リレーでつなぐ"ハート"の話

このページは、リレー形式でそれぞれの人に“愛”をテーマに、恋愛や家族愛、人間愛、パートナーシップ、コミュニケーション、大切な人への想い…などを自由に語っていただくページです。それぞれの方に半月に１回、計３回ずつご執筆いただき、その方から次にご執筆いただける方を紹介していただく形をとっています。順々に人と人とのつながりの輪が広がっていきます。

2016.12.01（第128回）

♪今回の執筆者♪
彩乃さん（２回目）
（彩乃さんの詳しいプロフィールはページ下にあります。）

根付いた愛情

　２回目のコラムです。かっぺさんがメッセージに家族の事を書いてくれていたので、今回は家族の話をしたいと思います。

　私には、三歳下と五歳下の弟が二人おります。姉弟三人、今はそれぞれ別の土地で生活をしておりますが、会えば一緒に出かけたりし、それなりに仲は良い姉弟です。
　私の家では、姉弟それぞれを「お姉ちゃん」「お兄ちゃん」とは呼ばず、母が名付けた愛称で呼びあっています。ちなみに私は彩乃から「あーやん」です。
　これは、一つに母の子育て方針があって、弟が生まれた時に私はお姉ちゃんになったのだけれど、家族の中で私がその日から「お姉ちゃん」になるのではなく今までと変わらず「あーやん」という存在で居て欲しいという思いからだそうです。
　大学生の時、この件を友人に話したら、「そんな事をしたら、姉としての自覚が芽生えないんじゃないか」と言われた事がありましたが、その真偽は未だに私には分かりません。

　小学生の時に友人の前で弟に「あーやん」と呼ばれる事を恥ずかしく思う時期もあったけれど、今はそう呼ばれる事を気に入っております。
　「あーやん」と呼ばれてはいますが、私もそれなりに「姉」らしい事はしております（自称ですが……笑）。
　長男が三歳くらいの頃、夕食にピーマンが出た事がありました。
　長男はピーマンが嫌いで、「食べたくない、食べられない」と言って残そうとしていました。
　その日は、父の虫の居所が悪かったのか、普段は温厚な父が、長男のその態度に怒り、「ピーマンを全部食べるまで、食卓テーブルから離れるな」と断固な姿勢を見せたのです。長男は泣きました。
　揉め事がとにかく気になり、何にでも足を突っ込みたい六歳の私は、父に、「弟君は、ピーマンが嫌いなんやから、そんなに言ったらかわいそうやろ！」と口を挟みました。そうすると、「そう言うならお前が代わりに食べろ！」と言われたのです。
　困った、困った……、六歳の私もピーマンが大嫌いなのです。
　泣いている弟は助けたい、けれどピーマンは食べたくない。
　考えた私は、父が席を外した隙に、「弟君が食べたことにしとこな、内緒やで！」と長男に耳打ちをして、ピーマンを流しに捨てました。
　そして席に戻った父に「ちゃんと弟君が食べたで！」と空になったお皿を見せたのです。
　長男は「やれば出来るやん！」と褒められ、無事に食卓テーブルから解放されました。
　しかし、食べ物を粗末にしたこと、親に嘘をついたことでその後しばらくの間、私の小さな心は、罪悪感でいっぱいになりました。
　この事がきっかけかは分かりませんが、その後長男は私に異常に懐（なつ）いてきました。

　そんな長男が、来年から仕事でアメリカへ赴任する事が決まり、先月中旬に親戚みんなが地元に集まって、壮行会を行いました。
　壮行会当日の朝、弟達がいつまでたってもパジャマのままでいたので、私が「みんなが集まって、まだ準備が出来てないって事が無いように早く準備しなさいよ」と声を掛けると、これに何故か次男が怒り出しました。
　彼の言い分としては、「僕はもう大人なのに、いちいち指図をされなくても準備くらい出来る！」と言うのです。
　そんな事を言っている時点でまだまだ子どもだなと思うのですが、何歳になっても彼らは私の小さな弟なのです。
　口を出したい、世話を焼きたいと思ってしまうのです。

　壮行会には、８２歳になる祖母も参加しておりました。
　そしてその日、彼女は私の実家へ泊まりました。
　翌日、私が東京へ戻る日の朝、帰り支度をしていると祖母がやって来て、私の世話を焼きたがりました。
　勝手の分からない私の実家で、朝食の用意をしたがったり、駅まで歩いて行く事を心配したり……
　私は、もう三十路を超えております。自分のことは自分で出来ます。
　この時、私は思いました。これは昨日の私と同じだ！と。
　祖母にとっては、私が何歳になっても私は小さな孫で、心配の対象なのでしょう。
　
　祖母は年齢を重ね、色んな事がスムーズに出来ないようになってきています。
　私が自分でやった方が早い事もたくさんあります。
　でも、ここで祖母に甘える事も、一つの祖母孝行なのかなと思い、朝食の食器の片付けをお願いしました。

　今回の出来事で、祖母と孫、姉と弟、この関係性は一生変わらないもので、その子が生まれた時に、「年上の自分が守ってあげないと！」と思った愛情は、何歳になっても人の心に根付く物なのかなと、思いました。
　そういう事で、弟達には、彼らが何歳になっても姉ぶって（偉そうに？）やろうと思った今日この頃でした。