(写真撮影:泉浩樹)
「天律時代」の到来に向けて
このページは、(株)船井本社社長で「にんげんクラブ」を主催する船井勝仁によるコラムページです。船井勝仁は「これから“天律時代”が来る。そして一人ひとりが“うず”を作っていくことが大事になるだろう」という思いを持っています。それをベースにおいた日々の活動の様子や出会い、伝えたいことなどを語っていきます。
また、「船井幸雄の息子」ではなく、“船井勝仁”の独自性をさらに打ち出していくこともテーマに、これまで父に寄せてきた思いや、「二代目社長」としての方針も語っていきます。
田口ランディさんの『ヒロシマ、ナガサキ、フクシマ 原子力を受け入れた日本』(ちくまプリマー新書)という本を読みました。ちくまプリマー新書は中学生、高校生向けの新書で難しいテーマをなるべく易しく解説しています。原爆という兵器はどういう経緯で開発されたのか、世界で唯一の被爆国である日本がなぜ原発大国になっていったのか、フクシマの事故を起こした日本がこれから原子力とどう付き合っていったらいいのか、という難しい問題を若い人たちと一緒に考えていこうという力作です。
実は、つい最近、佐々木重人さんから田口ランディさんをご紹介いただき、はじめてお会いさせていただくことができました。少しお話をさせていただいて、物事の本質を自分の実感で感じながら、それで文章を書いているすごい作家なのだということがよく理解できました。
私は田口さんがインターネットで文章を書くようになった十数年ぐらい前に、当時、船井総研に出向していた佐々木さんから田口さんの存在を教えていただき、愛読させていただいていました。田口さんの物事に対する正直な姿勢に大変共感を覚えたからです。私はちょうどインターネットが普及し始めて、いままでよりも自由に自分の意見が発表できるようになったことに戸惑いを覚えていました。自分の意見をネットという公の場で発信することへの恐怖感を感じていたのです。私が躊躇して言えないような意見を素直に共感できるように表現してくれていたことにびっくりしていたのです。
例えば、原爆には反対だと思っていましたが、ヒロシマやナガサキで繰り広げられていた、原水爆禁止運動に参加しようとはまったく思いませんでした。原発の問題はもっといい加減で、これほど私たちの生活に影響を与えることなのに、その意味を考えることを放棄し、「反原発運動をすると左翼と思われるので嫌だなあ。だから、この問題には触れないしようにしよう」と3・11の直前まで考えていました。
『ヒロシマ、ナガサキ、フクシマ 原子力を受け入れた日本』で田口さんが言いたいことは、私たちが考えを放棄する姿勢を持っていることが、被爆国の日本が原発大国になった原因で、これからはコミュニケーションを活発にすることで、きちんと目の前に起こっていることがどういう意味を持っているのかを一人ひとりが考えていかなければならないということです。原爆を落としたという事実について「日本はなぜアメリカに謝罪を求めないのか」という点が田口さんの問題意識の原点になっているようです。同書から少し引用します。
(引用開始)
戦後から現在に至るまで、日本とアメリカは同盟国です。
でも、それはそれとして、どうして日本政府はアメリカに対して正式に「無警告の原爆投下」という、戦争状況の中でも逸脱した非人間的な行為に対しての、謝罪と反省を求めないのだろう、と疑問に感じました。
(中略)
原爆の無警告投下は、戦争のルールからも逸脱した行為だということを、日本は主張する義務があったのではないか、と私は思っていました。それは唯一の被爆国だからこそ主張し続けなければいけないことであり、それと、アメリカとの同盟は分けて考えてもいい問題ではないかと思ったのです。
(引用終了)
そして、それをやっていないので、反核という大事な運動が一部の過激な人たちに独占されるようになってしまったのではないか、「そんな過激な運動に参加して、アカ(共産主義者や社会主義者)とは思われたくない」という心理が働いてしまったことが一番大きな問題だと言っているのです。
田口さんの代表作のひとつに『被爆のマリア』(文春文庫)があります。中編小説4編からなる本ですが、その中に「イワガミ」という話があります。UFOなどもテーマになっており、田口さんの最新作『マアジナル』(角川書店)等のテーマにつながっていくのですが、私が一番惹かれたのは、原爆の被害者に原爆のことではなく、原爆投下前の美しかった広島についてインタビューをするシーンです。
片仮名のヒロシマではなく、人間が生活をしていた広島を考えることからはじめなくてはいけないのではないでしょうか。「被爆のマリア」は、長崎の浦上天主堂から見つかった頭の部分だけになったマリア像のことです。田口さんはこのマリア像に衝撃を受けて取材をはじめ、「被爆のマリア」を書いたのですが、一人ひとりがそれぞれの「被爆のマリア」を心の中に持つことから大震災の意味や原爆や原発の意味を考えていかなければならないようです。
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1964年 大阪生まれ。1988年 (株)船井総合研究所 入社。1998年 同社 常務取締役。同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。2008年 (株)船井本社 代表取締役社長就任。父・船井幸雄の「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築くことが本来の自分の役割だ」という思いに共鳴して、持ち株会社である同社の代表取締役社長として父をサポートすることを決意した。
著書には、『中堅・中小企業のためのIT化時代の「儲け」の決め手』(船井幸雄らとの共著 2003年 ビジネス社)、『天律の時代が来た! 生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『いま明かされるコトダマの奥義』(2011年1月 新日本文芸協会) 、『未来から考える新しい生き方』(2011年9月 海竜社)などがある。
★船井本社の主宰するにんげんクラブ:http://www.ningenclub.jp/
★船井勝仁.COM:http://www.ilir.co.jp/funai_katsuhito/