(写真撮影:泉浩樹)
「天律時代」の到来に向けて
このページは、(株)船井本社社長で「にんげんクラブ」を主催する船井勝仁によるコラムページです。船井勝仁は「これから“天律時代”が来る。そして一人ひとりが“うず”を作っていくことが大事になるだろう」という思いを持っています。それをベースにおいた日々の活動の様子や出会い、伝えたいことなどを語っていきます。
また、「船井幸雄の息子」ではなく、“船井勝仁”の独自性をさらに打ち出していくこともテーマに、これまで父に寄せてきた思いや、「二代目社長」としての方針も語っていきます。
安西正鷹著『国際金融資本がひた隠しに隠すお金の秘密』(成甲書房)を読みました。著者は金融機関でディーリング業務の第一線に携わっている人ということで、お名前はペンネームだと思います。
内容は、このコラムで私が書かせていただいていることを学術的により深く掘り下げて書かれており、自分の主張の確認をする上でも大変興味深く読ませていただきました。例えば、利子と中央銀行制度が詐欺的なシステムであること等がわかりやすく精緻(せいち)に紹介されています。
また、ミヒャエル・エンデの『モモ』の紹介を通じて、お金の奴隷になっている現在の私たちの生活の本質が「こせこせとした時間」に追われていることが論評されており、現場の第一線にいる人がそれを踏まえて、かつ鳥の目で俯瞰しているからこそできるものの見方だと感心しました。ゆったりとした時間の流れを生活に取り戻すことができれば、お金に追いまくられる生活からも解放されるということに気づき、そういう生活をしていくことが、いまの大変革を乗り切るために一番必要なことだということに改めて気づかせていただきました。
面白いなと思ったのは、複式簿記というシステムが、やはり現代の資本主義社会の本質をごまかすために利用されているという視点でした。まず、複式簿記の説明をしている部分を少し引用させていただきます。
(引用開始)
複式簿記は、企業活動における取引を二つの側面から捉える。ある一定の仕組みに基づいて帳簿に記入し、計算して整理する。この作業を経て、企業の財政状態を示す「貸借対照表」と経営成績を示す「損益計算書」が同時に作成される。その技法を複式簿記と呼ぶ。
企業が資本投下して取引を行ない、その取引で生じるカネ(貨幣)の流れとモノ(財・サービス)の流れを、帳簿の借方(左側)と貸方(右側)に分けて記録する。これによって一定の期間に、資産、負債、資本がどのように変化し、最終的にどれだけ増加(あるいは減少)したか、つまり収益と費用の差額としての利益(あるいは損失)がどれだけ生じたかを計算する技法ともいえる。複式簿記では、資産、負債、資本および収益、費用を細かく分類された勘定科目ごとに、それぞれの有高を計算する。
経済における取引はギブ・アンド・テイクの精神で行われることになっている。したがって、ある取引を行なえば、必ず勘定科目の借方(または貸方)が増加し、同時に別の勘定科目の貸方(または借方)も増加する。
勘定科目の組み合わせは、借方と貸方で常に一対一であるとは限らない。一方が一つで他方が複数の場合も、両方が複数の場合もある。だが、各々を集計してみると、借方と貸方には同じ金額が記されていることが分かる。つまり、すべての取引を記帳した結果として、すべての勘定の借方合計と貸方合計は必ず等しくなる。
これは複式簿記の基本原理とも言うべき特徴であり、「貸借平均の原理」と呼ばれる。複式簿記は天秤の原理、つまり重量を加減して水平になるようにバランスをとる思想を内包しており、これを適用して経済活動を測定するのである。
若き日にヴェネツィアに遊んだ文豪ゲーテは『ヴィルヘルム・マイスターの修行時代』で、「複式簿記こそ人間の精神が発見した最も素晴らしいものの一つである」と高く評価している。
複式簿記は商業資本主義的経済活動が始動したルネッサンス期に、社会に浸透していった。
(引用終了)
大学の時に会計学の授業で、借方と貸方の概念が理解できた時、目からウロコが落ちた気分になりました。しかし、資産が増える方を借方といい、負債が増える方を貸方というのは一般的な概念と逆だなあと思ったことが印象に残っています。これは、英語でもやはり借方をDebit、貸方をCreditと言いますので、アメリカの大学でAccountingの授業をとった時にも同じような感覚を覚えました。
それが、本書を読んだことではじめて理由がわかりました。15世紀のヴェネツィアで資本主義の初期段階が発展するときに、複式簿記は金融業の無から有を生み出す仕組みを正当化するために用いられたので、銀行側からみた借方、貸方になっているというのが、一般的な考え方と逆になる原因のようです。つまり、企業が預金をすることは銀行から見れば借りを作ることで、逆に借入をすることは貸しを作ることになるからなのです。
複式簿記は確かにバランスがとれていて、借方と貸方はいつも同じ数字になっているので、正しいことを表しているものだと思ってしまいます。でも、他人から預かった預金をいまの日銀の準備率から言えば100万倍に増やせる詐欺的なシステムにおいても、銀行側から見れば借方と貸方の双方を同じ金額だけ増やせばいいのですから、簡単にそのおかしな仕組みをごまかせる最良のツールになったわけです。
複式簿記の発達が近代資本主義を飛躍的に発展させたことは間違いありません。資本主義のルーツとも言える複式簿記が、現在に至るまでの金融資本主義を完成させるツールであったことに改めてびっくりしています。次の世の中の指標には複式簿記を超えた、つまりお金がすべての尺度であることを超えたツールの出現が待たれます。
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1964年 大阪生まれ。1988年 (株)船井総合研究所 入社。1998年 同社 常務取締役。同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。2008年 (株)船井本社 代表取締役社長就任。父・船井幸雄の「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築くことが本来の自分の役割だ」という思いに共鳴して、持ち株会社である同社の代表取締役社長として父をサポートすることを決意した。
著書には、『中堅・中小企業のためのIT化時代の「儲け」の決め手』(船井幸雄らとの共著 2003年 ビジネス社)、『天律の時代が来た! 生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『いま明かされるコトダマの奥義』(2011年1月 新日本文芸協会) 、『未来から考える新しい生き方』(2011年9月 海竜社)などがある。
★船井本社の主宰するにんげんクラブ:http://www.ningenclub.jp/
★船井勝仁.COM:http://www.ilir.co.jp/funai_katsuhito/