リレーでつなぐ"ハート"の話

このページは、リレー形式でそれぞれの人に“愛”をテーマに、恋愛や家族愛、人間愛、パートナーシップ、コミュニケーション、大切な人への想い…などを自由に語っていただくページです。それぞれの方に半月に１回、計３回ずつご執筆いただき、その方から次にご執筆いただける方を紹介していただく形をとっています。順々に人と人とのつながりの輪が広がっていきます。

2013.06.01（第55回）

♪今回の執筆者♪
室井三紀さん（１回目）
（室井さんの詳しいプロフィールはページ下にあります。）

前々回の執筆者　美炎さんから室井三紀さんに対するメッセージ

馬頭琴の美炎です。
筑前琵琶弾き語りの室井三紀さんとは、私が馬頭琴奏者として歩き出したばかりの頃に出会い、いろいろなシーンで一緒に活動をさせて頂きました。
もともと俳優だった三紀さんは自身でストーリーと音楽を書き、物語を弾き語るスタイルで活躍しています。
私はその横で耳を傾けながら馬頭琴の音を加えていくことで
物語に関わる事のできる楽しさと即興や、琵琶とのコラボを通してたくさん学びがありました。
私が今、音楽物語というものをやりだしたのも三紀さんと関わらせて頂いて、多くを学んだからだと思います。
常に物語と共にある三紀さんが綴るコラム。
楽しみにしています。

琵琶と旅して

筑前琵琶奏者、室井三紀です。
はじめまして、こんにちは。
このコラムを書かれた、馬頭琴奏者の美炎さんと
コラボレーションさせていただくことがあります。
美炎さんからご縁をいただき、皆様とお会いすることができました。
ありがとうございます。

馬頭琴もそうですが、
琵琶も木でつくられた楽器です。
筑前琵琶は表面が桐、裏面が桑の木で出来ています。
弦は絹。
その絹の弦を、これもやはり木でできた、
扇形の撥（ばち）で弾きます。

琵琶は遠く飛鳥時代、ペルシャの方から
シルクロードを渡ってやってきました。
奈良の正倉院にはその頃渡ってきた螺鈿（らでん）の
美しい琵琶が残っています。

私が琵琶と出会ったのは
結婚して、故郷横浜を離れる時でした。
私のつれあいになった人が、
「琵琶をやったら」
と言いました。
琵琶という楽器を見たことも
聞いたこともなかったけれど、
心ひかれるものを感じ、
当時横浜に住んでいた師匠に
弟子入りしました。

琵琶といえば平家物語。
楽器だけで演奏するというより、
語りが主です。
演劇をやっていた私は
語りが好きでした。
琵琶を弾くのは少し苦手でしたが
その奥深い音色は大好きでした。

演劇とちがって、
畳一畳あれば稽古ができ、
一人で語れる。
とてもおもしろかった。

１９９９年のことです。
それまで演劇活動をしていた、
小劇場、渋谷のジアンジアンが閉館になると
知ったのは。
ジアンジアンでの最後の演劇公演の半年後、
私は琵琶を持ってロシアへ行きました。
そこで、琵琶語りの古典「那須与一」を弾いた時、
お客さまが本当に喜んでくれた。
言葉もわからないのに。
その時でした。外国の方たちがこんなに喜んでくれる、
琵琶と語りを日本で聞いてもらってない、
ということに気づいたのは。

余談ですが、その時ロシアで出会った楽器に馬頭琴があります。
サンクトぺテルスブルグの演劇学校のピアノの上にありました。
その音色は私の心の扉をもうひとつ開けてくれました。

ロシアから帰った後、私は
古典だけでなく色々なお話しに琵琶をつけて、
創作し、コンサートをはじめました。
そして、聞きたいと声をかけてくださると
どこへでも飛んでいきました。
一人でも多くの方に琵琶を知ってもらいたいと
思ったのです。
日本にいたときは気づかなかった。
けれど、こんなに素敵な楽器を私はやっていたんだ、
心の底からそう思いました。
それは本当にうれしいことでした。

どのコンサートへいってもほとんどの方が、
琵琶を聞くのは初めてでした。
日本の古典、源氏物語にも平家物語にも登場してるんですよ、
と言うと、本当にあった楽器だったんですね！と驚かれました。

その音色と語り楽器としてのめずらしさで、
一度聞いてくれた方は二度三度を聞いてくださいました。
その度に私も、新しい作品を創作していく機会をいただきました。
古典は基礎。でももっと琵琶に親しんでいただくためには
やはり現代の言葉でなくちゃ！と。
オリジナル曲として語ってきた小泉八雲の「雪女」を乙女文楽の
お人形さんとともに、オランダで公演した時は、本当にうれしかったです。

今、琵琶を弾いてみたいという方が増えてきました。
好きな作品を琵琶で語ってみたいと思う方も増えてきました。

素敵です。

この音色が大好きで、語ることが大好きな方が
もっとふえていくといいな、と思います。

Profile:室井三紀（むろい　みき）

室井三紀さん

演劇集団円演技研究所終了後、演劇舎猫の事務所にて演劇活動。筑前琵琶を田原順子氏に師事。平家物語などの古典とともに民話や様々な物語、人物などを演劇的に創作し各地でコンサート活動を行う、馬頭琴、乙女文楽、義太夫、語り芝居とのコラボレーションなどにも参加。オランダワールドフェスティバル「ＢＵＮＲＡＫＵ」出演。琵琶の音色と言葉の織りなす新たな世界へと創作を続けている。

【コンサートのご案内】
６月８日（土曜日）座・高円寺２（高円寺駅徒歩5分）にて、コンサートがあります。
「あなたに贈る歌と物語」琵琶、馬頭琴、ネイティブアメリカンフルート、チェロ。3500円。
お問い合わせ　０４７－３２８－８１７５　演劇舎猫の事務所まで。
演劇舎猫の事務所ＨＰ　http://www5d.biglobe.ne.jp/~neko-jim/