みんなでひとつ命を生きていく〜宮ぷーこころの架橋プロジェクトから〜
このページは、特別支援学校教諭で、作家でもある「かっこちゃん」こと山元加津子さんによるコラムページです。
かっこちゃんは障害を持った子どもたちと、かけがえのない一人の友達として触れ合い続けています。その様子は『1/4の奇跡』という映画にもなりました。このコラムでは、かっこちゃんの同僚で、2009年2月に突然脳幹出血で倒れ、奇跡的に命をつないだ宮田俊也さん(通称・宮ぷー)との触れ合いの様子を中心にお届けします。
今日は、自分のことなのですが、お話をさせてください。
3月いっぱいで、学校の教員をやめることになりました。まだ定年までは間があって、すごくすごく悩みながらも、そうしようと決めました。
大好きな子どもたちとの毎日は本当に幸せいっぱいでした。だから、すごくさびしいのです。でも、いろんな理由があって、やめることにしました。本当にいろんな理由があります。
2009年に宮ぷーが倒れて、5年が経ちました。宮ぷーの夢のひとつは家で暮らしたいということです。そして、おしゃべりが出来るようになりたい。口からご飯を食べられるようになりたいということです。
夢はきっとかなっていく。私はいつもそう想っています。だから、宮ぷーの夢もかなえたいです。それで、今、宮ぷーが一人暮らしを始められるようにと、病院にもお願いしながら、お話がすすんでいます。私は今、毎日5時半くらいに、宮ぷーの病院につきます。ところが、宮ぷーの家だと、病院の二倍ほど時間的に学校からかかってしまって、それだと、リハビリも、それから、そのときが来たら必ずはじめようと思っている口から食べることも、はじめられません。宮ぷーの夢はもう、宮ぷーだけの夢ではなくて、たくさんの人の夢でもあるし、そして私の夢でもあります。もっともっと回復を続けてほしいし、それを見ていたいです。
ところがそんな矢先に宮ぷーが肺炎になり、そして、その原因かも知れないけれど、気切(きせつ)に肉芽ができて、毎日のようにそれがやぶれて、出血をします。すごくやせてしまいました。ちょうどやめると決意したこのときの出来事なので、それもまた、大切なことなのかもしれません。
それから、大好きな大切な母が一人で暮らしています。母と一緒に暮らすことはかないませんが、もう少し母との時間をもちたいのです。母の通院を一緒に出掛けたり、一緒にごはんを作ったりしたいです。
でも、そんな理由の他に、やはり、白雪姫プロジェクトのことがあります。うれしいことに、たくさんの方がメールをくださるようになりました。私は精一杯したいです。メールをお返しするときは私は「ずっと応援しています」「一緒に頑張りましょう」「何でも何度でもメールをください」と書きます。だって、今どんなに不安な中におられるだろうと思うからです。
そんな中でも手芸や絵を描いたり、写真をとったりが大好きな私は、作りたい物は作るし、書きたい物は書いている。そうすると、寝る時間がなくなるほどになってきました。大好きな大切な子どもたちに不誠実な気もします。だから、すごく悩みました。
それから夢もあります。私の友人が、会社というか社団法人を立ち上げました。「ろばの耳」という社団法人。まだ生まれたてほやほやで、今からHPを立ち上げるという新しい社団法人です。
なぜろばの耳かというと、「王様の耳はろばの耳」のお話には、シェークスピアなど、元になったお話がたくさんあるそうです。その中のひとつに、ろばの耳を持って生まれた王様は、他の人と違うということで、耳を隠したり、秘密を知られないように、秘密を知った床屋さんを殺そうとしたりもしました。そんなときに、ある一人の勇気のある若者が、「僕たちの王様は、世界に一人の素敵なろばの耳を持つ王様だよ。国民の声をしっかり聞くことのできる素晴らしい耳を持っている王様だよ」と王様に伝えます。このお話は、みんないろいろだということが素晴らしいということ。自分が自分であることには大切な理由があるということ。そして、権力やどんな怖い物にも負けないで、自分が正しいと思った事を伝えて行くことが大切だと言っているというのです。
「ろばの耳」はその理念を真ん中に据え、さまざまな人々が、自分らしく生きていけるように、そして、勇気を出して伝えている人を応援していこうという場所なのです。
社長さんは、私の思いをよくわかってくださって、「かっこちゃんの伝えたいこと、世の中に知ってもらいたいこと」を僕も広めたいと言ってくださいました。「ろばの耳」では、まずデジタル書籍をたくさん出版されるとのこと。私はそこで、白雪姫プロジェクトの中のブログなどで頑張っておられるお友だちの本。たとえば、手芸家ちくちくようこちゃんの楽しい毎日や作品についての本、指談でお話をしてくれるたけちゃんやたけちゃんのママのあやちゃんの言葉や日常の本や、自閉症の方が書かれた挿絵で作られた本の応援をしていきたいし、私の本『南アフリカ日記』や題名はまだ決まっていませんが、『宇宙はわき上がる思いで満ちている(無意識と意識)』みたいな本や、写真集や、小説や、それから、楽しくなる自然に生きる本や、宮ぷー日記(メルマガ)を、宮ぷーが倒れたときからの順に順番に出していただくことなどを考えています。社長さんはいずれ、軌道にのれば、絵や手芸品など、障がいをもっておられるとか持っておられないとかにかかわらず、お国や言葉や肌の色や、男女や何にもとらわれずに、素敵に生きている人を応援していきたいと言っておられます。
そして、変わらずに、船井さんのHPでも、お話を続けさせていただきたいと想っています。
私はずっとみんなが幸せになるにはどうしたらいいのだろうと考えてきました。だから、白雪姫プロジェクトや、これから始まる「ろばの耳」やいろんなところで、みなさんとそのことについて考えて行きたいのです。
ここまで、教員をしながらも、講演会や本を書くことを続けてこられたのは、応援してくださっているみなさんの大きなお力のおかげです。本当にありがとうございます。
そして、私は、これまで、たくさんの素敵な子どもたちや子どもたちのお父さん方やお母さん方ともお会いできました。子どもたちも保護者のみなさんも、同僚にも上司にも、みなさんに、一度だって、教員をしながら、本や講演会を続けることをやめたほうがいいよと言われたことはありません。みなさん、いつも温かく応援をしてくださいました。
私は本当に幸せ者だなあと思います。
私の生活もどんなふうになっていくかはわからないけれど、でも、わきあがるようにそうしたいと思ってそれを止められないのです。
みなさんどうぞこれまで通り温かく応援してください。お願いします。なんだか書きながら涙がとまりません。残りの子どもたちとの日々を大切に大切にしながら、毎日をすごしています。
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宮ぷー(右)と一緒に。
1957年 金沢市生まれ。エッセイスト。愛称かっこちゃん。石川県特別支援学校教諭。障害を持った子どもたちと、教師と生徒という関係ではなく、かけがえのない一人の友達としてふれあいを続けている。分け隔てなく、ありのままに受け入れる姿勢は、子どもたちの個性や長所を素晴らしく引き出している。そんな子どもたちの素敵さを多くの人に知ってもらおうと、教師をしながら国内外での講演・著作活動など多方面に活躍中。教師、主婦、作家、母親という4役を自然体でこなし、まわりの人に優しく慈しみをもって接する姿は、多くの人の感動を読んでいる。著書に『本当のことだから』、『魔女・モナの物語』(両方とも三五館)、『きいちゃん』(アリス館)、『心の痛みを受けとめること』(PHPエディターズグループ)、『満月をきれいと僕は言えるぞ』(宮田俊也・山元加津子共著 三五館)などがある。2011年7月に新刊『ありがとうの花』(三五館)、2011年11月に『手をつなげば、あたたかい。』(サンマーク出版)を発売。
宮ぷーこころの架橋プロジェクト メルマガ登録:
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同プロジェクトから生まれたHP:http://ohanashi-daisuki.com/index.html
山元加津子さんHP「たんぽぽの仲間たち」:http://www005.upp.so-net.ne.jp/kakko/