(写真撮影:泉浩樹)
「天律時代」の到来に向けて
このページは、(株)船井本社社長で「にんげんクラブ」を主催する船井勝仁によるコラムページです。船井勝仁は「これから“天律時代”が来る。そして一人ひとりが“うず”を作っていくことが大事になるだろう」という思いを持っています。それをベースにおいた日々の活動の様子や出会い、伝えたいことなどを語っていきます。
また、「船井幸雄の息子」ではなく、“船井勝仁”の独自性をさらに打ち出していくこともテーマに、これまで父に寄せてきた思いや、「二代目社長」としての方針も語っていきます。
昨年の12月に、船井メディア主催の講演会で作家の加治将一先生と歴史の闇に迫るというタイトルで講演会をさせていただきました。私はこの「天律時代の到来に向けて」というコラムの中でも何回か書かせていただいた昭和初期の歴史についてお話をさせていただいたのですが、正直に言うと、あまり上手く話せなかったと反省しています。いただいた感想でも、もっと思い切って本音を言って欲しかったというものもありましたが、実は本音が話せなかったのは、勉強不足が原因です。
しかし、加治先生の講演はさすがにすばらしい内容でした。明治維新の背景を加治史観で明確にまとめていて、本当に面白く話が聞けました。また、現存しないと言われている西郷隆盛の写真が入手できたというお話をしていただき、その写真をテーマに新しい小説を書かれているというお話をお聞きしたのですが、待望の最新作『西郷の貌(かお)』(祥伝社)が発売されましたので、早速読ませていただきました。
加治先生の小説は講演もそうですが、娯楽性を大事にしており、歴史の真実はこうだと大上段に振りかざすというよりも、いろいろ検証していくとこうなるはずだという加治先生の意見が述べられているミステリーめいた構成になっています。推理小説で犯人を当てていく感覚が近いといったら分かりやすいと思います。
それに比べて一般の歴史の本が分かりにくいのは、みんな自分の意見の主張に一生懸命になる余り、それ以外の意見の間違い探しを本質的な議論から外れて延々と展開しているからではないでしょうか。副島先生からはその影響力の大きさから問題視をされていますが、司馬遼太郎先生の小説も読後感が爽快であり、かつ心が高揚するという効果があり、私もご多分にもれずに『龍馬がゆく』や『坂の上の雲』に感動して歴史が好きになりましたが、加治先生の作品に出会うまではそれ以上の興味は湧いてきませんでした。
12月の講演で私が失敗したのも、私が語る歴史が真実で、ぜひそれを分かってもらいたいという思いが強すぎたのだと思います。加治先生は講演の中で「歴史は存在しない」とおっしゃっていました。聖徳太子が本当にいたかどうかはいまの私達には検証のしようがありません。だから、気楽に私の意見はこうだ、あなたの意見は私の意見と違うが面白いというのが、学者になるならともかく、歴史に学ぼうとする態度の私たちにはちょうどいいのかもしれません。
さて、『西郷の貌(かお)』です。やはり、これも良質のエンターテイメントであり、犯人探しに似た真実探しが楽しめました。詳細は同書を読んでいただければいいと思いますが、ひとつだけヒントを出すと、このシリーズの始まりとなった『幕末 維新の暗号』(上)(下)(祥伝社文庫)の主要テーマであったもう1枚の写真「フルベッキ写真」が大きなテーマになっています。
フルベッキ写真についてインターネットを検索しているといろいろな記事が出てくるのですが、偶然に2006年に加治先生が週刊誌に書かれた記事(http://www.nextftp.com/tamailab/photo/article02.htm)を見つけました。加治先生はこの写真が慶応元年(1865年)に撮られたものであるという説を支持しており、別の研究家は明治2年(1869年)に撮られたものという説を取っているということを紹介しています。
これはこの写真に坂本龍馬や中岡慎太郎が写っているとされており、明治2年ならすでに暗殺されているのでこの写真は偽物か一部偽造されたものということになるので、通常の歴史研究家にとっては重要な論点なのだが、加治先生はあまり気にしていないような記事の書き方をされている。まあ、学者の世界ではこの写真のことを真面目に取り上げるだけで学者生命が終わるというぐらいのものだという説もあり、それだからこそ、歴史の闇に埋もれているというのが加治先生の立場なのです。
前にもどこかで紹介した事もあると思いますが、実は船井本社の応接室にもフルベッキ写真が飾られています。なぜ、飾ってあるかを船井幸雄に直接聞いたことはないのですが、明治維新はここに写っているとされている下級武士3,000人が命がけで走り回ったことで実現しました。いま、私たちがやらなければいけない世の中のあり方を変えていくという「にんげんクラブ」の活動も、有意の人が5,000人集まり、命がけになれば実現するというメッセージを伝えたくて飾っているのだと私は勝手に解釈しています。
加治先生の想いを堪能できる良質のエンターテイメント作品である『西郷の貌(かお)』をぜひ購入してお読みください。きっと爽快な読後感とあなたならではの歴史観が生まれてくることと思います。
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1964年 大阪生まれ。1988年 (株)船井総合研究所 入社。1998年 同社 常務取締役。同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。2008年 (株)船井本社 代表取締役社長就任。父・船井幸雄の「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築くことが本来の自分の役割だ」という思いに共鳴して、持ち株会社である同社の代表取締役社長として父をサポートすることを決意した。
著書には、『中堅・中小企業のためのIT化時代の「儲け」の決め手』(船井幸雄らとの共著 2003年 ビジネス社)、『天律の時代が来た! 生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『いま明かされるコトダマの奥義』(2011年1月 新日本文芸協会) 、『未来から考える新しい生き方』(2011年9月 海竜社)などがある。
★船井本社の主宰するにんげんクラブ:http://www.ningenclub.jp/
★船井勝仁.COM:http://www.ilir.co.jp/funai_katsuhito/