写真
2010年にんげんクラブ全国大会ステージ上にて
(写真撮影:泉浩樹)

「天律時代」の到来に向けて

このページは、(株)船井本社社長で「にんげんクラブ」を主催する船井勝仁によるコラムページです。船井勝仁は「これから“天律時代”が来る。そして一人ひとりが“うず”を作っていくことが大事になるだろう」という思いを持っています。それをベースにおいた日々の活動の様子や出会い、伝えたいことなどを語っていきます。

また、「船井幸雄の息子」ではなく、“船井勝仁”の独自性をさらに打ち出していくこともテーマに、これまで父に寄せてきた思いや、「二代目社長」としての方針も語っていきます。

左上 「うず」のイメージ(画:西口貴美)
2012.04.21(第49回)
消費税は上げなければいけないのか

 お金の仕組み、特に利子の制度に今の金融制度の詐欺的な秘密があり、金利のないお金が流通するようになると、世の中は段違いに暮らしやすくなるという話を前回書きました。仕組みとしてはとてもシンプルですが、いま金融業で食べている人が失業してしまいますので、そんな簡単にシステムの変更はできないと思います。日本ではあまり上手く行っていませんが、地域通貨は利子のないお金の成功例です。ある一定の地域で、例えば地産地消を目的にして、地域通貨を発行して、それが結構上手く流通している例が欧米にはあります。
 日本で地域通貨が上手くいかない理由はいろいろあると思いますが、私は一般の市民が行政に対して信頼感を持っていることが、逆に日本で地域通貨が上手くいかない理由になっている気がします。欧米では政府が偉いという感覚がなく、自分たちの暮らしは自分たちで守るという自立意識が高いのですが、日本は政府に任せておけば大丈夫だから、国の金融システム以外を試みる意味がよく分からないのではないかと思います。
 私はどちらにしても、いまの金融の仕組みは早晩行き詰ると思っているので、仕組みが壊れた時がチャンスだと思っています。その混乱の時に、新しい為政者にだけ有利な新たな詐欺のような仕組みを作るのではなく、私たち全員が幸せになれる仕組みを導入することがポイントになります。そのためには、私たち自身が自分で考える能力を身につけることで、どさくさにまぎれて変なシステムが導入されないように、しっかりと現実を直視することが大切だと思っているのです。
 そして、その試金石になるのが、私たちの暮らしに大きな影響を与えることになる消費税の問題だと思います。いまの金融システムを守るという観点から見れば、消費税は絶対に上げなければなりません。日本の財政はとっくの昔に破綻しており、金融工学の発達と日本人が盲目的に政府のことを信じているので破綻が表面化していないだけです。GDPの2倍以上の1000兆円にも登る国債が発行されており、利子が5%になれば、利払いだけで50兆円になり、税収を超えることになります。誰が考えても、こんな状態を続けることは不可能なのです。
 だから政府の収入を上げるためには、消費税を大幅に引き上げるぐらいしか良い方法は見当たりませんので、少なくとも30%ぐらいに消費税を上げる必要があるのです。そして、それができれば、日本の金融システムの破綻は避けられます。でも、ここで考えなければいけないのは、消費税を上げても、所詮問題の先送りに過ぎないということです。金利や税金は、成長が止まった経済にとっては余計な搾取システムに過ぎません。金利や税金を取られる分、実体経済から効率の悪い公的分野や、実は何も生み出していない金融分野に収益が移行してしまい、実体経済の部分はますます困窮していくことになるからです。
 消費税は、お金を使うたびに取られる税金ですので、お金の仕組みから脱却する以外に助かる方法はありません。前回、書いたようにお金は経済の血液の役割をしているものなので、消費税をかけて経済活動を抑止するようなことは、本当は一番やってはいけない政策なのです。だから、消費税の引き上げには反対しなければいけないと思っています。それは、現在の金融システムの崩壊を早めることになります。でも、問題先送りをするよりも、現実を受け入れる方が根本的な解決は早くなるのです。
 消費税を上げずに、財政問題を解決する方法は、国債ではなく政府紙幣を発行してしまうことです。そんなことをすれば日本はハイパーインフレになるという声が聞こえてきそうですが、需要と供給のギャップが日本にはまだまだたくさんありますし、政府紙幣を発行しなくても、ハイパーインフレを起こす以外にはとても返す方法が見つからないぐらいの国債発行高があるのですから、どちらでも同じことです。
 経済学や金融学の常識で言うと、金利のつかないお金も、政府紙幣を考えることさえ、学者生命を失いかねないぐらいの暴論です。それは、いまの為政者が我々に気づかれると一番困る分野だからそういうことになっているのです。震災前に原発に反対すると、共産主義者だと言われたのと同じ論理だと思います。だから、タブーに挑戦して、消費税の引き上げに、自分の利害からだけではなく、根本的な反対をする勇気を持つことが大切なのです。

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Profile:船井 勝仁(ふない かつひと)

1964年 大阪生まれ。1988年 (株)船井総合研究所 入社。1998年 同社 常務取締役。同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。2008年 (株)船井本社 代表取締役社長就任。父・船井幸雄の「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築くことが本来の自分の役割だ」という思いに共鳴して、持ち株会社である同社の代表取締役社長として父をサポートすることを決意した。 著書には、『中堅・中小企業のためのIT化時代の「儲け」の決め手』(船井幸雄らとの共著 2003年 ビジネス社)、『天律の時代が来た! 生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『いま明かされるコトダマの奥義』(2011年1月 新日本文芸協会) 、『未来から考える新しい生き方』(2011年9月 海竜社)などがある。
未来から考える新しい生き方
★船井本社の主宰するにんげんクラブ:http://www.ningenclub.jp/
★船井勝仁.COM:http://www.ilir.co.jp/funai_katsuhito/

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