写真
2010年にんげんクラブ全国大会ステージ上にて
(写真撮影:泉浩樹)

「天律時代」の到来に向けて

このページは、(株)船井本社社長で「にんげんクラブ」を主催する船井勝仁によるコラムページです。船井勝仁は「これから“天律時代”が来る。そして一人ひとりが“うず”を作っていくことが大事になるだろう」という思いを持っています。それをベースにおいた日々の活動の様子や出会い、伝えたいことなどを語っていきます。

また、「船井幸雄の息子」ではなく、“船井勝仁”の独自性をさらに打ち出していくこともテーマに、これまで父に寄せてきた思いや、「二代目社長」としての方針も語っていきます。

左上 「うず」のイメージ(画:西口貴美)
2012.03.11(第45回)
生死の境目

 あの大震災からちょうど1年がたちます。約2万人もの人の命が奪われた未曾有の大震災の意味を考えることは、私たち残されたものにとってとても大事なことだと思います。大震災はもちろん天災ですが、正しい生き方をしていなかった私たちに対する警告と考えることもできるのではないでしょうか。
 前回のコラムで書いたように、一般社団法人三陸海産再生プロジェクトの理事会に参加するために石巻に久しぶりに行ってきました。まだまだ傷跡は残っていますが、日本人の、その中でも特に粘り強い東北人の本性が発揮されて、町は徐々に復興に向けて動き始めていることが実感できました。大きな打撃を受けた水産業や水産加工業の人たちも、なんとか立ち上がろうと懸命にもがきながらがんばっています。
 その力強さに心を打たれると同時に、地元の人たちの本音に少しふれることができたことも大きな収穫でした。

 昨年の4月と6月にも石巻や女川の被災地を見せていただいているですが、2回とも日帰りでした。それでも、魂を揺さぶられるような衝撃を受けたのですが、やはり緊密なコミュニケーションを取れたわけではありません。お話をさせていただいたのも、三陸海産再生プロジェクトの代表理事で木の屋石巻水産(株)副社長の木村隆之さん等、短時間でも言いたいことが伝えられる伝達能力に優れている人達でした。
 それはそれで貴重な意見ではありますが、生活をしている一般の方の本音レベルの情報ではなかったと、今回は1泊させていただいて、気がつきました。理事会が夕方に設定されていたので、必然的に宿泊させていただくことになりました。三陸のおいしい魚をいただきながらお酒も入って、いろいろな話を聞かせていただきました。また、翌日には、木の屋さんの社員でもあり、プロジェクトの広報室長でもある中村暢宏さんに石巻や女川の被災地を案内していただきました。
 中村さんから津波の話を聞いていると、ごく身近に「生死の境目」の話があったことに衝撃を覚えます。中村さんご自身も生死の境目を体験していました。木村社長(木村副社長のお兄様です。今回はじめてお会いできてお話しができ、すばらしい人柄に魅了されました)から「津波が来るようだから逃げろ」という指示が出て、先輩社員を車で自宅に送っていき、それから奥様や娘さんを迎えに行って避難所に送り届け、お父様が迎えに行ったご子息が返ってくるのを自宅で待っている時に津波がやってきたそうです。
 自宅の2階に逃げてなんとか命だけは助かったという状態でした。もし、自宅に帰りつくことができていなかったら、津波に流されていただろうということです。また、お父様とご子息は渋滞に巻き込まれて津波に流されてしまいました。ただ、たまたま大きな車に乗っていて機密性が保たれていたことと、他の自動車に引っ掛かって引き波にさらわれずに奇跡的に陸地に残ることができたのです。
 息子さん以外にも何人かの幼稚園児を乗せていたので、子どもたちが閉じ込められているということで、いの一番に助けられたのです。まさに生死の境をみるような経験をしたご子息のことが心配になったのですが、「元気ですよ。助かったことに感謝しているようです」と言う中村さんの言葉にホッとしたと同時に、その後、何日間も食べるものもなく、暖房もない寒さの中で耐え抜いた人たちの強さとたくましさを感じました。

 ちなみに、送っていった先輩は一番被害が大きかった南浜地区に自宅があり、木の屋石巻水産の社員でただ一人亡くなってしまいました。生死の境目があちこちにあり、それを乗り越えた東北の人たちは、私たちよりもたくましい人類に進化したのかもしれません。
 中村さんのご了解を得て、JA全中が主催した「第36回『ごはん・お米とわたし』作文・図画コンクール」(http://www.yoi-shoku.jp/pressrelease/pdf/111201.pdf)の作文部門で内閣総理大臣賞を受賞した中村さんのお嬢さんで小学校6年生の中村早希さんの作文「ありがたいねえ。」を掲載させていただきます。この作文を読んでいただき、それから、中村さん達が言っていた、「別にボランティアをしなくてもいいので、被災地を気軽に見に来てほしい。ここで現実に何が起こったかを一人でも多くの人に感じてほしい」ということの意味を考えていければと思います。

中村早希さんの作文「ありがたいねえ。」
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Profile:船井 勝仁(ふない かつひと)

1964年 大阪生まれ。1988年 (株)船井総合研究所 入社。1998年 同社 常務取締役。同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。2008年 (株)船井本社 代表取締役社長就任。父・船井幸雄の「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築くことが本来の自分の役割だ」という思いに共鳴して、持ち株会社である同社の代表取締役社長として父をサポートすることを決意した。 著書には、『中堅・中小企業のためのIT化時代の「儲け」の決め手』(船井幸雄らとの共著 2003年 ビジネス社)、『天律の時代が来た! 生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『いま明かされるコトダマの奥義』(2011年1月 新日本文芸協会) 、『未来から考える新しい生き方』(2011年9月 海竜社)などがある。
未来から考える新しい生き方
★船井本社の主宰するにんげんクラブ:http://www.ningenclub.jp/
★船井勝仁.COM:http://www.ilir.co.jp/funai_katsuhito/

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