「“女船井”と呼ばれる経営者」の幸せになる生き方

このページは、船井本社グループのイリアール株式会社の代表取締役を２００６年から務める（※2022年退任）乗附なほみによるコラムページです。
舩井幸雄が経営術を実践的に教え、“女舩井”と呼んだ唯一の女性経営者です。
経営者として、女性として、舩井幸雄の教えを活かした生活をお伝えしていきます。

今年は暖冬となり、温暖化がいっそう現実味を帯びてきました。
オーストラリアの森林火災も心配です。
温暖化が進むと、高潮、海面上昇、洪水、巨大台風の襲来、干ばつ
生態系・農作物・海産物への悪影響、などのリスクがあります。

昨年の台風19号では、記録的な大雨・暴風・高潮が発生し
取引先や友人が、二子玉川、千葉県館山市などで被害に遭いました。
私も実際に多摩川の氾濫後の被害を見まして、深刻な状況を知りました。
そして治水対策について調べ始め・・・
洪水から、首都・東京を守る2つの地下施設を見てきました。

◆「神田川・環状七号線地下調節池」に潜入
まず、行ったのは、東京の主要道路の1つ、環七の地下40ｍにある
全長4.5km、高さ12.5ｍ、建設費約1000億円、年間維持費2億円の
巨大なトンネルがある、善福寺川取水施設。

環七地下

この調整池（トンネル）は、1886年に計画され1888年から着手、
段階的に使われるようになり、2008年に、今の形になりました。
トンネル断面積は、東京アクアラインのトンネルよりも大きく、
25ｍプール1800杯分である、54万トンの水を溜められます。
2006年の台風18号、2010年の台風18号、昨年の台風19号では
ほぼ満タンまで貯水して東京を守りました。

私が子供の頃は、神田川が何度も溢れ、高田馬場あたりで
住居や銀行が腰の高さまで浸水したのを覚えています。
1993年には3000戸が浸水被害に遭いました。
住民が国と東京都を訴えたことなどから、
一気に調整池や分水路の整備が進んだようです。
現在は、神田川・善福寺川・妙正寺川の水位が上がると
それぞれの川の取水施設から、水を入れ、洪水を防いでいます。

↓が、その3ケ所の取水施設を遠隔操作している中央監視操作盤。
普段は無人で、大雨予報があると職員が駆けつけるとのこと。
ここまで入れるとはビックリしましたが、大雨がない冬は、トンネル内の
ヘドロ（20〜50cm溜まる）を清掃し、ゲート弁も閉めるので安全だそう。

中央監視操作盤

モニタ

では、いよいよ地下43ｍへ潜入。
階段（100段以上）かエレベーターで降ります。
ここにあるポンプ装置と2本のパイプは、川の水位が下がった後
トンネルから川へ水を戻す設備。（満水から排出まで48時間）

ポンプ

ドア

2重になった扉を開けると、取水した水が落ちてくる場所に出ます。
この部分は深さ57ｍあります。
真っ暗闇のトンネル内部を進むと、声がコダマします。

水が落ちてくる場所

トンネル

トンネルの一部

ここは洪水対策だけでなく、雨が降らず川の水が枯れる冬は
消防用水として6万トンを溜めていて、必要な時に神田川に戻し
消防車が取水する位置に堰を作り、汲めるようにしているそう。
水の使い方も考えられていました。

◆「首都圏外郭放水路」に潜入
続いて、埼玉県春日部市へ。
地下50ｍにある世界最大級の治水施設へ行きました。

1993年に着工、13年の年月と2300億円をかけて、2006年に完成。
標高が低いため降れば洪水だった埼玉県東部を水害から守っています。
今までに121回、令和になってからだけでも7回も洪水から救ってきました。

地上はサッカーの練習場なので、着いた時は、まさかこの地下に、
こんな壮大な施設があるとは想像できませんでした。
サッカー場の角にひっそりあるドアから116段の階段を降りると、
500トンの柱が59本も聳え立つ、地下神殿に到着！

地上

地下50ｍの深さに、長さ177m・幅78m高さ18ｍの巨大空間。
圧巻です！
特撮映画、TV番組、ミュージックビデオ、映画『翔んで埼玉』のロケに
使われているので、見たことがある方も多いと思います。

地下神殿

施設を監視する操作室は、ヒーロー物の撮影に使われています。

コントロールセンター

地下神殿と言われる部分は、地下トンネルから流れ込む
水の勢いを調整する調圧水槽。
5つの立坑から取り込んだ河川の水を、一旦、この調圧水槽に貯めてから
6.3kmの地下トンネルを通して、江戸川に流す役割です。
豪雨の時は、水中に沈む地下神殿。幻想的ですね。

立坑も巨大で、深さ70ｍ、内径30ｍもあり、自由の女神、浅草五重塔、
スペースシャトルがすっぽり入るほどの円筒で、池袋のサンシャイン60
の体積と同じとは、すごい量の水を溜められるんですね。
排水する時は、1秒で25ｍプール1杯分の水を排水できるそうです。
それもまた凄い。

立坑

ここも豪雨のない冬は、ブルドーザーを入れて流入した土砂を清掃し
見学ができるようになっていました。

◆今後の治水対策
2つの施設とも、実際に入ると、莫大な建設費も納得の規模ですが
当初想定していた1時間に50mmを超える豪雨が
年々増加しており、その回数は30年前の3倍以上！　という今
23区内では75mmを想定した整備が進められています。

今、大きく変わっている渋谷駅周辺も、その一連の工事の中で
新宿御苑の湧水などを水源として駅の真下を流れている渋谷川の
水を逃がすため、ビル8階分の深さの巨大貯留槽ができました。

今後は100mmになる可能性が出てきたため、2016年から、
神田川・環状七号線地下調節池と、目白通りの地下にある
白子川地下調節池との連結工事をしているそうです。
さらに東京都と国土交通省では、他にも水を分散させる治水対策を
進めているそうですが、建設費・維持費と、
ますます果てしない費用が掛かることが心配です。

今回訪れた2つの施設を見学できるのは豪雨のない冬だけです。
もしご興味があれば、是非3月までに訪れてみてください。