スピリチュアル・エナジー-ほおじろえいいち氏-

このページは、科学ジャーナリストの
ほおじろ えいいち氏によるコラムページです。
ほおじろ氏は、先端科学とスピリチュアリティの統合を目指した内容の執筆をされています。

2008.08.01(第43回)
「崖の上のポニョ」のエネルギー

 宮崎駿監督作品の映画「崖の上のポニョ」を2回観ました。最初に見たときは、宮崎監督の創造力はあいも変わらずすごい!と感心し、もしかするとこの映画、ナンバーワンかもしれないと思いました。今までに見たことも聞いたこともないような設定と映像美に圧倒され、最後はえもいわれぬ幸福感につつまれてしまったからです。5歳の女の子ポニョと、お相手の同じく5歳の男の子宗介君のかわいいこと。それだけ見ても心が温まります。 
 しかしこの映画の素晴らしさの秘密は他にありそう。

 ここに描かれた世界は、一体何なのだろうと大脳皮質を中心とした理性でいくら考えてみたところで、答えは出せない。いや、あえて考えてしまうと、人間になりたくて家出をした魚のポニョが人間になったというだけの単純なお話。そんなお話のいったいどこがおもしろいの? ということになりそうです。でも映画全編を通して、ともすると私たちが忘れてしまいがちな純真でストレートな愛のエネルギーが発散されているようで、またポニョの父親のしていたことが謎めいていて、どうしてももう1度観なければ気がすまないということになってしまいました。

 ポニョの父はフジモトです。人間をやめ、海底のサンゴ塔に棲むようになって、100年くらいが経っています。彼はそこで海水を浄化・精製し、魔法の力を集めて生命の水を抽出しています。そしてその水を研究室の奥にある井戸に溜めています。彼は映画の中でこう語ります。「この井戸がいっぱいになった頃、再び海の時代が始まるのだ。カンブリア紀にも比肩する生命の爆発。忌まわしい人間の時代は終わるのだ・・・」。う〜ん、とてもおもしろい。

 ところが宗介の指の怪我で少し出ていた血をなめて半漁人になったポニョが宗介に会いたくて家出した時に、フジモトがこつこつと溜め込んだ生命の水が海に流れ出てしまうのです。それで世界がひずみ始めます。ポニョは、突如発生した猛烈な台風の中を、魚と化した不思議な波頭に乗ってひたすら走りながら宗介の住む崖の上の家を目指します。

 月は一刻一刻地球に近づき、描かれるたびに大きくなっています。そんな月を指差しながら「もう時間がないんだ」とあせるフジモト。

 もうひとつこの映画の鍵を握る存在は、ポニョの母親グランマンマーレです。彼女は海全体の女神のような存在で、その神秘的な救いの力と光り輝く姿から、船員たちには観音さまと呼ばれます。ところがなんとフジモトとグランマンマーレは100年位前に出会い、恋に落ちたらしいのです。

 それでなぜフジモトとグランマンマーレの子供が魚のポニョなのかという野暮なことは問わないことにいたしましょう。グランマンマーレはフジモトだけの存在ではないので2人はやむなく離れ離れに暮らしていますが、世界がひずみ始めた今、「あの人が来てくれたんだ」とフジモトが独り言をいうシーンが妙に印象的です。言ってみればフジモトの子育ての失敗ゆえに世界がひずみ始めた緊急事態に、全能のグランマンマーレが解決しに来てくれたということのようです。そしてその解決策が、ポニョを人間にしてしまうということ。ポニョは魔法を失いますが、人間とは素晴らしい存在だから、それで良いということなのでしょうか。

 登場人物たちが話す言葉もとても魅力的です。タイミングよく簡潔に発せられ、しかも深い意味を持っているように響くその言葉たち・・・。そして何といってもこの映画の最大の魅力は、すべてが手描きの美しいカラー・アニメーションであるということのようです。きっと気の遠くなるような枚数の絵が描かれ、それを動かしてみせるという基本的なテクニックによってできたのがこの映画なのです。そこに、製作者たちのエネルギーが強くこもったのではないでしょうか。

 同じように、機械で自動演奏されるピアノの音と、人間が心を込めて弾くピアノの音とはまったく違います。名演奏者の弾くピアノは、その人の心のエネルギーが音に乗って、聴く人の心に入って来るから感動するのです。それと同じようにCGなどという機械的な描画をやめ、すべて手書きで作った映画だからこそ、監督をはじめ製作者たちの愛に満ちた幸福エネルギーが美しい映像から発散され、観る人たちの心に入っていくのではないでしょうか。

 盛夏の一時、素晴らしい映画を体験することができました。


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Profile:ほおじろ えいいち(本名:喰代栄一)

『ポジティブ思考では、なぜ成功できないのか?』1974年埼玉大学理工学部生化学科卒業。東京医科歯科大学医用器材研究所にて約3年間、「ホルモンの生体制御学」なる先端科学に挑戦。1980年に詩集『心的惑星圏』を自費出版。その後短編小説や詩を書いていたが、1993年、光文社より『脳に眠る「月のリズム」』を出版し、科学ジャーナリストとしてデビュー。以来、先端科学とスピリチュアリティ統合を目指して執筆活動を続けている。シェルドレイクの仮説を紹介する『なぜそれは起こるのか』(1996年)はベストセラーになった。
魂の記憶』(2003年)を出版後は生きる意味に取り組み、ヒーリング・エナジーの研究を始めて、『幸せの進化形』 『ヒーリング・エナジー』(いずれも2005年)を出版。また、2006年12月にロシアのベストセラー本の邦訳版『「振り子の法則」リアリティ・トランサーフィン―幸運の波/不運の波の選択』、続いて2007年7月に『「願望実現の法則」リアリティ・トランサーフィン2―魂の快/不快の選択』ともに (ヴァジム・ゼランド著 ほ おじろ えいいち監修 徳間書店刊)を出版。2008年2月に『スピリチュアルの世界がよくわかる本』(中経の文庫)、2009年10月に『ポジティブ思考では、なぜ成功できないのか?』(学習研究社)を出版。2006年に無限波動技術株式会社(Q-Wave Technologies Inc.)を創設し、Q‐WaveヒーリングDVDなどを提供し始める。2009年12月に『人生を変えたいときに観るDVD』(発売・発行:無限波動技術)を出版。     
公式サイト:
http://www.eiichihojiro.jp

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