「“女船井”と呼ばれる経営者」の幸せになる生き方

このページは、船井本社グループのイリアール株式会社の代表取締役を２００６年から務める（※2022年退任）乗附なほみによるコラムページです。
舩井幸雄が経営術を実践的に教え、“女舩井”と呼んだ唯一の女性経営者です。
経営者として、女性として、舩井幸雄の教えを活かした生活をお伝えしていきます。

2013.04.01（第1回）

　はじめまして。乗附なほみと申します。初回ですので、自己紹介を兼ねて船井幸雄会長との出会いについて書きたいと思います。

　初めてお会いしたのは２００６年７月です。その前の年に、あるお医者様から「船井本舗という会社が、通販のためのＰＣシステムを導入したいそうなので、相談に乗って」と紹介を受け、販売管理システムの構築をする会社をやっている立場から、通常通り社員と共に伺い、業務内容を一通りヒアリングしました。当時、不勉強にも船井会長のことは全く存じ上げず、船井本舗が発行している会報誌『ぽらりす』を見た方からの注文と顧客管理をするシステムを構築したいという内容を聞いて、「この冊子でこんなに売れるなんて、すごいな」と驚きました。

　数ヵ月かけてシステムを構築後、システムを導入した際に運営スタッフを２人派遣することになりました。彼らから随時業務報告を受け、また、船井会長の本を拝読して、方法を変えればもっと売れるのにな、と思った矢先、当時の社長から、この会社の社長をやってくれないか、とお話を戴き、船井会長にお会いすることになったのです。

　緊張で固まっていた私に、船井会長は、とても丁寧に応対してくださいました。
　日本一の経営コンサルタントでいらっしゃるので、船井本舗の今後の運営方針など、いろいろ質問されることを想定していたのですが、私のことも今後の船井本舗のことも、何一つお訊きにならず、新著にサインしてくださり、「よかったら読んでください」とプレゼントしてくださいました。
　会長のオーラと、すがすがしい会長室の空気が忘れられません。

　そして２００６年８月に社長を引き継ぎ、社名を変え、引っ越し、スタッフを入れ替え、独自製品を開発し、と、今思えば従前とはかなり違う会社になっていきましたが、船井会長は、毎月何度かお会いする時も具体的なお伺いを立てた際も、流れを止めるようなことは全くおっしゃいませんでした。

船井会長にいただいた色紙

　次のお正月を迎えた時、船井会長から、色紙を頂戴しました。そこには、「自由　自主　自己責任」と書いてありました。とても重く受け止めました。

　後にわかりましたが、船井会長は、具体的な報告を聞かなくても、現状も未来の事も全てわかっておられるようです。

　たとえば……。
　毎月行われるグループ役員会では、各社がＢＳ（貸借対照表）・ＰＬ（損益計算書）を提出して状況報告をするのですが、ある時、会長が遅れていらしたことがあります。着席されてまだ資料もご覧になっていないうちに、お話になられたことが、まるで内容を見聞きしたかのようで、ビックリして鳥肌が立ちました。
　あぁ、全てお見通しなのだな、その上で包み込んでいらっしゃるのだな、と。

　また、こんなこともありました。数年前、突然経営者としての私に最大のピンチがやってきました。
　会長にはご心配をかけたくないと思いつつ状況報告に伺うと、「全ては、必要・必然・ベストだから、大丈夫でしょう」とおっしゃいました。
　私の意思とは関係なく、なるようにしかならないし、その結果がベストというのであれば、いいか、と吹っ切れ、つまりは背中を押して戴いたのかな、と解釈し、うまく行くか自信はありませんでしたが、自分がしたいと思うように行動しました。それからしばらく、とても大変でしたが、今振り返ると、ベストな結果であったと感謝していますし、あの時は私にとって最大のピンチと思いましたが、最大のチャンスでもあったと思います。
　まさに「必要・必然・ベスト」と、「ピンチはチャンス」を実体験したわけです。この経験を通じて、ひと山越えて、ようやく一人前の経営者になれたような気も致します。
　こうした経験を通じて思うのは、「チャンスの神様は後ろ髪がない」ということです。
　チャンスは、日常に隠れているかもしれませんし、ピンチという顔をして近づいてくるかもしれません。考えたり検討しているうちに過ぎ去ってしまうことがあります。もし私が幸せを掴めているとしたら、チャンスの神様の髪をさっと握れたからかもしれません。
　チャンスの神様の到来を見逃しませんように。