「“女船井”と呼ばれる経営者」の幸せになる生き方

このページは、船井本社グループのイリアール株式会社の代表取締役を２００６年から務める（※2022年退任）乗附なほみによるコラムページです。
舩井幸雄が経営術を実践的に教え、“女舩井”と呼んだ唯一の女性経営者です。
経営者として、女性として、舩井幸雄の教えを活かした生活をお伝えしていきます。

2015.10.15（第62回）

当コラムをお読み下さっている方は、経験がおありの方が多いと思いますが、
今回は、あえて写経（経典を書写すること）をお薦めしたいと思います。

写経は、元々、口述で広まった、仏教の開祖であるお釈迦様（ブッダ）の教え（お経）を
ターラの葉に書かれるようになり（貝多羅葉）、
インドから中国へ後漢の頃に伝わり、特に隋、唐の時代に全盛期となったそうです。

日本では、日本書紀（第２９）に「書生を聚（あつ）めて、始めて一切経を川原寺に写す」
と記されているところから、６７３年（天武天皇２年）に、飛鳥にあった川原寺で、
「一切経」の写経が行われたのが始まりとされていて、
奈良時代には、官立の写経所である図書寮ができ、専門職である写経司がおかれるなど、
国家をあげて行われていたそうです。

写経では、終わりに願文と願主を書きますが、
奈良時代には、国家安泰、五穀豊穣のほか、
「過去七世の父母」のための「追善」とか「滅罪」などが書かれ、
また、鎌倉時代には、一般の人も、お墓に写経を入れたようです。
生前の罪を消して無事に成仏し、極楽安生するという願いが込められており、
単なる布教や記録・複写といった目的ではなかったようです。

「一切経」とは、「大蔵経」とも言われ、仏教の経典（お経）を集成したもの。
仏教の経典は、キリスト教の聖書、イスラム教のコーランのように、
一冊にまとまっているのではなく、開祖である、お釈迦様（ブッダ）の教えを、
後に編纂しているので、膨大な量です。
そこで今日では、「般若心経」を書き写すことが多いようです。

先日は、京都の天龍寺で、写経をさせていただきました。
世界遺産なので、外国人が多数訪れていましたが、
庫裏から上がって、写経をする多宝殿に案内していただくと、貸切でした。


かつて僧侶は、斎戒沐浴して身を清め、
部屋を荘厳して臨んだとのことで
普段着でいいのかな、ずっと正座できるかな、
字がうまくない、毛筆で書くのは難しい、
など心配される方もいらっしゃると思いますが、
ラフな服装もＯＫ、足を崩しても良いとのこと。
般若心経も、薄く字が印刷されていて、
なぞるだけですので、
筆で字を書くことが苦手な方でも大丈夫です。

後醍醐天皇の尊像のある間で、法話をお聴きし、
硯（すずり）で墨を摺（す）っているうちに、心が落ち着き、
題と本文、２７６文字を、一字一字、丁寧に書いていくうちに、無心になります。

そして、約一時間

かなり集中していたようで、書きあげた時には、心が一気に解放され
殆ど感じたことがないような爽快感に満たされていることに気付きました。

書いたものを奉納し、曹源池のある庭園や嵐山を眺めていると、
いっそう、安らぎと感謝の気持ちが満ちてきます。
そして特別公開されている、加山又造画伯の「雲龍図」（直径９ｍの天井画）
を拝見して、パワーをいただき、清々しい気持ちで、お寺を後にしました。

写経ができるお寺は、あちこちにありますし、ご自宅でもできます。
清らかな秋の朝、忙しい日常を離れ、ぜひ写経をなさってみてください。
きっと新たな発見があることでしょう。