ほんとにいいの?」って確認したけど、いいよ〜って♪
原稿を読むのは苦手です。前の発表の時に原稿を読む係りに決まって、うまく読めないのは分かっているから皆に先に「読むも苦手なんだ、でも頑張る。もし違く読んだらごめんね」と言って原稿を持ち帰って読み間違えそうな漢字に読みをふって、長い分のところにスラッシュ入れたり、色変えたりして練習して、当日も休み時間とか、他の班が発表しているとき(よくないけど)練習して本番すごく緊張して読んだの。自分ではうまく読めたのか分からないけど「何とか終わったぁ」て感じでした。(でもね、初めから最後まで 同じ漢字読み間違えていたらしいよ。)
小学校の時 国語の音読すらすら読めなくて嫌だった。自分でも苦手なのは分かってたから声が震えるし、小さくなるし。でも先生は「もっと大きな声で、初めから」って。毎回「聞こえない」って言われてた。そういわれることが嫌で夜読んだりもしたの。授業に入る前の所に親に聞いて、フリガナを振ったりもしたよ。
4年生くらいの時にね授業参観の時、作文を皆の前で読むことがあったんだ。私はいつも出来ないからか、先生が「みんな、めぐみさんは声小さいから前に来て」って。それまでのできなくて辛かった記憶がいっぱいよみがえってきて、足が震えて心臓がバクバクして目が潤んでくるのが分かって、読む前から半泣き状態になるの。「読んで」と急かされても怖くて。でも必死にこらえながら声に出して読んでいるのに「声が聞こえない」「最初から」って。最終的にどうだったかは覚えてないけれど、この日は授業参観でみんなの親もいたし、いつもよりさらに嫌で、緊張して、怖くて大変だったからよく覚えている。
一文字読むのと、こらえることで精一杯で……。先生とみんなの反応が怖くて顔もうつむいてた。できない自分を何でできないの? って責め続けて、でも分からないし、みんなは出来ているし、どうしてみんながそんなにスラスラ読めるのかが不思議だった。
またたくさん書いちゃった。なんか、いろいろ小さい時の辛かったことをお話ししたくなるんだ。もう過ぎたことだから 言ってもしょうがないのにって思うんだけれどね……。
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めぐみちゃん、私はめぐみちゃんを抱きしめたくなりました。つらかったね、小さかったときのめぐみちゃんの、そのときに戻って、抱きしめたくなりました。けれど、私はまた、教員としての自分のことも思います。自分もいっぱい同じ痛みを感じてきたのに、同じ事をしてはこなかったかなと思うと、やっぱりつらくて、涙が落ちます。けれど、「つらい記憶もきっと宝物。私はいつもそう思っています。めぐみちゃん、小さかったときのつらい話をしたくなったら、いっぱいしてね。私もします。わたしは縄跳びが跳べません、本当に跳べません。毎年、冬に体育館で縄跳び大会がありました。ひっかかると座るのですが、誰がとべなくても、すぐに座らなくちゃならないこと。みんなの前で練習してみようということになって、やっぱり跳べなくて、その跳び方がきっとすごくおかしかったのだろうと思うのですが、先生にもみんなにも笑われてしまったこと。誰にも悪気はないのです。でも、私は顔を真っ赤にして、逃げ帰りたかった。私は、足が遅くて、どんなに一生懸命走っていても、息がきれそうになってしまうのです。今日が運動会の練習だとわかったり、体力テストのマラソンのとき、どんなに逃げ出したかったかしれません。でも、それは父や母を悲しませると私は思いました。やっとのことで考えたのは、「つらくても、時間はすぎるし、誰も私のことを殺したりはしないから」そんなことを思いながら、必死に走っていたのに、私はあまりに遅くて、あまりに、みんなから離れてしまって、こんなにはやく終わってしまいたいと考えているのに、「歩いとるな」「真剣じゃない」と叱られてしまったこと。私は小さかった、そして、悲しかった自分のことも、だいじょうぶだよと抱きしめたいです。本当に誰も悪いわけではないと私は思います。ただ、気がつかないだけ。でも、そんなことを気がつかせてくれるのは、小さかっためぐみちゃんや、小さかった私や、そんな思い出を持つ人。
その心の痛みは、誰もが、同じように感じることができる痛みではない。だからこそ、つらいけど、そのことも宝物と思いたいです。めぐみちゃん、メールを本当にありがとう。
『船井幸雄.com』のみなさんにも、私はメルマガをとっていただけたらなあと思います。
そして、みんなでつながりあって、いろんなことを考えたり、一緒に前へ進んだりしていきたいです。
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★ 山元加津子と仲間たちとのおかしな毎日を綴る
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宮ぷー(右)と一緒に。
1957年 金沢市生まれ。エッセイスト。愛称かっこちゃん。石川県特別支援学校教諭。障害を持った子どもたちと、教師と生徒という関係ではなく、かけがえのない一人の友達としてふれあいを続けている。分け隔てなく、ありのままに受け入れる姿勢は、子どもたちの個性や長所を素晴らしく引き出している。そんな子どもたちの素敵さを多くの人に知ってもらおうと、教師をしながら国内外での講演・著作活動など多方面に活躍中。教師、主婦、作家、母親という4役を自然体でこなし、まわりの人に優しく慈しみをもって接する姿は、多くの人の感動を読んでいる。著書に『本当のことだから』、『魔女・モナの物語』(両方とも三五館)、『きいちゃん』(アリス館)、『心の痛みを受けとめること』(PHPエディターズグループ)、『満月をきれいと僕は言えるぞ』(宮田俊也・山元加津子共著 三五館)などがある。2011年7月に新刊『ありがとうの花』(三五館)、2011年11月に『手をつなげば、あたたかい。』(サンマーク出版)を発売。
宮ぷーこころの架橋プロジェクト メルマガ登録:
http://www.mag2.com/m/0001012961.html
同プロジェクトから生まれたHP:http://ohanashi-daisuki.com/index.html
山元加津子さんHP「たんぽぽの仲間たち」:http://www005.upp.so-net.ne.jp/kakko/