みんなでひとつ命を生きていく〜宮ぷーこころの架橋プロジェクトから〜
このページは、特別支援学校教諭で、作家でもある「かっこちゃん」こと山元加津子さんによるコラムページです。
かっこちゃんは障害を持った子どもたちと、かけがえのない一人の友達として触れ合い続けています。その様子は『1/4の奇跡』という映画にもなりました。このコラムでは、かっこちゃんの同僚で、2009年2月に突然脳幹出血で倒れ、奇跡的に命をつないだ宮田俊也さん(通称・宮ぷー)との触れ合いの様子を中心にお届けします。
あるのじゃないかと思います。
私はときどき、体がかっと熱くなって、止められなくなります。雪絵ちゃんの思いを伝えたいと思ったとき、意思伝達装置のときがそうでした。そして、今日もそう。泣きながら、なんだかわからないけれど、何かに怒っています。自分にでしょうか? 何にかわからないけど、泣いて泣いて、わあわあ泣いています。でも、私は強いから、強いから、もう少し泣いたら、どうするか考える。
ある方の病院へ行ってきました。メルマガを読んでくださっている方で、ご主人が脳出血で倒れて2年になるということで、もし遠かったら、なかなか叶わなかったのですが、近かったこと、それから、意思伝達の方法がもしあるなら、教えてほしいということで、それで出かけました。いただいたメールです。
「二年前に主人が脳出血で倒れました。金沢に住んでいて、かっこちゃんのことは昔、大ちゃんの本を読んだり、きいちゃんの本(大ちゃんもきいちゃんも生徒さんです)を読んだことがあります。テレビでも見たことがあります。そのあとは、ずっと知りませんでした。宮ぷーのことを知ったのは何ヵ月か前です。友達が教えてくれました。最近、宮ぷーのCTの写真を見ました。主人の方が出血があきらかに小さい。そして、主人は宮ぷーより若いです。38歳です。一生植物状態であると言われたけれど、宮ぷーのCTの写真を見たときに、主人のものより、宮ぷーの方が出血があきらかに大きいし、主人の年齢が若いということで、もしかして、主人が宮ぷーのように回復する可能性があるのではないかと思いました。かっこちゃん、厚かましいとは分かっていますが、宮ぷーの病院へ行く途中にでも、ほんのちょっとでいいので、主人の様子をみていただけませんか? …略…」
病院で、ご主人にお会いしたときに、ご主人はあきらかに私の話しかけていることをすべて解っておられると思いました。決して私の目をそらそうとされませんでした。じっとじっと私のことを見ておられました。奥様のお話だと、そんなことは少なくて、普段は誰と会ってもすぐに目をそらしてしまうし、すぐに目を閉じてしまうのだそうです。お医者さまからは、意識が戻ることは期待できないと言われておられるそうです。
けれど、私はもう意識がはっきりしておられるとはっきりと感じました。ご主人に、今から一緒にお話ししたい方法を探していきたいということや、宮ぷーの話をさせていただきました。ご主人はずっと聞いてくださって、そして目に涙をためておられました。
私はいま、どうしたらいいだろうと、胸がいっぱいになっています。どんなふうに私の思いを書いたらいいのかわからないのですが、今、燃えるようなどこに向かって発したらいいのかわからない、怒りのような気持ちの中にいます。誰が悪いとかではなくて、私は何かすべきだというそういう思いです。
ご主人は手も足もそして、身体さえも硬くなっていました。腰を曲げることはむずかしくて、座ってもらおうにもそれさえも難しく、足首もひざも伸びていて、足が重なるようになっていました。指も手首も固くなっていました。
奥様は宮ぷーの昨日の動画を見られたそうです。「動くようになりますか?」と言われました。「体が固いのでこのままでは、たとえ、神経が動く状態であっても、動かすことはできません」と言いました。「でも、手遅れとかじゃなくて、痛いと思うけれど、今からでも、やわらかく手も開いていくこともできると思います」と言いました。「でも、それはすごく根気のいること」だともお話ししました。「でも、あきらめなければできます」って言いました。
少ししてもいいですか? 痛いかもしれないけど、とご主人と奥様に言って、固くてもうこれ以上動かないところから、一ミリだけ内側にまげて10秒。それを繰り返しますって言いました。ご主人は痛そうにされていて、やめますか? と聞いたけど、たぶんやめないと思われたと私は感じたので、少しずつ続けました。私がいた間は短かったけれど、それでも、する前よりも、やわらかくなりました。
固くなっていたこと、それは、奥様が悪いというわけではないのです。違います。奥様は毎日病院に来ておられるそうです。奥様がどれだけご主人を愛しておられるかも伝わってきました。
本当に、あきらめなければ、身体も少しずつ、やわらかく開いていくことを私は知っています。子どもたちもそうです。高等部で入ってこられたお子さんで手足がたとえ固くなっていたとしても、少しずつ身体が柔らかくなって、そして動くようになっていくから。でも、痛かったり、もっともっと柔らかくなるにはすごく時間がかかるということも私はわかります。
そのあと、宮ぷーのところにも奥様が来られました。奥様は「主人の方が出血が少ないのに、どうして宮ぷーはこんなに身体が柔らかくて、こんなに身体が動くのですか?」と泣いておられました。ご自分を責めておられるようでした。「午前中だけパートをしていて、午後からは病院に来て、洗濯や掃除をして、同じ介護をしている奥さんとかとおしゃべりをしていたのですが、その時間が悔やまれる」と言われました。
どうぞ責めないで、だいじょうぶ。その時間も大切だったのだと思います。今からでも、だいじょうぶだし、必ず動く日が来るし、必ず気持ちが伝えられる日が来るし、必ず力が入れられる日が来るし、ごはんも食べられる日が来るからと私も泣きながら言いました。
手足が動かずに、植物状態にあると思われている方の多くが、寝たきりの生活をされているのが現状なのだと思います。ずっと車椅子にものらないで、ベッドの上で、水分と栄養を入れてもらって、管からおしっこを出してもらって、宮ぷーもずっとそうでした。
奥さんが言いました。「もし、宮ぷーも主人と同じようにしていたら、同じでしたか?」と聞かれました。「はい、ご主人は意識がもう戻っておられるけれど、宮ぷーはそこまで行っていなかったかもしれないです。そして体は同じように固くなっていたと思います」と言いました。奥さんは「かっこちゃん、広めないと。方法があると広めないと」って言ってくださいました。今日だって、明日だって、どなたかが倒れて病院へ運ばれるかもしれない。植物状態になるという診断があっても、体を柔らかくしておいたり、座ったりすることがとても大切。ずっとそれを続けることが大切って、それが一般的になったらなあとすごくすごくでも、私、思うのです。方法があるのです。でも広まっていないのだと思います。
そのことが悔しいです。もっと植物状態から意識を取り戻すプログラムを行われている紙屋克子先生のされていることや、宮ぷーのことを私は知ってもらいたいです。今日すごくそう思いました。泣きながら思いました。
メルマガをこのごろでは多くの人に知ってほしいということをあまりお願いしなくなっていました。いつのまにかそうなってしまっていました。でも、やっぱりお一人でも多くの方に、宮ぷーのこと知ってもらいたいです。どうか、このエッセイを見てくださっている方も、私の日記のメルマガを読んでいただけたらなあと思います。そして、一緒に感じたり考えたり、伝えたりしていきたいです。お願いします。
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『ありがとうの花』(三五館刊 山元加津子著 1,155円(税込))
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宮ぷー(右)と一緒に。
1957年 金沢市生まれ。エッセイスト。愛称かっこちゃん。石川県特別支援学校教諭。障害を持った子どもたちと、教師と生徒という関係ではなく、かけがえのない一人の友達としてふれあいを続けている。分け隔てなく、ありのままに受け入れる姿勢は、子どもたちの個性や長所を素晴らしく引き出している。そんな子どもたちの素敵さを多くの人に知ってもらおうと、教師をしながら国内外での講演・著作活動など多方面に活躍中。教師、主婦、作家、母親という4役を自然体でこなし、まわりの人に優しく慈しみをもって接する姿は、多くの人の感動を読んでいる。著書に『本当のことだから』、『魔女・モナの物語』(両方とも三五館)、『きいちゃん』(アリス館)、『心の痛みを受けとめること』(PHPエディターズグループ)、『満月をきれいと僕は言えるぞ』(宮田俊也・山元加津子共著 三五館)などがある。2011年7月に新刊『ありがとうの花』(三五館)を発売。
宮ぷーこころの架橋プロジェクト メルマガ登録:
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同プロジェクトから生まれたHP:http://ohanashi-daisuki.com/index.html
山元加津子さんHP「たんぽぽの仲間たち」:http://www005.upp.so-net.ne.jp/kakko/