「“女船井”と呼ばれる経営者」の幸せになる生き方

このページは、船井本社グループのイリアール株式会社の代表取締役を２００６年から務める（※2022年退任）乗附なほみによるコラムページです。
舩井幸雄が経営術を実践的に教え、“女舩井”と呼んだ唯一の女性経営者です。
経営者として、女性として、舩井幸雄の教えを活かした生活をお伝えしていきます。

2016.08.01（第80回）

今回は、タブーを破って、物の値段のしくみについて
お伝えしたいと思います。

５０００円の化粧品の原価はいくらなのか？
なぜ１００円ショップにも化粧品が並んでいるのか？
食品の原価は、いくらなのか？
生産者には、いくら入るのか？

こうした価格について、皆様は、お考えになったことはありますか？
化粧品や文房具、犬や猫の服のメーカーとしての仕事から、
ショップチャンネルへの出演などをしているためか、
最近、タレントさんやフリーランスで活躍されている方など、
物販業界ではない方から、「これから物販を始めたい」
という相談を受けることが増えてきました。

その打ち合わせで、まずビックリしたのが、
成功なさっていて、博識な方でも
物の流通や価格付けについて、あまりご存じないことです。

それでは、お店で１０００円で売られている商品の原価は、
いくらでしょうか？

小売店は、店舗の家賃・店員の人件費（厚生年金・健康保険・雇用保険も含む）
・ディスプレイ、集客のための告知、などの費用がかかります。
お客様がクレジットカードで支払った場合は、
カード会社は３〜５％くらいの手数料を差し引いて入金します。
通販で送料無料にした場合、もちろんその送料を負担します。
季節商品であれば、セールをすることもあるので、
その分も考えなければいけません。
ですから、一般的に、小売業者の仕入れ金額は、
上代の５０〜６０％くらいに抑える必要があります。

メーカーと小売店の間に入っている卸業者は、
メーカーから大量なロットで仕入れ、小分けして
小売店に売るため、倉庫機能や、金融機能も担っています。
ここでも家賃や人件費、小売店への配送コストかかりますから、
仕入れ金額は売価の半分くらいでないと、経営が苦しくなります。

メーカーは、材料費、人件費、家賃、運送費に加えて、
開発費や設備投資がかかります。
新製品を作るには、設計・模型製作などの試作費がかかり、
金型代や、新規の機械の導入や、従業員教育などもかかるので、
その経費は莫大です。

化粧品の場合は、安全のための試験や、
日焼け止めならばＳＰＦやＰＡの測定などもあります。
医薬部外品は申請にもコストがかかります。
また、宣伝費用、販促品（ポスターやＰＯＰなど）の製作費も。
メーカーは、こうした費用を織り込んで価格付けをしなければなりません。

つまり、商品価格が税抜き１０００円であれば、
小売店の仕入れ額（卸の販売金額）は５００円くらい、
卸の仕入れ金額（メーカーの販売金額）は２５０円くらいとなり
メーカーの材料費は、１００円以下に抑えるところが多いでしょう。

かといって、エンドユーザーが、（卸や小売りの費用が掛からないように）
メーカーから直接仕入れるのは難しいことです。
メーカーは、卸業者が一度に大量に買ってくれて、
日本中の店頭に並べてくれるからこそ、ロットを見込んで生産でき
資金が回り経営が成り立つのですから、
１人１人に小分けして、受注・代金回収・発送をするならば、
別の人員を用意し、経費を見込まなければならず、
卸に出荷しているのと同じ金額で出すことはできないからです。
また、卸業者が入ることで、他社商品と共同配送したりすることができ、
１商品あたりの経費は少なく済むメリットもあります。

ですが、エンドユーザーが流通の仕組みを知ったことで
政治家の経費の使い方が評価に直結することと同じく、
無駄を排し、商品自体にコストを掛けているメーカーが
評価されるようになり、卸や小売り店も経費を圧縮して、
製品価格を安くする競争をしています。

売り手にとっては厳しいですが、
消費者としては良いお買い物ができる時代ですね。