(写真撮影:泉浩樹)
「天律時代」の到来に向けて
このページは、(株)船井本社社長で「にんげんクラブ」を主催する船井勝仁によるコラムページです。船井勝仁は「これから“天律時代”が来る。そして一人ひとりが“うず”を作っていくことが大事になるだろう」という思いを持っています。それをベースにおいた日々の活動の様子や出会い、伝えたいことなどを語っていきます。
また、「船井幸雄の息子」ではなく、“船井勝仁”の独自性をさらに打ち出していくこともテーマに、これまで父に寄せてきた思いや、「二代目社長」としての方針も語っていきます。
前々回のコラムで書いた9月から景気が悪くなるきっかけは、塚澤先生によると9月19日のJALの再上場をきっかけに起こるのではないかと言われています。下記は9月19日のCNNの日本語版のニュースに掲載されたものです。
(引用開始)
(CNNMoney) 2010年に経営破綻(はたん)した日本航空が19日、東京証券取引所に再上場した。売り出し価格は3790円。時価総額は約7000億円と、5月に新規株式公開(IPO)を果たした米SNS大手フェイスブックに次いで今年2番目の大規模上場になった。
フェイスブックの売り出し価格は38ドルに設定されたが、IPOを巡る混乱で訴訟が相次ぎ、現在の株価は22ドルを下回っている。
日航の再上場はフェイスブックほどの注目を集めなかったものの、初日から堅調な展開が予想されていた。初値は売り出し価格をわずかに上回った。
日航は企業再生支援機構から出資を受け、不採算路線からの撤退や人件費の削減を断行して経営再建を進めてきた。
(引用終了)
5月のフェイスブックの上場で株式市場がピークを付けてその後の株価が低迷したように、今回のJALの再上場をピークに株価を上げて、その後相場が低迷する可能性があるのではという考え方です。
いまのところアメリカのFRB(米連邦準備制度理事会)が量的緩和策を打ち出したこともあり、その副作用として恐れられていた円高も79円台とどちらかと言うと円安気味にふれていることもあり、株式市場は堅調です。このまま、堅調に推移すればいいのですか、やっぱり何か起こる可能性も大きいと思います。
それはともかくとして、JALの再建はすごいことですね。2010年の1月にJALが破綻し、それがその後の日本の株式市場の低迷の原因を作ったことは間違いありません。
誰もが再建不可能と思っていたJALを稲盛和夫氏というカリスマ経営者が見事に再建を成し遂げたことはやっぱりすごいことです。
「船井幸雄オープンワールド2012」に間に合うように緊急出版した『未来から考える経営』(ザメディアジョン)という新著では稲盛会長の「利他の心」がJALの再建を成し遂げたという風に書かせていただいたのですが、町田徹著『JAL再建の真実』(講談社現代新書)を読んでいると、やっぱり現実的なアメーバ経営の力が大きいことを思い知らされました。
未来から考える経営の前に、やっぱりすべてを数字に落としこんで考える現実的な経営手法をしっかりマスターすることが大切なことをしっかりと確認することも大事だと思います。少し長くなりますが、同書のアメーバ経営の極意を簡潔にまとめた箇所を引用させていただき、このコラムを閉じたいと思います。
(引用開始)
JALが破綻劇に揺れた10年暮れの人事異動で、その年の初め、上海虹橋国際空港でのJAL機の離着陸継続に奔走していた上海支店長の米澤章氏が東京本社に戻ってきた。
55歳以上を中心にベテランの役職員がリストラによってごっそり退職したことを受けて、路線統括国際路線事業本部長として49歳の若さで執行役員に抜擢されたのだ。
帰国直後、稲盛会長が主宰し、本部長クラスが一堂に会する「業務報告会」に出席した米澤氏は面食らった。業務報告会は毎月、3日間にわたって、朝9時から夕方5時まで繰り広げられる。
初めて出席した報告会で、米澤氏は、矢継ぎ早に発せられる質問に答えられなかった。
すると、いきなり稲盛会長から「君は会社が破綻したということの意味をまったくわかっていない」と大変な剣幕で一喝されたという。それから1年半あまりが経ったが、よほどショックだったのだろう。2012年7月の筆者の取材にも、米澤氏は脂汗を浮かべながら、「あの時は、滅茶苦茶に叱られました」とうつむいてしまった。だが、これこそ、JALの全社員がそろって受けさせられた、稲盛流のアメーバ経営の洗礼だったのだ。
アメーバ経営の確信は、あらゆる組織を7、8単位に分割して、収支を管理することにある。報告書には、「収入」「費用」、その差し引きの「収支」の3項目を日割りで、「当日」「翌月」「翌々月」の3ヶ月分、「当初計画」と「結果」の両方について書き込む仕組みになっている。何週かに一度発生するような費用も日割りにして、1日ごとの収支が把握できるように記載することがミソという。支店長や部長は7、8単位(1単位に7、8人のグループが入る)をまとめて、この仕組で管理する。さらに、本部長は7、8人の部長が担当している範囲をカバーして、同じ仕組みで管理するのだ。上から見れば、8本のアメーバの足の先に1匹ずつアメーバがぶら下がって八つの部署を管理しているような格好になるらしい。これが名前の由来である。
稲盛流が強烈なのは、1万円単位で当初計画と実績のズレを追求し、即座に対応策を打つことを求めている点だ。1万円単位のズレが追求されるのは、米澤氏の担当する国際路線事業部でも変わらない。同本部の場合、収入と費用はそれぞれ月額で300億円前後の規模に達するが、当初計画と実績のズレが1万円以上あったものはすべて、稲盛会長が主催する業務報告会で取り上げられて、原因を説明し、どのような手を打ったのか報告する必要があるのだ。米澤氏の場合、フランクフルト支店で予定していた上下水道の配管工事のスケジュールの変更で費用発生時期が変わったというような話まで把握していないと本部長が務まらないという。さらに、自分の庭先を綺麗に見せるために、むやみに費用を社内の他の部署にツケ回すことも禁じられているらしい。
(引用終了)
ここまでするすごさがアメーバ経営の極意であり、JAL再建のポイントだったのです。脱帽です。
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1964年 大阪生まれ。1988年 (株)船井総合研究所 入社。1998年 同社 常務取締役。同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。2008年 (株)船井本社 代表取締役社長就任。父・船井幸雄の「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築くことが本来の自分の役割だ」という思いに共鳴して、持ち株会社である同社の代表取締役社長として父をサポートすることを決意した。
著書には、『中堅・中小企業のためのIT化時代の「儲け」の決め手』(船井幸雄らとの共著 2003年 ビジネス社)、『天律の時代が来た! 生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『いま明かされるコトダマの奥義』(2011年1月 新日本文芸協会) 、『未来から考える新しい生き方』(2011年9月 海竜社)、『失敗から学ぶ』(2012年7月海竜社)などがある。
★にんげんクラブ:http://www.ningenclub.jp/
★船井勝仁.COM:http://www.ilir.co.jp/funai_katsuhito/