写真
2010年にんげんクラブ全国大会ステージ上にて
(写真撮影:泉浩樹)

「天律時代」の到来に向けて

このページは、(株)船井本社社長で「にんげんクラブ」を主催する船井勝仁によるコラムページです。船井勝仁は「これから“天律時代”が来る。そして一人ひとりが“うず”を作っていくことが大事になるだろう」という思いを持っています。それをベースにおいた日々の活動の様子や出会い、伝えたいことなどを語っていきます。

また、「船井幸雄の息子」ではなく、“船井勝仁”の独自性をさらに打ち出していくこともテーマに、これまで父に寄せてきた思いや、「二代目社長」としての方針も語っていきます。

左上 「うず」のイメージ(画:西口貴美)
2012.03.01(第44回)
三陸海産再生プロジェクト

 先日、一般社団法人三陸海産再生プロジェクトの理事会に出席するために石巻に行ってきました。石巻に行くのは、震災後の4月、6月に続いて3回目だったのですが、石巻の町はまだまだ完全に整理が終わったわけではありませんが、さすがにもうすぐ震災から1年になりますので、昨年の6月とはだいぶ様子が違ってずいぶんきれいになっていました。そして、復興に向かって前向きに進んでいこうという気力が感じられる段階に入っていました。

 三陸海産再生プロジェクトは、震災後半年間は世界で一番がんばった人だと私が勝手に思っている、佐々木重人さんが震災直後に、「福島の原発がダメで、女川原発が大丈夫なはずがない。自分の目で事実を確かめに行こう」と思い立って女川原発のある牡鹿半島に向かったことから始まりました。
 原発のとりあえずの安全を確かめた佐々木さんが、縁もゆかりもない地元の被災された漁師の皆様と仲良くなり、彼らの避難場所を佐々木さんの友人たちが支援していったことがきっかけでした。
 私も佐々木さんに連れて行ってもらって、昨年の4月にはじめて被災地を訪れることになったのですが、そこで、いまはこのプロジェクトの代表理事をやっていただいている木村隆之さんに佐々木さんを私が紹介させていただきました。
 それ以降も、東京での活動と秋田での米作り、そしてその往復の途中に石巻に支援物資を車で運ぶという生活を続けていた佐々木さんが、木村さんの避難しているアパートに泊まり込んで復興について話し合い、それでこのプロジェクトが生まれたのです。そして、木村さんが代表理事に就任して、漁師さんの生活の復旧や復興ではなく、再生を目指すプロジェクトがスタートしたのです。
 木村さんは木の屋石巻水産(株)という缶詰を製造販売している会社の副社長です。漁師さんが取った魚を直接、もしくは木の屋さんのような地元の加工業者が加工した製品を既存の流通を通さずに直接消費者に届けることを目指したもので、まずは理解のある方に社団法人の会員になっていただき、会費や寄付金をいただき、漁業の再生の費用を捻出することから始まりました。
 いま現在で、4千5百万円の会費や寄付金が集まり、2組の漁師さん達のグループに再生費用を出すことができましたし、漁師さんが取った魚を産直の形で会員さん達に買っていただく取り組みも何度か実行できました。佐々木さんは、立ち上げが役目だからということで、このプロジェクトの理事にはならずに、代わりというわけではありませんが、私が理事に就任させていただいたというわけです。
 この取り組みはマスコミでも頻繁に取り上げられ、何度もテレビで取材を受け、昨年のにんげんクラブ全国大会をはじめ、木村代表理事は日本中を講演して回って歩いていますし、本の出版も計画されているという報告が理事会で出ていました。

 今回の理事会では、動脈硬化を起こしてしまっている流通を何とかしようと戦うのではなく、バイパスをつけることでこの事態の解決を図ればいいのでは、という意見が出ました。動脈硬化状態の既存流通を何とかしようと思って手を付けると出血して取り返しがつかないことになるので、天皇陛下の心臓の手術ではありませんが、新しいバイパスである産直の仕組みを作ればいいということになったのです。
 産直の仕組みが成功するためには、私たち消費者の考え方が変わることが大切です。小売価格が100円の缶詰の場合、製造業者の出荷価格は条件がよくても60円未満だと思います。それで、空缶の価格が25円ぐらいするそうですので、利益を出そうとすると魚を買ってくる原料代にいくら使えるのでしょうか。木の屋さんの場合は、懸命にも世の中の流れに逆らって小売価格が300円以上するブランド缶詰を作ることに成功していました。
 だから、いろいろな苦労はありますが、新しい工場を建設する目処が立つところまで、事業を再生することに成功したのです。理事会の翌日のお昼をいただいて感激しました。
 下記の高成田享著『石巻讃歌』(講談社)に紹介されている「プロショップまるか」でおいしいお刺身弁当を信じられないぐらい安い値段で提供されていることに、石巻の人の協力しながらたくましく生きていこうという姿勢をみて、それに強く感動したからです。今回、石巻に行って「人間ってすごいなあ」と思いました。

(引用開始)

 二〇一一年五月二五日、石巻市の中心街にある鮮魚店「プロショップまるか」が「石巻名店街」と銘打った四つのミニ店舗とともに営業を再開した。「まるか」はさかなの町・石巻を代表する店だけに、刺身に飢えていた石巻のお客が殺到、その様子はNHKの全国ニュースでも流れた。インタビューに応える店主の佐々木正彦さんを東京の自宅で見ていた妻は「正彦ちゃーん」とテレビに向かって手を振りながら叫び、復興構想会議に出席するために上京していた私も「快挙だ、快挙だ」とわめいていた。

(中略)

 開店日には間に合わなかったが、その後、石巻にいくたびに、「まるか」に立ち寄っている。店に入ると、「まるか」の総菜コーナーとともに、「石巻名店街」と名づけたミニ店が並ぶ。中華料理の「桜蘭」、すき焼きの「石川」、うなぎの「滝川」、寿司の「寶来(ほうらい)寿し」の4店だ。そして奥のほうに入っていくと、和子さんが包丁をにぎる「まるか」の鮮魚コーナーになっている。店の中央には、細長くテーブルが置かれ、二〇人ほどが名店街で買った料理をそこで食べられる「イートイン」になっている。

(引用終了)


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Profile:船井 勝仁(ふない かつひと)

1964年 大阪生まれ。1988年 (株)船井総合研究所 入社。1998年 同社 常務取締役。同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。2008年 (株)船井本社 代表取締役社長就任。父・船井幸雄の「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築くことが本来の自分の役割だ」という思いに共鳴して、持ち株会社である同社の代表取締役社長として父をサポートすることを決意した。 著書には、『中堅・中小企業のためのIT化時代の「儲け」の決め手』(船井幸雄らとの共著 2003年 ビジネス社)、『天律の時代が来た! 生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『いま明かされるコトダマの奥義』(2011年1月 新日本文芸協会) 、『未来から考える新しい生き方』(2011年9月 海竜社)などがある。
未来から考える新しい生き方
★船井本社の主宰するにんげんクラブ:http://www.ningenclub.jp/
★船井勝仁.COM:http://www.ilir.co.jp/funai_katsuhito/

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