(写真撮影:泉浩樹)
「天律時代」の到来に向けて
このページは、(株)船井本社社長で「にんげんクラブ」を主催する船井勝仁によるコラムページです。船井勝仁は「これから“天律時代”が来る。そして一人ひとりが“うず”を作っていくことが大事になるだろう」という思いを持っています。それをベースにおいた日々の活動の様子や出会い、伝えたいことなどを語っていきます。
また、「船井幸雄の息子」ではなく、“船井勝仁”の独自性をさらに打ち出していくこともテーマに、これまで父に寄せてきた思いや、「二代目社長」としての方針も語っていきます。
少し前のことですが、『船井幸雄.com』に消費税は大企業だけを優遇する不公平税制で、それが経団連に入っている大企業が消費税に賛成している大きな理由であるという投稿をいただきました。その時の私はそんなバカな話はあるかと思ったので、そんなことはないよと返事をしました。
現行の消費税は仕入税額控除方式と呼ばれているもので、商品を販売した時に、それまで支払った消費税を控除できるというものです。消費税を負担するのは最終消費者だけで、モノを販売する企業は仕入れ時に支払った消費税を還付してもらうことが出来る仕組みになっています。
例えば小売価格100円の製品を販売した時の消費税は5%の5円ですが、仕入れ価格が60円だったらその小売業者は仕入れる時に3円の消費税を払っているので、5−3=2円の消費税を納めればいいことになります。
ところが、輸出した分には消費税がかけられませんのでその分は還付になります。同じ例である企業が海外に100円の製品を輸出したとします。今度は消費税を納める必要がないので、仕入れた時に払った3円の消費税はまるまる返ってくるというわけです。
一見、とても合理的な制度ですが、大手企業にとても有利な税制になっているということが、12月13日に配信された『船井メールクラブ』の岩本沙弓先生のメルマガに書かれていました。そのメルマガで紹介されているのが、ジャーナリストの斎藤貴男さんと税理士で元大学教授の湖東京至先生の対談本である『税が悪魔になるとき』(新日本出版社)です。
この本を読めば、消費税が如何に中小企業をいじめる税金であるかがよく分かります。厳しい価格競争の中で、多くの中小企業は消費税分をきっちりと価格に転嫁することができません。下請け企業であれば大手企業から企業努力で消費税分は何とかしなさい。そうでなければ取引を切りますよと言われれば、仕方なくそれに従っているのが実情ではないでしょうか。
普通の法人税は赤字企業には課税されません。消費税は一見間接税のように見えますが、実は企業の売上から原価を引いた粗利益にかけられる直接税だと考えたほうが合理的なのかも知れません。企業会計を考えるとその粗利益から販売管理費を引いたのが営業利益で、そこから営業外収益を加え、営業外費用を引いたのが経常利益です。通常の法人税は経常利益に対してかかります。
だから多くの中小企業はこの段階で赤字なら法人税を払わなくてもいいのですが、販売管理費前の粗利益に課税される悪魔のような税金だと言うわけです。この仕組は大企業であっても同じなのですが、大企業のほとんどは輸出企業であり、上記のように輸出分は消費税がかからないどころか、原価としていままで払ってきた経費分の消費税を還付してもらえるというわけです。
そして、その支払った消費税は下請けイジメの中で実は支払ったはいないケースが大半で、そう考えると大企業にとってはその還付金が大きな収益になっているという実情が浮き彫りになってくるのです。実際に一番還付金を受けているトヨタ自動車は、湖東先生の試算だと2,000億円以上の還付金を受け取っているそうです。また、還付金の内の実に3分の1が上位10社の大手企業に対して返されているのです。
だから、経団連に属しているような大手企業は消費税の値上げに賛成なのです。10%になれば単純に考えればいまの倍の還付金がもらえるからです。自民党の安倍政権を支えるのは経団連のような大手企業と多くの中小企業の経営者達だと思います。前者はいいのですが、消費税のアップによって多大な痛手を受けることになる中小企業の経営者はこの実態をほとんど知らないのではないでしょうか。
冒頭に書いた『船井幸雄.com』の読者の方に謝らなければいけないのはもちろんのことですが、こういう本当の情報が発信されるのが、かなり高額な料金がかかる『船井メールクラブ』なのです。だから、この難しい時代に生き残るためには、直感で必要だと思った投資は躊躇しないことが大事です。そのことを反省すると同時に思い知った出来事でした。
あんまり本論とは関係のない話ですが、湖東先生の対談者であるジャーナリストの斎藤貴男さんは昔、船井幸雄を名指しして批判する『カルト資本主義』(文春文庫)を出版した人です。まさか、斎藤さんの本を紹介することになるとは思いませんでしたが、それでも紹介したくなる素晴らしい本ですので、これからの日本のあり方を考えるためにぜひお読みいただければと思います。
『未来から考える経営』 |
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1964年 大阪生まれ。1988年 (株)船井総合研究所 入社。1998年 同社 常務取締役。同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。2008年 (株)船井本社 代表取締役社長就任。父・船井幸雄の「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築くことが本来の自分の役割だ」という思いに共鳴して、持ち株会社である同社の代表取締役社長として父をサポートすることを決意した。
著書には、『中堅・中小企業のためのIT化時代の「儲け」の決め手』(船井幸雄らとの共著 2003年 ビジネス社)、『天律の時代が来た! 生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『いま明かされるコトダマの奥義』(2011年1月 新日本文芸協会) 、『未来から考える新しい生き方』(2011年9月 海竜社)、『失敗から学ぶ』(2012年7月海竜社) 、『未来から考える経営』(2012年10月 ザメディアジョン)などがある。
★にんげんクラブ:http://www.ningenclub.jp/
★船井勝仁.COM:http://www.ilir.co.jp/funai_katsuhito/