(写真撮影:泉浩樹)
「天律時代」の到来に向けて
このページは、(株)船井本社社長で「にんげんクラブ」を主催する船井勝仁によるコラムページです。船井勝仁は「これから“天律時代”が来る。そして一人ひとりが“うず”を作っていくことが大事になるだろう」という思いを持っています。それをベースにおいた日々の活動の様子や出会い、伝えたいことなどを語っていきます。
また、「船井幸雄の息子」ではなく、“船井勝仁”の独自性をさらに打ち出していくこともテーマに、これまで父に寄せてきた思いや、「二代目社長」としての方針も語っていきます。
安倍政権が誕生して円安株高が進んでいます。一方でガソリンの値段が確実に上がっていくなど、庶民の暮らしに対して暗い影がさし始めています。日本経済は長い間、デフレに苦しんできました。特に企業経営者はデフレの状態が続くと、一部の無借金経営ができるほどの体力のある企業は別として大変苦しい経営を強いられることになります。
だから、経営者のマインドの変化という面では確実にこの円安株高は効果を出しています。
特に東京や大阪の銀行の人に話を聞くと、去年の今頃のまったく明るい兆しが見えなかったことに比べ、一条の光が確実に見えるようになっている経営者が多くなっているという話をしています。さらに、不動産の売買などは確実に増えてきており、価格も上がってきているという話をしてくれました。原因として考えられるのが、不動産投資信託(REIT)市場が活性化していることです。
先週の日経新聞に物流施設特化型のREITが新規上場して公開価格より30%高の初値を付けたことが報じられていました。
不動産関係者の方と話をしていると、REIT市場の人気が低迷していた頃は利回りが4〜5%だったものが、最近では3%程度の利回りになってきているそうです。これはREITの調達コストが3%ということになりますので、彼らは投資利回りが4〜5%の物件に投資ができるようになったということになります。
これは一般の不動産市場の投資家が期待する利回り7〜10%に比べて半分強の値段ということになりますので、REITが投資できるような条件が整っている物件の価格は単純に考えると今までの倍近くの値段で売買がなされる可能性が出てきたということになります。それに引きずられるようにしてそれ以外の不動産の価格が上がってくるとともに、塩漬けになっていた物件が出回り始めるという効果もあり、不動産市場の活性化が徐々に始まっているようです。
一方、景気に対してマイナス要因と考えられるのは、今年の3月で期限が切れる金融円滑化法案の問題です。これは民主党が政権を取った直後の2009年の秋に当時の亀井静香金融担当大臣の肝いりで成立したいわゆるモラトリアム法案と呼ばれている法律です。
簡単に言うと、銀行に対して、返済に困っている企業にリスケジュールなどの対応を求める法律で、当時のリーマンショックの苦境から立ち直れていなかった状況では必要な法律でした。
しかし、それから3年半の時間が経って、本来ならば倒産しているはずの企業の延命がなされているためだけの法律になっているという話も聞かれるようになりました。安倍政権は現在のところ、この法律の延長をしない方針を打ち出しています。新聞報道によるとこの影響で5〜6万社程度の倒産が予想されると見込まれています。4月からそれだけの数の倒産が表面化してくると、今夏に予定されている参議院選挙に影響が出るのではないかと言われていますが、私はそれでもやはり延長しないのではないかと思います。
それは、自民党政権は民主党政権に比べて、資本主義の原理原則に従って政権運営するのではないかと思うからです。モラトリアム法案は問題の先送りにはなりますが、問題の根本的な解決にはなりません。厳しい言い方になって恐縮ですが、倒産するべき企業が倒産せずに生き残ってしまうのは資本主義というシステムにとっては問題を大きくするだけです。だから、マラソンの距離を100メートル走のスピードで走っていると言われるほどの急激な動きをしている安倍政権がその問題先送りの選択はしないだろうと思えるからです。
これも不動産関係者の話ですが、不動産市場からすると、企業の倒産が増えると企業整理のために不動産の売り物件が増えることになり、上記のように上げ潮のマーケットにとってはそれもプラス材料になると見ている関係者が多いということです。
以上のように考えると、やはり強いものにとっては景気が確実に良くなってきていることが感じられているようです。
逆に地方に行って経営者のお話をお聞きしても、一体どこの景気がいいのですかというお話をされる方がほとんどです。タクシーの運転手さんなどもまったく景気が良くなったという実感は持っていません。庶民に至っては給料が上がるのは最後になると思われますので、まずはインフレの悪影響だけを受けることになりそうです。
安倍政権もそれが分かっているので、財界に対して給与の引き上げを求めており、ローソンの新浪社長は子育て世代の給与の引き上げを明言しました。このように努力はしていますが、経営者の実感としてはそれについていけるのは一部の業績のいい大企業だけということになりますので、強いものに優しくて、弱いものにはその恩恵がなかなか行き渡らない景気回復段階にあるというのが現在の実態のようです。
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1964年 大阪生まれ。1988年 (株)船井総合研究所 入社。1998年 同社 常務取締役。同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。2008年 (株)船井本社 代表取締役社長就任。父・船井幸雄の「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築くことが本来の自分の役割だ」という思いに共鳴して、持ち株会社である同社の代表取締役社長として父をサポートすることを決意した。
著書には、『中堅・中小企業のためのIT化時代の「儲け」の決め手』(船井幸雄らとの共著 2003年 ビジネス社)、『天律の時代が来た! 生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『いま明かされるコトダマの奥義』(2011年1月 新日本文芸協会) 、『未来から考える新しい生き方』(2011年9月 海竜社)、『失敗から学ぶ』(2012年7月海竜社) 、『未来から考える経営』(2012年10月 ザメディアジョン)などがある。
★にんげんクラブ:http://www.ningenclub.jp/
★船井勝仁.COM:http://www.ilir.co.jp/funai_katsuhito/